リック、王宮へゆく
古今無双のスケベな妖怪ハンターのリックは、美人幼な妻の遊魔と異世界に飛ばされました。
そこで出会った兵士に猫神様と間違えられた遊魔。
そのお陰か、国王と会う事になりました。
(この扱いの差は屈辱にゃん!)
遊魔は兵士達が用意した馬車に乗っていますが、リックは馬の餌を運ぶ荷車に藁塗れになって乗っています。
「乗り心地が悪いにゃん! そっちの馬車に乗せて欲しいにゃん!」
リックは兵士の団長に言いました。すると団長に、
「嫌なら歩け。召し使い風情が偉そうな事を申すな!」
一喝されました。
「は、はいにゃん……」
チビりそうになりながら応じるリックです。
しばらく進むと、遥か前方に石造りの城が見えてきました。
「もうすぐ到着致します、猫神様」
団長が恭しく頭を下げて遊魔に告げました。
「そうなんですかあ」
遊魔は笑顔全開で応じました。
(どうして遊魔は僕が夫だと言ってくれないにゃん?)
悲しくて涙が出そうになるリックですが、今までの悪行を思えば、自業自得の見本市だと思う地の文です。
「うるさいにゃん!」
見事な指摘をした地の文に切れるリックです。
「其方こそ騒がしいぞ、召し使いめ! 静かにせんと、斬り捨てるぞ!」
団長が鬼の形相で怒鳴りました。
「はいにゃん……」
少しチビッてしまったリックです。
その頃、王宮の玉座の間では国王が遊魔達を待っていました。
「間違いないのか?」
国王は目の前に控えている宰相に尋ねました。
「間違いございません。猫神様は光と共に降臨されますので」
宰相はニヤリとして応じました。国王もニヤリとして、
「そうか。ならば、これで憎みても余りある隣国のベカサク帝国を滅ぼす事ができるな」
まるで上から目線の推理作家のような顔で言いました。
「猫神様のお力を授かれば、我が国は無敵になりまする」
宰相も上から目線の推理作家のような顔で応じました。
そして、二人は高笑いしました。