失われたのは
新連載のスタートです。
今回は初の転生ものでダークファンタジー。
楽しんでいただければ幸いです。
(話の割り方や内容に少し修復を加えました)
2018/03/15;第一話を少し書き直しました。(続編の『灰色の乙女』も連載を開始しました。そちらも合わせてお楽しみください)
神々に愛されたその国が、四人が出会い、生きた場所になった。
顔のあちらこちらに擦り傷を作った琥珀色の瞳の少女が立つ横で、灰色の髪の少女が溜息をつきながら懇々と諭すように言葉を紡いでいる。
そんな彼女達を笑顔で見つめる黒髪の青年と、腕を組んで無表情のまま彼女達を見つめる銀髪の青年。
二人の視線に気が付いた琥珀の少女が、もう一人の少女の小言などまったく堪えていないと云わんばかりの明るい笑顔を浮かべる。辺り一面に華が咲くような笑顔だった。
―――それは、昔々に失われた在りし日の光景。
四人は蹲る。
幸せだった頃の自分達が映った、粉々になった鏡の一部を握りしめたまま。
自分達の掌から滴る血筋に、気づきもしないで―――。
✿ ✿ ✿
幸せな日々だった。
大事な人に囲まれて過ごすその日々が永遠に続くなんて、どうしてあんなにも盲目的に信じられたのか。
強制的に迎えた唐突な終わりは、彼女からすべてを奪い去った。
もうあの頃には戻れないのだとわかっていても、彼女は祈り続ける。
愛おしい日々だった。
見るモノすべてが光と色に溢れていた時間が、灰色に塗り替えられたのは一瞬の事。
何を間違えたのだろうかと。あの日、光を失った瞬間からすでに何度も繰り返してきた疑問に答えられることは終ぞなく。
もうあの頃に戻りたいなんて大それたことは願わない。けれど、それでも、彼女が胸の中にたった一つ抱き続ける想いがあった。
大切な日々だった。
大切な人の傍に居て、守れる自分を誇りに思った。
それがただの驕りだったと気づいたのは、彼女がこの手から消え失せてしまってから。その終わりがあまりにも急すぎて、彼らの心は光を失った。
大事な人が指先から零れ落ちるこの失望感に、何度苛まれてきた事だろう。
それでも彼らは足掻く、愛おしい彼女達にどうしても伝えたい気持ちがあったから。
どうか、いつかまた、もし願い叶って逢いまみえる事が出来たなら、その時はきっと必ず―――。