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我ラ世界ニ在リ

作者: 季節風

二二××年、食糧不足はさらに深刻な問題となった。自国の食料を守るため他国との貿易をやめる国。他国から土地や食料を奪おうと攻撃を開始する国。そして人口そのものを減らすことで食糧不足を回避しようとする歪んだ思想。

各国に散らばったそれぞれの思いは集まり、大きな『力』を描きあげた。いくつもの『力』は何年もぶつかり合った……。

これは後に第三次世界大戦と呼ばれた。




オゾン層の破壊により牙をむいた太陽が空から地上を焼き尽くすかのごとく熱を放っている。いや、あるいは本気で焼き尽くそうとしているのかもしれない。かつて太平洋と呼ばれていた海に浮かぶ『ゼロ』と呼ばれる東京ドームほどの大きさの小さな人工島にもその熱は例外なく降り注いでいる。


「暑いな〜……、くそぅ。これも戦争の後遺症か……」


真昼間だというのにその男は全身を真っ白な服で覆っていた。その服は宇宙飛行士が宇宙で着ているようなものに似ている。異様な光景ではあるが誰もそれを怪しんだりする者はいない。もっともゼロは某国の秘密研究機関として使われていたこともあり、この男以外の人間は存在しないのだが。

男の名はマック、年齢は四十一。今はこの研究所にて海面上昇や気温変化等、要するに自然と地球のデータをとっている。


海のデータを採り終えたマックは研究所の中に入っていった。研究所の中にもやはりマック以外の人はいない。マックは研究所の扉を厳重に閉め、上からカーテンを敷き、外部からの光を完全に遮断した。この研究所にはこの扉以外に外部へ出る扉はおろか、窓1つ存在していない。

真っ暗になった研究所の中でマックは電気をつけて、しんどそうにヘルメットをはずした。ヘルメットの中からは金髪の髪がフワリとでてきた。年のわりに整った顔とスラリと高い鼻は彼を若々しく見せている。

研究所には1台の大きなパソコンと簡単なキッチン。そして地下に続く階段があるだけで家具と呼ばれるものはほとんど存在していない。無駄に広い床には無数のペンや紙が散乱していて足の踏み場がない。

マックは床の資料を踏みつけながらキッチンへむかった。そして簡単な料理を作りそれを食べた。


「さてと、今日の報告をするか」


食事を終えたマックは余った料理を皿にのせてキッチンの机に放置したままパソコンにむかった。手馴れたようにカタカタとキーボードを打つ音が広い空間に空しく響いた。マックは毎日これを繰り返す。ただひたすらに……。

報告を打ち終えたマックはその文章を送信し、返事を待った。


ピピピピピピ


間も無くしてメール受信音とともにパソコンの画面には白衣を着た男の姿が映し出された。年齢は明らかにマックより若く、まだ二十前後の男性だ。


「おはようマック、いや、君のところではこんにちは、かな?」


「お早う御座います、ハルバンさん。私のところは時間などあってないようなものですので」


パソコンごしに見る相手のいる場所もやはり研究所だが、窓から日が差していて、他に何人もの人影も見えた。男はわずかに見下したような高圧的な話し方で続けた。


「今日も報告をごくろうだね。しかし、こんなことをいつまで続ける気かね?こちらに来ればそんな仕事をする必要もない。太陽の放つ紫外線で命が危険にさらされることもないんだぞ」


「それはわかっていますが……」


「まぁいい。気が変わったらいつでもこっちへ来たまえ。誰一人としてそれを拒むものなどおらんよ。それに、ほれ、永遠の命と永遠の青春が約束されとるからな。ハッハッハ」


高らかな笑い声とともに画像は消えた。マックはハルバンからの返信メールに目を通しながらハルバンの言っていたことを考えていた。


「永遠の命と青春か……。それでも俺は、最期まで人間でい続けたい……」




わからない

あの人は本当に本物のハルバンさんなのか


わからない

俺は本当にこれでよかったのか


わからない

俺は何故こんなことをしているのか


わからない

俺は何故生きているのか


わからない

地球は何故まだ動いているのか




「ヘイ、ハルバン。また例のあいつからの報告かい?」


「ダミニアか。ああ、そうだ」


「立派だね〜。さすが『地球最後の人間』さんだよ」


「そうだな」


明るい研究所の中で白衣を着た2人の男性が話し合っている。二人とも二十前後と比較的若く、その容姿はタレントオーディションを受けたら一発合格しそうなほどだ。ダミニアは青い髪をたいぎそうに掻き毟りながら言った。


「あいつもさっさとこっちに来ればいいんだよ。何を好き好んであんな地球に未練があんだかかなぁ。いちいち報告なんかいらねぇってのによぉ」


「あいつはまだ現実にかけてるのだろうな。人間の手を離れたから、いつか地球は蘇るとな」


「はっ。万が一にも地球が蘇ったとして、あんな不自由なとこに誰が住むかよ。この世界こそ理想郷さ。眠くもならねぇし、腹も減らねぇし、死にもしねぇ。なあ、最高じゃねぇか」


「まぁ、そうだな」




私は最近思うのだ

私は今幸せなのか


私は最近思うのだ

マックの行動は決して間違っていない


私は最近思うのだ

私やダミニアの行動は決して間違ってはいない


私は最近思うのだ

この世界には答えなどないのだと


私は最近思うのだ

存在しない答えを知りたいと




二三××年、世界から人間が消えた。

第三次世界大戦の最中、人類は自ら作った兵器によって自らと地球を滅ぼした。詳細な統計こそでていないが、五十%以上の人間が滅んだとも言われている。人間も土地も枯れ果て、そうした中で人類はある計画を実行した。


『バーチャル・ライフ・プロジェクト』


全ての人間の意識を電子化させ、プログラム体として仮想空間にて生かし続けるというものだった。長い論議の末、反対勢力を押し切りその計画は実行された。

たった一人の人間を除き、人類は新しい世界での歴史を始めた。




ココハ私ノ住ム世界


ココハアナタノ住ム世界


ココハ皆ノ住ム世界


ドコニイテモ世界ハ一つ


我ラ世界ニ在リ


このような哲学的まっしぐらの小説をお読みいただきありがとう御座いまス、季節風でス。サークル活動にて思いの他好評価をいただいたのでここに載せることにしましタ。まだまだ未熟ゆえ乱文ではありますが、改善すべき点などをご指摘頂ければ嬉しいでス。

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