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7 法的な保護者

死にかけから健康状態までに復活した私はナイトにローブをかぶせて、さっそく保護者探しに出かけた。

ナイトは美貌男というだけあり目立つ!

財産を取りに行ったときに人々が気にしなかったのはナイトが魔法を使っていたらしい、だが魔法を使って認識されないのでは困るし、その魔法で何かに巻き込まれる可能性もなきしにあらず。

まだローブで隠して怪しげに仕立てたほうがマシだと考えたのだ。

とりあえずの保護者の基準は私の身の安全のため、あとは結局ナイトのヒドイ粗筋を実行にするために女性であること。貴族のふりはそのままナイトの役割となった。

貴族が妾を囲うことは特段珍しいことではなく同じ屋敷内に住んでいたりもするものであるから怪しくはないらしい。

私には不道徳にしか思えないのですが、それがこの世界では受け入れられているとのこと。

それによって目立たないのなら良し、とした。どうせフリをするだけなのだから。

あとは身元がしっかりしており、お金に困っていて性格の悪くないもの、可能であれば私に容姿が似ている人。

お金に困っていてというところが、人の弱みに付け込んでいるようだけれどもそれによってその人だって悪くなるわけではないのだから目をつぶることにした。

私の安全だって、そこにかかっているかもしれないのだから。

とりあえずナイトと手をつないで何日か街中を歩きまわってみたがいるのはホームレス、貧困者たち、これぞという人物はいなく自分と同じようなぼろぼろの孤児たちをみては後ろめたさを感じて保護者をみつけることはできなかった。

みんな陰気な雰囲気を醸し出していて身元の保証が心配でだめだったのだ。

「…フェア様、よろしければ治療院などいかがでしょうか?あそこでしたらお金に困っている三等平民が見つけやすくいるかと存じます」

なるほどね!ナイトってなんて弱みを見つけるのがうまいのでしょうか。

身元が保証されていないと治療院で治療を受けることができない。またお金があるものは魔法医といって魔法によって治癒するほうに流れるので自然、治療院はお金がなくて身元が保証されている人になっていくというわけだ。

ちなみに魔法医にみてもらうと金は掛るがすぐに治ってしまうらしい。なんか魔法怖い。


そんなわけですぐさまに目に付いた治療院に入った。そこはそこそこに大きく見知らぬ人がいても気づかないぐらいの人たちがいた。

ちょうど寒い時期で体を壊す人が多いせいかもしれない。

着ているものはいいものではないが、もう捨てる寸前とかいう酷いものではないのでナイトがいう三等平民の人が多くいるようだ。

女性で私と似た薄茶色の天然パーマの人はいないか…。

ナイトに連れられて勝手に侵入して、それぞれの仕切りから一人ひとり確認するも該当する人はいなかった。

少し遠いしきりに薄茶色の髪の毛が見えたのでそこに進んでいく。

だけれども進んでいくごとに嫌な胸の高まりを感じた。

その人はやせ細っていたけれども確かに女性で私と同じような髪の毛で、だけれどもピクリとも動かず、周りに誰もいないことからすでにこの世にわかれを告げてしまっているように見えた。

すごく嫌だ。うまく息を吐くことができず掠れるような声しか出ない。今の私は真っ青になっているかもしれない。

「いこう」

嫌だ、嫌だ!まるで昔の死ぬ間際の私のようではないか!また私はああやって死ぬのか!?

嫌だ!嫌だ!嫌だ!

それしか思えなくてナイトに抱き締まられて背中を軽くリズムよく叩かれていると気づくのに随分と時間がかかった。

そこは最近なれてきた宿屋の一室だったのだ。

おぼろげにナイトに抱っこされてもどってきたと思い出せた。

ああ、自分は見知らぬ女性に昔の自分を、今の自分を混在させて重ねてしまったようだ。

死んでしまった昔の自分、いつ死ぬ危機にさらされるかわからない今の自分。

死ぬのが怖いのだ。そう、死を恐れているのだ。

震える私を抱きしめてナイトはただそばにいて「ご安心ください、恐れるものは何もありませんよ。私がお守りいたしますから」と繰り返し、言い聞かせるようにいってくれた。

実際私に言い聞かせていたのかもしれない。

その後、二日、三日と宿に引きこもってみたけれどもナイトは何も言わず甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた。

寝てばかりいたおかげで朝早くに目が覚めた。

それと同時にナイトからの「おはようございます。よい一日になりますよう」という挨拶をうけた、何も言わないのでナイトはしてほしいことをしてくれるときがある。

不思議だ。

…とよく考えたらオカシイ。

「あのさ、ナイト。もしかして私の考えてることわかったりするの?」

だって卵が食べたいな、と思えばそれが乗った皿が差し出され風呂に入りたいなと思えば昼間でも風呂の準備が始められる。

これおかしくない?

