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ナナ(2)

京太郎の姿が消えてから、ナナは考えていた。

最後に放った召喚魔法で、自身の魔力をかなり消費しまったから『魔力タンク』――ナナは自分の魔力残量を便宜的にそう呼んでいる――は、ほぼ空っぽに近い。おそらく小さな炎を灯すので精一杯だろう。

次に自分が、あの召喚魔法を行使できるのは早くて明日の午後だと思っている。


いずれにしろ、魔王宮へ突っ込むには戦力も装備も足りない。

結局、協議の結果今日は最寄の街まで戻って一泊することにした。


もしスカイツリーヌがまた現れても、今度はいきなり京太郎を召喚すればよい。

そう思うと、ナナはかなり気が楽になる。




太陽が地平線の向こうへ沈みかかり周囲が薄暗くなった頃、ナナたちはレモードの街に戻ってきた。ここ最近、すっかり常宿となっている『満月の欠片亭』の食堂で4人そろって遅めの夕食をとる。


「明日、もう一度だねぇ」


アップルがエールを飲みながら言った。少々頬が赤くなっているのは、ナナが降りてくる前から既に飲んでいたからだろう。この稀代の魔法使いはややアル中気味なのが唯一の欠点だ。

ガナザードはエルミラ肉のステーキにかぶりつき、ウェイトレスの猫耳娘にエールのおかわりを頼んでいる。

ライトルはパンを小さくちぎって口に運んでいるところは、多少……いや、ほんの少し王族っぽいかなと思わせるけれども、その横に積みあがる皿の数を見ると、すっかり市井の食事にならされてしまっているようだ。

ナナも割とワイルドに串焼きをほおばったりしているので、人のことはとやかく言えないのだが。




「ところでナナ、君はあの精霊様と知り合いなのか?」


とりあえず皆の腹が、ある程度満足感を覚えひと段落したところでライトルが口火を切った。


「精霊?」

「最後にすごい精霊様を呼び出したろ?全裸の」

「契約まで交わしていたから初対面ということではなさそうだが……」


そうか。ライトル達はきょうくんを精霊だと思っているんだ。裸だったし、そう言われればそう見えていたかも。

私の世界の人だと知られるとあれこれ聞かれそうだし、精霊だと思わせておいたほうがいいのかな……。


ナナはそう考え「前に何度か呼び出したことがある」と答えておいた。

向こうの世界にいたときは幼馴染なのだから、当然のごとく京太郎を呼び出したことは何度もあるし、『前』は『前』であって、どれくらい前かは明確に言っていない。

ちょっとずるいかなと思ったものの、それでごまかすことにした。


ナナは基本的には明るく元気で前向きで真面目に頑張る女の子だが、面倒そうなことはテキトーに済ましてしまう一面が出た。

文化系か体育会系かで分類されると体育会系に入ってしまう(京太郎に言わせれば「ナナは結構脳筋なところがあるよな」)ナナは、勉強以外で物事を深く考えることは苦手なのであった。


「スカイツリーヌは、全裸の精霊様のオーラにやられたのかなぁ」

「しっかし、強かったよなー」

「あの攻撃は完全に想定の範囲外だった。スカイツリーヌの弱点が意外なところで暴かれたな」

「さすが精霊様だよねぇ」


3人とも自分が見たままを言っているのだが、ナナから見ると思い切り見当違いもいいところである。わたしだって嫌だ。あんな攻撃。


「俺達も次にスカイツリーヌと戦うことがあったら、全裸でいくか。なぁライトル」


わっはっはとほろ酔い加減のガナザードが陽気にのたまったが、ナナは「絶対にやめて」と全力で否定しておいた。


それって聖騎士様の言うことじゃないし。

ライトルも頷かない!

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