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妖怪って厨二病の華だと思うんだ。  作者: 冬月 道斗
三上山の出会い、長物たちとの遭遇
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序章 

処女作です。

読んでいただければ幸いです。

 とある大学の一室に4人の男からなるサークルのメンバーが集まっている。


 「さて諸君。この夏に行く目的地を決めたいと思うが、どこに行きたい?」

 「とりあえず予算じゃね?」

 「夏なんだからやっぱり海か山だろ?その手の話も多いしさ」

 「目的地よりメンツは? 女の子誘えそう?」


 黒板を背に教卓に立つ男に対し、だらけたように前列の席に集まる三人の意見が飛ぶ。

 その様子に、教壇に立つ男が少し不機嫌そうにいい返す。


 「お前ら、ただの旅行かなんかと勘違いしてねーか? 予算気にするリョウはわかるけど遊び目的のタツと合コン感覚のヒロはこのサークルの活動を何だと思ってんだよ?」 


 言われた三人は男の不機嫌な様子など気にすることもなく言い返す。


 「「「旅行」」」


 三人の声がきれいにそろう。


 「おーけー、おーけー。会議中断させるのは本意じゃないんだが、お前らがその気ならそれについて話そうか。ほら、このサークルの名前だ!読んでみろや?そしてそのちゃらんぽらんな脳みそに叩き込みやがれ!!」

 

 そう言いながら男――斎藤 真人(さいとう まひと)は黒板にガツ!ガツ!と乱暴に大きく響く音を立てて文字を書きだした。


 

                オカルト文化研究会


 そこに書かれた言葉は限りなく胡散臭く、黒歴史の予感がするものであった。


        ◆◆◆◆


 真人の趣味はオカルト――特に妖怪と呼ばれる存在に関することである。

 その始まりは大したことではなく、中学生のころ何の気なしに自分の名前をインターネットで検索したことに起源する。

 

 ――余真人

 たいして興味を持てないような記事が続く中でその名前に目が行った。 いや、名前に目が行ったわけではなくその人物についての説明に目が行ったのだ。

 

 ――陰陽師

 その言葉に、ある病気を患いかけであった当時の真人は大きく惹かれたのだ。故に真人は、その日のうちに数冊の本を買って読み始めた。

 その内容はもちろん陰陽師についてなのだが、ここで今日までの真人の趣味を決める大きなキーポイントが入り込む。  

 考えてみてほしい。中学生という年齢で、陰陽師などというややこしいものについて、まじめな研究された本を読みたいと思うだろうか? かといって、もっと子供むけの教本のようなものを、大人ぶりたい年齢で読みたがるだろうか?

 そう、真人が買った本は妖怪でファンタジーでバトルものという、いかにもとある病気の人間にとってはピンポイントな内容だったのだ。

 これにより真人は厨二病と言う病気を完全に患ってしまう。この治療には少なくない時間が必要だ。ふとした瞬間に訪れる羞恥心からのショックがないと治療が困難な厄介な病である。


        ◆◆◆◆


 現在の真人は21歳の大学生となっていた。その趣味といえる大好物は変わっていない。それでも、他人に病気といわれるほどの症状(一時の真人は財布の中に自作のお札を入れたり中空に話しかけたりなどの症状が出ていた)を抜け出した。

 その変わっていない大好物についての知識は蓄積された。それにつれ、友人たちの間では妖怪ヲタという地位を獲得していた。

 

 そんな中で、友人3人で設立したサークルが「オカルト文化研究会」である。

 これは、病気が発症し続けていたころから続けていた真人の楽しみを、友達とともに楽しめないかと思った真人の主導で作られたものであった。

 活動内容は、心霊スポットへ行ってみたり、パワースポットに行ってみたり、今も残っている怪奇現象のゆかりの地に行ってみたりと、簡単な話が旅行である。

 少なくともメンバーの3人にとってはそうであった。

 

 比較的その手のスポットに興味を持ってくれている金村亮介(かなむらりょうすけ)

 

 なんだかんだ言いながらも観光として楽しんでいる土屋達也(つちやたつや)

 

 心霊スポット? 吊り橋効果だろ! これはいい出会いの場の予感!! な水沢 広(みずさわ ひろ)

 

 彼らはそれぞれこのサークルの活動を楽しんではいた。が、真人のように本気でオカルトを求めてたりはしていなかった。

 

 故に、あの会議と言う名の駄弁りにひと段落がついた後に、一人だけ並々ならぬ情熱を燃やす男は最有力候補となった地に下見にきていた。


 「はぁ」


 力なくため息をつきながら真人が思い出すのはヒロの言葉である。


 「真人がそういうの好きなの知ってるしそれなりに楽しいんだけどさー、やっぱり俺たちにとっての楽しみ方ってのもあるわけなんだよ。それが観光だったりレジャーだったり、女の子だったりなわけ。ということで、この第一候補に挙がった場所にほかの楽しみがあるのか? って重要な問題だ。これをごり押したの真人なんだから俺たちなりの楽しみ方ができるか調べといてくれよな」


 そう言われてその日の夜まで情報を調べた真人である。が、いかんせんその地は霊地と呼ばれている。その呼び名のとおり、半ば秘境のような扱いだ。観光目的の人間が少ない。そのため情報の集まりは悪かった。

 その結果一人で下見に来ているのだ。この男のフットワークの軽さは侮れない。 

 中学生の時から現在に至るまでに、大がかりなものから日帰りのものまで、三桁に届かんばかりの地に妖怪を求めて訪れている。

 今回の地はギリギリ日帰り可能だ。しかも長時間かけて見て回りたい。そんな思いから一度、一人で行ってみてもいいかな? という考えに至ったのである。 

  

