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妖怪って厨二病の華だと思うんだ。  作者: 冬月 道斗
三上山の出会い、長物たちとの遭遇
2/22

一話

はい第一話です。

もうすぐ初めて敵対する妖怪が出てきますがわかる人は何が出るかわかってしまうのではないでしょうか?

それではよろしくお願いします。

 見つめあって固まっている二人、その双方が混乱で満たされていた。


 (え? ここどこ? 何なん? さっきまで俺山の中にいたよね? てか何なのこれ? 神隠し? 神隠し!! そうなのか?キタキターーーー!!! ついに俺の時代が来たんじゃないかこれは!!!)

 (え? ナニコレ? なんなの? これってアタシが扉ふっ飛ばしたから出てきたんだよね? どうしよう本当に出てきちゃったの? そうだ! それならあいつのこともなんとかできるかもしれないじゃないか!! よし、それなら……)

 

 真人が混乱の果てによくわからないテンションに至っている中、少女が行動を起こした。


 「え?」

 

 あわてていた真人の目の前で水色の全長が5メートルほどの蛇の姿になったのだ。ニシキヘビくらいの大きさになった蛇はその鱗も輝くような濁りのないもので威厳にあふれ、その大きさから人の頭くらいであれば楽に飲み込める威圧感にあふれていた。

 

 (これでこの男が本当にあいつをどうにかできるようなやつなのか分かるはず。気配が間違いなく人間だけど、こんな風に力を見せてやればきっとわかりやすい行動をとるはずだわ。ここでおびえるようならろんが……)

 

 と、少女が思考を巡らせている中一瞬固まっていた真人が動き、その蛇を捕まえた。

 この一連の動きには無駄がなく少女はやはり只者ではないと期待を膨らませかけたが、

 

 「キターーーーー!! なんだコイツさっきまで間違いなく人間だったよね? これ人間に化けてたよね? これ妖怪だよね? 妖怪って言っちゃていいんだよね? 妖怪! 来たよついに来たよいままで探し求め見つかることもなく友人から呆れられてきたけどついに出会っちゃたんだよ! やっぱり妖怪はいたんだ! 見つけた、見つけたぞ! そして逃がさないぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 「きゃーーー!!!」


 そして、その蛇となった少女をがっちりと捕まえなでまわし始めた。

 このいきなりのスキンシップにもっと緊迫した反応を予想していた少女は上手く反応ができなかった。 そして悲鳴をあげてなすがままにされていた。

 少女は知らなかったとはいえ迂闊だった、この男には、急な出来事にテンションがおかしくなっている上に中学生の時分からため続けていた燃料があったのだから、もうこれは炎上間違いなしなのである。


 「申し訳ありませんでした、妖怪に出会えた喜びのあまりにおかしくなっていました」


 少女が人の姿に戻ったことにより少し落ち着き、自分のやった行為を顧みた真人が向かい合わせに座っている少女に平謝りしていた。


 「はぁ……はぁ……、いや、アタシもいきなりの変化だったしどんな反応をするのかが見たかったわけだからまあいいよ。その反応があまりにも予想外だったけどね……」

 

 真人の妖怪にあえて嬉しいという言葉に違和感を覚えた少女だったが、そこに突っ込む余裕もなく疲れ切った表情で真人の謝罪に返事を返すと姿勢を改めた。


 「アタシは水穂という。ここ琵琶湖に棲み水を司り、周囲の生物の平穏を守っている龍神だ。」


 そう言い切った少女――水穂は少し真人が驚くことを期待して少し話を区切った。

 が、当の真人はというと、


 「ああ、なるほど龍神様かぁ、それなら確かに人に変身できるよね。俺の見つけた第一妖怪は龍か、夢あふれるね! あれ? 龍神って妖怪って言っていいのかな?

