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ニジェールの熱い一日(ほぼ実話)  作者: ニジェールまきこ
17/25

道程<4>

まだ薄暗い朝、モスクから聞こえるアザーンの声で目が覚めたのぞみは、寝ていた木製のベッドの上で腹部に激しい痛みが走るのを感じた。

「またか・・・」


ニジェールに来て半年がたっていた。これまでに2度、腹痛とおう吐の症状でJICAの提携するニアメのガムカレイ・クリニックにお世話になった。その時は、「ランブルべん毛虫」という寄生虫がお腹の中にいると言われたが、薬を飲むと、3~4日ほどで回復した。

「マリアカラスも寄生虫ダイエットで死にそうになったんだっけ・・・」と、妙なことを思い出しながら、のぞみはベッドに転がりながらJICA事務所に常駐している健康管理員の石崎さんに電話をかけた。


村の質素な食事と、寄生虫のせいもあってか、のぞみは半年で8キロも痩せた。それが「ニジェールの村にがんばって滞在した勲章」のように思えて、電話を終えたのぞみは自分のこけた頬を鏡でしげしげと見ていた。

2時間ほどすると、JICAの車、白のランドクルーザーがのぞみの家のすぐ先まで到着。「アミナ、お迎えだよ」と、いつも水汲みを手伝ってくれる女の子が呼びに来てくれた。石崎さんが車内に乗っており、のぞみの症状を詳しく聞いた。石崎さんは、日本で看護師として10年ほど働いた後、協力隊員としてセネガルに派遣された。その後、JICAの健康管理員となり、西アフリカのフランス語圏の国々を2~3年ごとに転々としながら駐在しているという。ブルキナファソ、ベナンに続き、ニジェールは3か国目の駐在だ。


ガムカレイ・クリニックは、ニジェール川沿いのガンカレイという地区にあり、小さな病院だが医療設備が整っている。医師とはフランス語でやりとりしなければならないため、のぞみははじめての診察の時は「パラジット(寄生虫)」と言われたのを「パリュ(マラリア)」と勘違いし、ひどく驚いたのを覚えている。

今回も優秀そうなニジェール人医師がフランス語で何か説明しているが、寄生虫の単語は出てこない。何の病気なのだろう。


石崎さんが、「膀胱炎だって・・」と通訳してくれた。

「膀胱炎?!」。のぞみは、自分には縁がないだろうと思っていた意外な病気だったため、「ニジェールにいると、いろんなことがありますねえ・・・」と、しみじみとした口調で石崎さんに向かってつぶやいた。

石崎さんによると、ここでは暑さで汗を大量にかくため、体内の水分が不足し、尿となる水分も不足。尿は、膀胱内の菌などを流す役割もするが、それが足りないため、菌が繁殖し膀胱炎になってしまうのだという。

石崎さんは、のぞみをドミにある療養用の部屋のベッドに寝かせると、「少し安静にしていたら3~4日で治るから」と言って、事務所へ戻っていった。


「かっこいいなあ。石崎さん。医療の専門用語もフランス語で完璧にやり取りできるし。でもこれからずっと、年をとっても、アフリカを転々として暮らしていくのかなあ」

のぞみは石崎さんの行く末を心配していると、先ほど飲んだ薬のせいもあってか、急に強い眠気に襲われ、眠りについた。



携帯電話の鳴る音で目が覚めると、外は明るく、時計は朝の10時を指していた。

知らない番号が表示されている。

「アロー?」とのぞみが電話を取ると、

「アロー。アイシャよ。のぞみ大丈夫?今、JICAの外にいるの。体調の悪いところごめんなさい、出てこられる?」

アイシャが、どうして体調の悪いことを知っているのだろう。のぞみは不思議に思ったが、ジャージのズボンにTシャツ姿で外に出て、ガルディアンにドミの鉄製の門扉を開けてもらった。

外にはアイシャがひとりで、心配そうに立っていた。

「のぞみ、これ、カリームから。あまり立っていたらよくないから、すぐにベッドに戻って」と言い、のぞみに黒いビニール袋を手渡すと、手を振って足早に行ってしまった。


ベッドに戻り、袋を開けてみると、のぞみの好きなスコールで売っているドン・シモンのマンゴージュース、トゥアレグの女性の民族衣装、トゥアレグの文字のようなものが刻まれた小さな丸い石とビーズで作られたネックレス、そして手紙が入っていた。


手紙には、小さな几帳面な文字で、昨夜電話してものぞみがでなかったため、心配になって知人でもあるJICAのドライバーにのぞみの安否を尋ねたこと、のぞみがクリニックに行きドミで休んでいると聞いたということ、トゥアレグの民族衣装とネックレスは次に会うときに渡そうと思っていたこと、療養中に元気づけたくて、それをアイシャに持って行ってもらったこと、といった、袋をアイシャが持ってきてくれるまでの経緯が丁寧に書かれていた。


カリームは、どこまで優しい人なんだろう。相手から何かしてもらうことは考えていない。人を喜ばせることが自分のしあわせと思える人なんだな・・・。

のぞみはカリームが用意してくれたネックレスを首につけ、ベッドに横になりながら、その手紙をたたんでしまってはまた取り出し、読みなおした。

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