「やはりお気づきでなかったのですね。実はフェア様とわたくしには、というよりも主人と胎片には目に見えない繋がりがあるのです、それによってなんとなくフェア様の考えていることがわかる程度ですけれども」

…それ、なんか覗かれているみたいですっごい嫌。

「それでしたら力の制御をしてみるのがいいです。この国にはフェア様以外にも貴石をもつかたが発表されているだけで二人いるようですし。その方たちに気づかれてしまう可能性も」

えっ、もしかして制御しなきゃ、ほかにもいる人たちとやらに気づかれて何か面倒なことに巻き込まれたりするの!それも嫌なんだけど。

とりあえず衣食住に困らないで平凡だけれども幸せな生活をしたいんだから。

「やはり、そうですよね。あまりに強い感情ですと制御しなければ他の貴石にもダダ漏れになってしまうようですから」

「ってか今こそ、私の思考がダダ漏れなんだけど!私何も言ってないのに何返事してくれてんのさ、“強い感情”ってこの間のこと指してるっ?それだったら、もう気づかれているじゃん、大事なことなんだから一番に教えてよ!」

ぜーはー、と深呼吸を繰り返して叫び果てたのどのために水を一杯。それも気づいたナイトが入れてくれたやつを。

すでに取り返しがつかないのでは、と思いつつもナイトに洗いざらい私が納得するまで説明させた。

まぁ強い感情って言ってもなんとなく、そっちの方向からきてるとかで特定はできないらしいのでこれから要訓練となった。すぐに見つかってしまうようなものではないらしい。

重要なのは想像力。大事なものに何かをかぶせて周りに漏れないようにすることを常に意識の片隅に置いておけばいいらしい。難しいことを。

それでナイトはあらゆる魔法が使えそうだということ、「昔は治癒しかできませんでしたが、なぜか火も風もその他も使えるようなんですよね」とにっこりと。

ためしに小さい風や火をだしてもらったけど「魔法だっ」と驚いたぐらいで使い道がわからなかった。

うん、金欠で困ったらナイトに稼いでもらおう。

あとは胎片同士、もしかしたら気配を感じるかもしれない。とのことでナイトは出現時の日以外は気配を消していたらしい。まったく知らなかった。

朝食までは時間もあるしで、ながら作業をしても感情が漏れないようにする訓練のため散歩に出かけた。歩きながらも、物をよけながらもナイトに思考が漏れないように無意識に制御できるようにするための訓練だ。

だってナイトは「なんとなくわかる程度」とかいってるけど明らかに思考が漏れまくってるじゃん、プライバシー侵害反対だ。

河原をあるいていれば身に覚えのある薄茶色を見つけた。

足を止めてよくみれば、それはこの間、私が逃げ出した治療院で寝ていた女性に思われる。

あれから保護者探しは保留にしてもらっていた。

そっと近づき、途中でナイトに止められたけど近づいた。

やはり微動だにしないが胸がかすかに動いているから生きているようだ。

ああ、でもひと月前の死にかけている自分を見ているようだ。

そっと泣いたあとを撫でようとして手を伸ばした。

「手が汚れてしまいます」

ナイトに止められた。

お前はこれよりも汚い私を撫でまわさなかったか、あの時。この女性は全然きれいだ、汚れなど、どこにもついていない。

地面に直に寝ているので、そこは汚れているかもしれないけど。

「あなた様が心配なのです」

また私が感情を爆発させてしまうのではないかと気にしているのか。それなら大丈夫。

制御訓練はやめて余裕ありげに「平気、平気、大丈夫」と声に出さずに伝えた。

不満そうにしていたが一歩下がって様子見することにしたようだ、ちょうど女性が目を覚ましたからかもしれない。

だから問いかけた。

「どうして、ここで寝てるの?」

寝起きのためかボッーとしてるような視線がしばらくして私の視線に合う。

「治療院をおいだされたのさ、金がなくなって。身内もいないし、治る見込みがないってことでね」

案外はきはきとしゃべっている。

なるほど、お金を払う身内がいなくて治りもしないので放り出されたというわけか。見たところ所持品はなにもなさそうである。これは遠まわしに死ね、といっているようなものではないか。

