出会い〈5〉
翌日のぞみは、高級スーパー「スコール」の向かいにある「アマンディーン」というカフェにでかけた。ここもレバノン人が経営し、ケーキやアイスなどのスイーツがあり、パスタなどの食事もできる。通信速度は遅いがインターネットがつながる貴重な場所でもある。
のぞみは外が見える通り沿いの席に座り、日本から持ってきてドミの個人ロッカーに保管しておいたノートパソコンを開いた。メールソフトを開くと、「データ取得に時間がかかります・・」との案内が画面に出た。注文したケーキとコーヒーをゆっくりと味わいながら食べると、食べ終わる頃にはメールの受信が完了。ほかの国へ派遣された協力隊員の同期や、日本の友人などからメールが50通ほど届いていた。
「これ、返信するのに1年くらいかかりそうだなあ・・・・」
日本にいるころには届いたメールはすぐに返信しなければ気が済まなかったのぞみだが、今では、ものごとはできるときにやる「アフリカンタイム」にすっかり体がなじんでしまったようだ。
「村に戻ったらケーキもビールもインターネットもしばらくお預けか・・・」とぼんやり考えながら外を眺めていると、一昨日スコールで助けてもらったアイシャらしき女性がプチマルシェ方面に向かって歩いているのを見かけた。
のぞみは急いで外に出て、その女性に「アイシャ!」と声をかけた。振り返った女性は、「ああ、この前の!」と言って笑った。その横には、昨日偶然二度会ったカリームが並んでいた。
のぞみが「カリーム!またなんていう偶然!」と声をあげると、
アイシャは「え?カリームも知っているの?」と驚き、カリームは「また会ったね」と笑った。
カリームは「このあともし時間があれば、今からおじさんの家に一緒に来ない?」と言い、「"危険な"カダフィ大佐の友人のおじさんだよ」と笑った。
のぞみは一度にいろいろなことが起こって混乱しそうだったが、気がつけば「行く!」と言葉が先に飛び出していた。
カリームとアイシャ、そしてのぞみはプチマルシェの横のタクシー乗り場から乗り合いタクシーに乗りこんだ。
昨夜の菜々の「運命」の言葉が頭をよぎった。「3回も偶然に会うなんて・・」
でもきっと、アイシャとカリームは夫婦かカップルだ。2人ともスラッと背が高く、きれいな細身の服を着て並んで歩いていると、映画に出てきそうなすてきな雰囲気だ。
「私たち何か縁があるのね、私とも、兄とも、偶然に出会って偶然に再会するなんて」とアイシャが感慨深そうにのぞみに言った。
「へ?兄?」のぞみは間が抜けたような声を上げた。「夫婦じゃないの?」
アイシャが「あはははっ」とおかしそうに笑い「安心した?夫婦じゃなくて」とからかうようにのぞみに聞いた。
「いやいや、そうじゃないよ・・・」のぞみは否定したが、内心ほっとしていることが自分でも不思議だった。
「本当に兄妹なの?こっちのひとたちって、兄弟じゃなくても『モンフレール(※兄弟への呼びかけ)』とか『マスール(※姉妹への呼びかけ)』とか言うじゃない。なんだかどのひとが本当に兄弟なのか姉妹なのか、わけがわからなくて」
「妹だよ、正確に言うと異母兄弟。僕の母が早く亡くなって、父親はアイシャのお母さんと再婚したんだ」とカリームが説明すると、再び「これで安心した?」と聞き、クククとおかしそうに笑った。




