第12話 ただ、追いかけることしか
手紙の中では、一人称の「俺」が「僕」に、二人称の「お前」が「あなた」に変わっていた。
これを書いたのは、本当にあのオレ様王子なんだろうか?
僕って誰だろう?
あなたって誰だろう?
答えはわかりきっているのに、疑問を持たずにはいられない。
どきどきする胸をおさえながら、モモは続く文章に目を向けた。
あなたは僕から逃げ回っていたけど、
僕はかなり姑息な手段を使って、
あなたに近づこうとする男たちをブロックし続けた。
誰にも触れさせない。
あなたを守ることができるのは僕だけだ。
けれども僕の思いは空回りを続け、
守るどころか、
傷つけることしかできなかった。
どんな逆境にもあなたは負けない。
あなたは僕を必要としない。
だから僕は諦めた。
少なくとも諦めたつもりだった。
大学に進学して、何人かと付き合って、
それでもあなたのことばかり考えている自分に、
正直、嫌気がさしている。
高校生活を振り返った時、
思い浮かぶのはあなたのことばかりだ。
同封したものは、ただ、追いかけることしか
できなかった、みっともなくも懐かしい日々の軌跡。
僕のことなど、さっさと忘れてしまいたければ、
煮るなと、焼くなと、ご自由に。
でも、もしも、そうでないのなら……。
文字がひどくかすんで見えるのは、視力の低下によるものではなく、涙があふれて止まらないからだ。
たいして長くもない文章を何度も何度も読み返し、モモは手紙を抱きしめた。
三冊の手帳は、正隆が高校時代に使っていたと思われる、スケジュール帳だった。
制服の胸ポケットにちょうどおさまる大きさのそれを、モモはそっと開いてみた。
最初のページに記された「一年一組 伊集院正隆」の文字に触れ、次のページを開いた所で、思わず顔を近づけた。