プロローグ
異世界。自分が知っている世界と全く異なる世界を目の当たりにしたとき、出てくる言葉はまさにこれだろう。
まさに異世界。気が付けば自分が見知らぬ場所に立たされていた。
近くに術者らしき人物。ならこれは、ファンタジーもので言えば《召喚》されただろう。
ファンタジーの世界で《召喚》と聞いて何を連想するだろう?
よくあるのは召喚された主人公がすごい力を持っていて活躍する話。
もしくは、召喚者がすごい奴で、その相棒としていろいろと活躍する話。
他にもあるだろうけど、俺が今連想するのはそんなところ。
何故、こんなことを言ってるのかというと、もう、そのあれだ。何か宇宙の神秘にでも語りかけてでもないと、現状辛いです。
俺は事の元凶である隣のヤツに叫ぶ。
「なぁ! 何とかならないのか!?」
こっちは必死になってるのに落ち着いて答えてくる。
「なる訳ないじゃないか。どうして僕が召喚なんてしたと思ってるんだい?」
「知るわけないだろうっ!? 元凶を招いた本人が何とかするものだろう!?」
「出来ないから最後の力で、した事もない召喚をしたんじゃないか。よりによって無能が召喚されるなんて、有り得ないよ」
「それ、いろいろおかしい! おかしいだろっ!? なんでこんなヘッポコに召喚されてんだ……」
もう駄目だ。俺の人生はここで終わるんだ。
今の状況を端的に説明すると、ここは森の中で周りを魔物に囲まれている。
ここに喚ばれていきなりの危機的状況。喚んだヤツが言うと通り、俺には何の力も無い。
異世界へ来た事によって何かしらの力に目覚めた……などあるはずもなく。
揃って逃げるしか出来る事はないわけで。
こうしてる間にも周囲の魔物は少しずつ距離を縮めて来てるし。すぐに襲われる事はなかったけど、対処方法なんて考えつかない。とりあえずは無事だった。今、この瞬間までは。
「あ、こっちに来た」
俺を喚んだヤツがまるで他人事みたいに呟きやがりました。
神様、こんなに真剣に祈った事はないけど祈ります。どうか助けて!!
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いつまで経っても襲われる気配がない。あれ? 魔物は? と周囲を見渡すと、武装した人達が魔物を倒していた。
何はともあれ助かったらしい。神様ありがとうございます、俺その存在を信じてもいいかも。と、俺の意識はここまでだった。
この後、そのまま意識を失ったらしい。召喚された影響か、緊張状態からの反動で気が緩んだか。
と、まぁこれが、異世界へ召喚されて起こった最初の出来事。原住民(俺を召喚した奴)との最悪の出逢いなわけで。
これから俺どうなるんだろうか?