表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/13

第11話 一目ぼれなんてばかげてる?

大学では、男の子から声をかけられたりもするけど、胸に焼き付けられた正隆の姿があまりに鮮烈で、誰かと付き合う気にはとてもなれない。


大学入学を契機に一人暮らしを始めたモモは、郵便受けに取り付けられた自分の名前を見て苦笑した。


「なんだか、昔のアイドルみたい」

母が再婚したために、モモの名前は山田モモから山口モモに変わっていた。


「山口さん、宅急便です」

モモはまたクスリと笑い、パソコンから顔をあげた。

モニターに表示されているのは、「Yahoo!ファイナンス」の株式チャート。

株に興味があるわけじゃないけど、正隆の父が経営する会社の株価をチェックすることが、何となく習慣になっていた。


受け取った荷物に貼られた送り状を見て、モモはハッと息を飲み、壁に背を預けたまま、ずるずるとその場にへたり込んだ。


差出人の名前は伊集院正隆。

入っていたのは、三冊の手帳と一通の手紙。

時限爆弾を分解するような手つきで封筒を開くと、味も素っ気もない白い便箋が二枚入っていた。


一枚は全くの白紙。

そして残る一枚には、この国の未来を背負って立つスーパーエリートにふさわしい端正な文字が並んでいる。


「一目ぼれなんて、ばかげている」

冷ややかな声が聞こえてきそうな、冒頭の一文にどきりとさせられた。

咄嗟に目を閉じたモモは、大きくひとつ深呼吸をして、再びこわごわと目を開けた。


 一目ぼれなんて、ばかげている。

 ずっと、そう思っていた。

 でも、入学式の朝、桜の木の下に佇む姿に

 見とれていたことは、まぎれもない事実だ。

 講堂に入ってからも、僕はあなたを探していた。

 だから大勢の目の前で失態を演じたことを恥じる気持ちより、

 あなたとの接点ができたことを喜ぶ気持ちの方が大きかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