「今まではどうやって生きてきたの?」

病気になるまでは働いていたはずで、どんな職業なのだ。

「娼婦だよ、体売って生きてた。今じゃ見る影もないけどそこそこ売れっ子だったんだけどねぇ」

「…そうなんだ?」

「…」

「…」

なんとも言えないでいると向こうから淡々と理由を告げられた。

「親の借金の形として売られた、碌でもない親だったから別にいいけどね」

そうですか、としか答えようがない、私だって短いがここ最近はありふれた不幸を味わっていたし。そう私のようにホームレスで死ぬ人なんか王都では珍しくもないのだから。

「いくつなの?」

「25ぐらいじゃないかな」

なるほど言われてみれば造作は整っている、売れっ子だったというのも頷ける。25というのも私にとってはいいぐらいの年だ。

それにこちらにはナイトがいるのだから。

「そんで私からの質問だけど。こんな死にかけになんかようなのかい?見ての通り、この体じゃぁ誰も相手できないし、何もできないけど」

そこで決めた。

「ねぇ、お姉さん。質問なんだけど家事はできる?秘密は守れる?…身分は三等平民かな?」

私が質問に答えないで更に聞くと深いため息をつかれた。あきらめたように答えてくれる。

「まぁ見習い期間があったし、客のことはしゃべらないのが暗黙のきまりだからね、大丈夫じゃないかな。知らないかもしれないが娼婦は三等だって決められているだろ、それがなんだっていうのさ」

それなら、私は彼女にした。

女性で私と同じような髪の毛で身元がはっきりとしているようだし性格も悪くない、なによりも彼女ならいい、と思えた。

多分、自分を重ねてしまった彼女を助けたいと思ったのだ。それが伝わったのか静かにしていたナイトが柔らかく頭を撫でてくれた。「大丈夫ですよ、わたくしに掛かれば病気など駆逐して見せましょう」とささやかれたことによってまだ揺らいでいた決心がつく。

「それなら私と取引をしましょう。あなたが差し出すのは私が成人するまでの7年という時間、私が差し出すのは7年分の契約金、そしてあなたの健康」

「…」

あ、おかしな子供を見るような眼で見られてる。まさにその通りな現状だけどもっ!心に突き刺さります。

「私は今、8歳なの。それで育ててくれる身元のはっきりした人がいない、学校にも通いたい。で、後ろの怪しいのは保護者にはなれない事情があって、保護者を探していたの。どうせ、死ぬところだったのでしょう?なら、その期間を延ばして私の世話をしてほしいの。うしろのは治癒魔法が使えるから、お姉さんが頷いてくれれば取引成立よ」

「ああ、うん、わかった。いいよ」

なんか開きなってる。詳細を説明したわけじゃないのに頷かれたし、本当にいいのかな。

病気を治したらあっさりと逃げられちゃったりしたら私がやばくなるかもしれないけど、そのときはそのときだっ。

「なら、ナイトお願い」

「かしこまりました」

ナイトは失礼します、と断ってから女性と私の手を片方ずつ掴んだ。前振りもなにもなく、その声が響く。通常とは違う音であり一種神秘的な空間を作り上げていく。

『命果てるまでの誓いを宣言。我が主人の導きにより、7年の歳月を捧げよ。主人に害意あり場合および傷つけることは、その命をもって償うものとする。対価として相応の報酬を与えることとする。ここに誓言を発しナイトの名により契約を紡ぐ』

知らない言葉であるのに何を言っているのかわかる。

私と女性をつなぐナイトの手は淡くひかり何かが体にはいりこむ、それが女性と私をつなぐものであることがわかった。

つまりはナイトを通じて私は女性と契約をしたことになったのだろう、口上を邪魔して変なことになるといけないと思い我慢していたウズウズとした気持ちを終わった途端にナイトを蹴り飛ばすことで発散する。

やつは河原の坂道を転がって川に落ちた。

ざまぁ!

私にかなり優位なことを契約した!これこそ人の弱みに付け込むやり方!

私は両腕をくんで川から上がろうとしているナイトを見下ろした。

「ナイト、反省するまで上がってきちゃダメよっ」

ナイトは困惑しながらも川から上がろうとはせず悩んでいる…やつにはなぜ私が怒っているのか理解できていないようだ。

ただ川に落ちたことによってローブがまくれ水に濡れた美貌男がこちらをうかがっている状態は知らない人が見たらときめくかもしれない、と違うことを考えてしまった。

その考えが伝わってしまったのか見惚れるような笑顔をいただきました。

その私の後ろでは「…魂の…契約…したみたいね…」と手を見つめている女性の姿があった。

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