 (それにしてもリョウまで旅行って言わなくてもいいのにな―。男3人もいて妖怪、怪奇、モンスターってな言葉に心惹かれるのが一人もいないとかどういうことだよ)

 

 と、行動に出さないだけで持病が慢性的に続いているようだ。

 山中と言えど、その歩みに迷いはない。山道を歩きなれているものの足取りだ。


 「うん、自然がいっぱいでいいもんだな―。空気も澄んでるし、きれいな川もある。これならあいつらも文句言わないだろうさ」

 

 そう少し満足げにつぶやく。

 

 「まだ時間もあるし、あいつらがいると嫌な顔されるようなところを見ておくかなー」


 真人は目に見えない力を感じとり、山のある程度安全そうなあたりを探る。

 これは真人のおなじみの病気……、ではない。中学生の時から数年間にわたり本物偽物問わずに霊験あらたかな土地を巡ってきた真人。そんな中で、ある種の霊能に目覚めていた。このような言い方だと、胡散臭げに見られるかもしれない。しかし、これは別に第三の目とかそういう類のものではない。単純に雰囲気の違いに敏感になっただけだ。

 たとえば、都心の空気と山の空気の違いには、だれでも気がつくだろう。そんな感覚を敏感にしたものが真人の霊能である。この単純さがある種の(・・・・)とつく理由だ。

 

 この感覚を基に真人は空気の澄んでいるほうへと進み、最も澄みきっているであろう地点、もしくはその逆に不自然に濁っている地点を目指す。それが真人の行っている調査だ。

 そんな感覚に従って歩いると、何かが見えてくる。 


 「お、祠かなんかかな?」

 

 小さな鳥居が見えてきたのだ。真人は何かあると確信する。そして、それを目指し少し足を速める。

 その途中

       ――ゾワ

         ゾワ

 百足が背筋をかけるような感覚に襲われる。その感覚に真人は怖気づ……

 

 「大百足って妖怪いるけど確かにあのビジュアルを大きくされたらかなり怖いよなー、やっぱり足がいっぱいあったりする生き物って昔からそういう風に見られるんだろうか。毒も持ってるし嫌われていたんだろうな。うん」

 

いてはいないようだ。

 こうして見ると強い精神を持つ人間に見えるかもしれない。しかし、何のことはなく、ただ旅行先で浮かれているだけだ。


 そして、祠にたどりついた瞬間に真人は光に包まれる。

 

 こうして真人の持つあやふやな超感覚は思いのほか正しいものであったと証明された。

 

 そんな現象の後、祠の付近に誰かがいる様子はなくなっていた。


        ◆◆◆◆


 真人が暮らしていたのとは別の世界。その世界には真人の住む日本において退治された。もしくは消えていった。そんな存在が、いまだにあり続けている。そんな別の世界の日本。

 その日本の琵琶湖。そのそばに建てられた社の中で、一人の少女がいた。服装からして巫女だろう少女が頭を悩ませている。 

 

 その少女は160センチを超える長身で、水色の長髪を無造作に伸ばしていた。鋭い目つきに、黄土色の瞳、その瞳孔は縦長の円形をしていた。

 そんな彼女の容姿は、普段ならば凛々しさにあふれているであろう。だが、今の彼女が纏う雰囲気は弱弱しいものに見える。


 「くそったれ。どうにかしてくれって言われても、あんな化け物どうしろって言うんだよ……」


 そう呟き、一つの山の方をにらみつける。その山は縄を巻いたように所々肌が見えてしまっている。


 「どうすればいい……? このままだとこの辺に人が住むことができなくなる。くそが! 今まで地に潜ってたんならおとなしくそのまま穴ん中に居やがれってんだ!! どう対処すればいいってんだよ!!!」 


 そう叫び、その目線を社の奥に移す。そこには重厚な、しかし大きさはさほどではない扉があった。

 この扉はこの社が建てられるよりも以前からあるものだ。そして、一度も空いたことはないと言われていた。むしろこの扉があるからこそ、ここに社がおかれたのだろう。

 

 その不思議な扉には一つの噂がささやかれていた。


 ――この地に危機が訪れた時、その時にこの扉は開き、導く者があらわれる。


 そんな御伽噺のような噂が彼女は腹立たしかった。

 それほどまでに追い詰められ、縋りたくなるからこそ。


 「導くものだか何だか知らないが、出てくるってんなら出てこいってんだ!!」


 八当たりと自覚していた。しかし、堪え切れずに、今までどんな力自慢であろうとあけることのできなかった扉を殴りつけた。

 少女の拳が生んだ力は、常人の及ぶようなものではなかった。が、そもそもが今まで少女が挑戦しても開けることのできなかった扉だ。少女にとって、行き場のない感情をぶつけるだけの行為であった。


 その拳が扉に当たる。その瞬間に、雷が近場に落ちたような炸裂音が響く。それと同時に扉が開いた。

 すると、そのままその音の威力を示すように、吹き飛んでしまった。  

 

 そしてその扉のあった場所に一人の青年がいたのである

 


             「「……はあ?」」

 

 呆然と見つめ合った後、間の抜けた声が重なる。

 これが、一人の青年の長年の望みと、少女の願いが叶った瞬間であった。

                      

 

読んでいただきありがとうございます。

4000字くらいだけどこのくらいでいいのだろうか?

ご意見ご感想お待ちしております。

初投稿なんでシステム的なアドバイスも頂けると嬉しいです。

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