道程<3>
外で遊んでいた子どもたちを呼び集めながら、のぞみたちは小学校の校庭に移動し、バティック教室をはじめることにした。
子どもたちの多くは8~9歳くらいで、15人ほど集まっていた。ハルナが、バイクで運んできたバティックに使う道具を慣れた様子でおろし、校庭にあった木のテーブルの上に並べた。子どもたちはうれしそうにぴょんぴょんと飛び跳ねたり、子どもたち同士で笑い合いながら待ちきれない様子でハルナが準備するのを見ていた。
のぞみはこの日のためにニアメで用意した白い布を子どもたちにそれぞれ手渡し、子どもたちはハルナの持ってきた筆やひも、木片などの道具を使って溶かした蝋で思い思いの絵を描いた。
家族の顔や、マンゴーの木、鳥やカバなど、身近なものの絵を描く子もいれば、線を引いたり点々を打ったりと模様を描く子もいた。
描き終わると次々と子どもたちは「見て!見て!」と嬉しそうにのぞみに布を広げて見せてくれた。
出来上がったバティックの作品たちは、何が描いてあるのか説明しなければわからないような、初めて見る人はただのぼろ布と思うようなものばかりだった。だが、できあがった自分たちの作品を「これはね、カバだよ」「これは人で、洗濯しているの」などと、大きな目をキラキラ輝かせながら自慢げに説明してくれる子どもたちを見ていると、のぞみは「やってよかった」と心底思った。
バティックの制作を終えて、のぞみはこれまで、活動する前から「援助とは何か」「貧困とは何か」と頭でっかちに考えすぎて、身動きが取れなくなってしまっていたことに気がついた。それが何につながるのか、どういう意味があるのか、分からなくても、自分が作ったきっかけで子どもたちがこんなにも喜んでくれているのだ、それでいいではないか。
そして、やっていることの意味なんて、私が決めることではないのかもしれない。これが何かにつながればいいし、何にもならなくてもいい。この子たちが楽しんで、自分も楽しめることをやっていければ、いいではないか。
そう思い至り、のぞみは肩の力が抜けた。
ムスタファたちも、子どもたちと一緒になって作品をあれこれ比べながら、「アミナ、楽しいね、これ。大成功だ!」とのぞみに向かって叫んだ。
これから、子どもたちや村の人たちと、楽しめることをどんどんやっていこう。のぞみは気分を高揚させながら、子どもたちの笑顔が自分のエネルギーとなってみなぎってくるのを感じた。