 ……と、俺は斎藤 真人といいますどうぞよろしく」


 などと目をキラキラ輝かせてのたまったあとにとってつけたような自己紹介をするバカがいた。


 「おいおい、龍神だぞ龍神、この辺一帯の人間に奉られているんだぞ?偉いんだぞ?なんでそんなに平然としてるんだよ! いや、敬意みたいなのは感じるけど全然敬った態度じゃないし、なんだろうこのモヤモヤした感じは……」

 「いえ、先ほど変身なさったではありませんか。あの様子を見せていただいたのですから水穂様が龍神であることに驚く必要はないと存じます。それと、申し訳ないのですが神様と接する際どのような口調で話させていただけばいいのかわからないもので、このような感じでよろしいのでしょうか?」

 「いやわかった、そんな無理した態度はやめてくれ。さっきのほうがましだ。それにそもそもが私は真人殿に頼みごとをする立場なのだ。そんなに偉そうなことは言えないな」

  「頼みごとですか?」


 真人が問い返すと詰め寄っていた水穂は姿勢をただし一度崩された表情を再度まじめなものに変え話し出す。


 「では改めて、アタシの願いに応えてあの扉から来てもらい、アタシの変化にも怖気づくことのなかった真人殿にお願い申したいことがある。ここ琵琶湖からも見えるあの山に大層な妖怪が住みつきこの地の生き物を苦しめている。このままほおっておくとこの地の生気は枯れ私も生物も朽ちてしまうのだ。どうか彼奴を退治してはもらえないだろうか」


 と頭を下げて懇願した。それに対して真人は戸惑っていた。


 「えーと、そのために俺を呼んだんですか?でも俺って特別な力を持っているわけでもないですよ。それに妖怪とか神様に出会ったのも今日が初めてですし。それで退治ってどうすればいいのでしょうか?何か加護のようなもので何とかなるのでしょうか?」

 「いや、加護自体は与えれるがアタシの力ではどうにもならないから真人殿に頼んでいるんだが……。どうにもできないのか? アタシの呼びかけに応えてくれたんだしなんとかできるんじゃないのか?」

 「えっと、呼びかけに答えたというよりは気が付いたらここにいたもので、というか呼びかけって何ですか?」

 「気が付いたらここにいた?ちょっと待ってくれ、真人殿はアタシが助けを求めた声に応えてここにきてくれたのではないのか?」

 「え?」

 「え?」


 二人ともお互いの立ち位置について齟齬があることに気が付き困惑して見つめあっていた。そのまま真人は自分の境遇を、水穂は扉について話をすることになった。

 そして、

 

 「そうか、それでは真人殿はアタシが勝手に巻き込んだだけということか……」


 水穂がそう呟き、先ほど真人に討伐を依頼した時よりも深く頭を下げた。

 

 「すまない、真人殿がここに来てしまったのはアタシの所為のようだ。そして重ねて謝らなければいけないのだが、真人殿がここに来ることになった原因であろう扉は壊してしまった。それ故に真人殿を元の場所へと帰すことはできないかもしれないのだ」

 「え、帰れないのですか? 龍神の力でも?」

 「ああ、そもそもアタシは先も述べたとおりこの琵琶湖を棲家とした龍神だ。真人殿はこのあたりにいたわけではないのだろう? アタシの力の範囲、大体琵琶湖を目で見ることのできる範囲くらいまでしか及ばないのだ。おそらく件の扉には何かの条件に反応して場をつなぐ力があったのだろう。故にアタシの力で返してあげることもできないのだ。」

 「そうですか……」

 

 真人は瞑目しはき捨てるように言うと沈黙してしまう。


 「そうだ、そして真人殿の話に聞くような設備のそろった都やそのような服装が普通の場所の話は聞いたこともない。そこを目指すにしても危険な妖怪の縄張りに入らずに帰れるかどうかはわから「ちょっと待ってください!!」

  

 消沈していた真人がいきなり詰め寄り話を遮った。

 心なしか目がキラキラしていた。その勢いに水穂は少し引きながら返事をする。

 

 「ど、どうしたのだ? 急に、確かに悪いことをしたと思う。アタシにできうる限りの侘びはしたいと思っているがこの状況では申し訳ないことだが大したことは……」

 「それよりも! 妖怪っていいました? というかあの山にいる奴以外にもそんなにいっぱいいるものなのですか!?」


 どんどんと意気が高まっていく真人に対して水穂は頬をひきつらせながら答える。


 「ああ、というより妖怪は自然を支配し、時によっては人里すら襲撃し人にとって敵ともいえるものではないか。真人殿のいた地では違うのか?」

 

