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ニジェールの熱い一日(ほぼ実話)  作者: ニジェールまきこ
15/25

道程<2>

サガフォンド村に戻ってきたのぞみは、ぼんやりとニアメでの出来事を反芻していた。

最初にタクシーでカリームに会ったのは全くの偶然だ。あの時ドミから出るのが数分違っただけでも、出会えなかっただろう。そして菜々とギンギンヤに行った帰り。さらにアマンディーンでケーキを食べているときにアイシャと一緒に歩いているところに出会うなんて。

「できすぎている・・・」

のぞみはひとりで首を横に振りながらつぶやいた。

「安っぽい少女マンガみたいだ・・・」

それとも、偶然ではなく仕組まれていたことだったりして。カリームはCIAのエージェントなのかもしれない。でもどうして私がターゲットに?


村に戻るとゆったりとした時間の中で、妄想じみた考え事をしながら昼寝をしているだけで時間がたってしまう。家の軒先の簡易ベッドの上に寝転びぼんやりしていると、村人がやってきて「ニアメのお土産はどこ?」と勝手に部屋の中に入っていった。帰ってもらうのにあれこれ苦心し、村人が帰るとまた考え事にふける。これを繰り返し、気がつけば夜になっていた。


暗い部屋の中で、のぞみの携帯電話が鳴った。

「アロー?」と出ると、

「アロー」とカリームの低音の声がのぞみの耳に響いた。

なんて落ち着く声なんだろう。村人のおねだりばかりの生活に戻ったのぞみには、カリームの声は昔から知っている旧友のような親しみを感じさせた。

「のぞみ、無事に村に着いた?おじさんの家に行ったとき、ずいぶん疲れていたみたいだけど、体調は大丈夫?」

「大丈夫だよ、ありがとう」


カリームは、のぞみのことをほかのニジェール人のように「アミナ」と呼ばない。初めて会った時から日本の本名をすぐに覚えてくれた。話す言葉も違うはずなのに、その違和感も感じないことが不思議だった。

村では言葉が違うからか、アミナと呼ばれるからなのか、まだ仕事らしい仕事をしていないからか、自分の居場所がまだ見出せず、ふわふわ浮いているような気分になるが、カリームと話していると、本来の自分自身に戻れるような感覚がした。

何気ない普通の会話だったが、電話を終えると、のぞみは幸福感に包まれながら眠りについた。



村に戻って3日目、バティックの先生ハルナが子どもたちに教えに来てくれると約束してくれた予定だった。

午前中のまだ涼しいうちに、ムスタファと、ザク、モクタールの三人は意気揚々とのぞみの家にやってきた。

「アミナ、いよいよだね」

「うん。楽しみだね」


ハルナは、サガフォンド村の先にあるコイリアグルマ村でも子どもたちにバティックを教えているといい、その通り道だからとさっそくサガフォンド村にも来てくれることになった。

ムスタファたちがお祈りに行ったり家の用事に戻ったりとしながら時間が過ぎ、午後3時ごろ、ようやくハルナは埃まみれのバイクに乗ってやってきた。


「さあ、はじめようか」

「来てくれたんだね!ありがとう!」

のぞみは約束の時間に来なかったハルナを責めるどころか、約束のその日に来てくれたことが素晴らしいことに感じた。我ながら、ニジェールの『約束』の感覚に慣れてしまったものだと、ひとりで苦笑した。

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