 と言う言葉を聞き、真人の中で一つの仮説が立った。それは神隠しの言い伝えだ。

 その昔に、人が行方不明になるとそれは神様が神域に人を隠すと言われていたものだ。

 最初はわけがわからなくなって喚いていただけであったが、なるほどこの状況にぴったり合うではないかと考えていた。

 そして、そんなことよりも、


 「妖怪!! ここら辺では普通にいるんですね!? 俺がいた場所では伝承でしか残ってなかったんですよ! それで見たことがなくって、それでも伝承について色々調べていたんですよ!! 俺にとって数年来の研究が実を結んだっていうことですよ!? ああ、ここまで来るのに長かった。」


 と、彼の頭の中はもっと重要なことでいっぱいなようだ。

 この帰還についてあまり気に病んでいないように見えた真人に疑問をもった水穂が訪ねた。


 「責めないのだな。アタシは恨まれていい募られると思っていたのだが……」

 「ああ、俺の棲んでいた場所では似たような事が結構伝承として残されているんですよ。確かに、理不尽だとは思いますが俺以外にも似た様な事が起こった人間がいっぱいいる、ということを知っていたので俺を取って食おうとしているわけでもない水穂様をただ責めようとは思えないんです」


 そう言う真人に水穂は戸惑いながら「そうか」とやはりばつの悪そうにつぶやいた。これは、妖怪の実在を心底望みながら調べ続けた真人のある種の覚悟がもたらした心境だ。

 そもそも、人を食うような存在に会おうと調査を続けた男なのだ、修羅場をくぐっていないもののいつか死ぬかもしれないという覚悟は多少は持ち続けていたのだ。

 それが思春期特有の妙な自己顕示が起源だとしても長く持ち続けたものは定着してしまうのだ。


 「でも、大丈夫なのですか? 山にいるという妖怪は。俺は力になれないようですがこのままでは危ないのでしょう?」

 「そうだな、それについては真人殿のおかげで覚悟は決まったよ。アタシは明日から何とかやつに挑みに行ってくるよ」


 とどこか遠くを見るような笑顔で水穂が言った。真人はこれに焦ったように聞く。


 「え? でもさっきアタシではどうしようもないって言っていたじゃないですか。それなのに大丈夫なのですか?」

 「いや、確かにどうしようもないだろうし敵わないだろう。だが可能性は無くはないんだ。あの山からアタシの領域である琵琶湖まで引っ張ってくることができれば何とかなるかもしれない。このままだとどうせここら一帯が不毛の地となりアタシも消えることになるんだ。それならば守護を求める人々のためにもこの命かけるしか道はないだろうさ」


 そういう水穂の顔には覚悟と諦めが浮かんでいて真人は黙ってしまう。

 そして、疑問に思ったことを絞り出すように聞いた。

 

 「あの? 俺のおかげで覚悟が決まったと言いましたがどういうことでしょうか?」

 「ああ、それはね、こんな状況になりながら導くものがどうこう言って動かなかったアタシだが、真人殿がきて、あんな都合のいい噂なんか信じるもんじゃあないってわかったからさ、それなら一番可能性が高い道を選ぶしかないだろう?」


 今度こそ真人は黙り込んでしまう。

 その様子を見た水穂は苦笑して、真人の心を軽くするために努めて明るくしゃべりだした。


 「さて、というわけで無責任だがとりあえずの侘びと礼としてあれをやろう、米が無限に出てくる俵だ! これさえあればとりあえずこのあたりでも生きていくことはできるだろうさ。アタシが山の妖怪との闘いに勝った後なら他にも何か助けになるさ。というわけで今日はここに泊って行きな。もしあたしが負けてもすぐにここいら一帯が全滅するってわけじゃないから様子を見ながら周囲の村人にもここらから避難するように勧めてほしいんだ、頼んでいいかい?」

 「……はい」

  

 その返事を聞くと水穂はほほ笑んだ後に布団を用意しに部屋から出て行ってしまう。

 その笑みはまさに人の身にあらざるものといえるほど美しいものではあったが、先いほどの浮かれた様子と打って変わって心に余裕のなくなっていた真人が気がつくことは無かった。


        

というわけで一話でした。

読んでいただきありがとうございました。

コメディ色が全然出せない……

まだや、真人君の心に余裕ができれば命がかかっていても軽い雰囲気で進んでくれるはずだ。

ご意見感想お待ちしております。

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