表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/20

ナナ(6)メロン畑で捕まえて

一方ナナたち勇者一向は、消えたスカイツリーヌを追って魔王宮の方角へ歩を進めていた。途中魔物に何度か襲われたがいずれもたいした魔物ではなかったので難なく撃退している。


「いったいスカイツリーヌはどこへ消えたのかしら?」


先頭を歩くナナが言う。かれこれ2時間は歩いているが、そもそもスカイツリーヌの痕跡を見つけられていないので、方角的にこっちが合っているのかもわからないことに不安を抱く。


「たしかにスカイツリーヌの痕跡はねえが、魔王宮がこっちなのは確実な情報だ。なんだったらスカイツリーヌを飛ばして魔王戦でもいいんじゃねぇかな?」

「それもいいだろうが、まだ魔王軍には虎の子の第一機動ドラゴン部隊もまだ無傷で残っているんだ。もしそいつらと戦っている間にスカイツリーヌに乱入でもされたらえらいことになるぞ。……たぶん、いや、違うな。確実に俺達みんな死ぬ」

「えー、ここまできてそれはいやだなぁ。まだ食べてないものや飲んでない地酒とかたくさんあるしぃ」


グルメに生きるアップルはともかく、ガナザードとライトルの意見は真実をついている。スカイツリーヌ1人にあれだけてこずっているのだ。数押しされたらかなり厳しい状況は目に見えている。


「ナナ、だからって、あの精霊様はもう安易に呼び出すさないほうがいい。スカイツリーヌも苦手にしてるみたいだからどうしようも無くなったときの撤退用の時間稼ぎならいいけど、普通に勝てる状況であのおかしな空気を毎度毎度作られるのは困る。……それになんといっても……その……とにかく下品だ!公衆の面前で、下半身露出だぞ!」

「ん。わかったよライトル。安易には呼ばない。約束する」


ナナはライトルの言葉の奥に京太郎に対する嫉妬心が多分に含まれているのはわかっていたが、実際2度ともグダグダな結果に終わっていることも事実だ。しばらく会えないと思うと少し寂しくなるが、よく考えたら戦闘時以外で呼び出せばいいだけ、ということに気付く。


(でも、勇者による精霊召喚魔法って、京太郎しか呼べてないのよね。私に京太郎以外の精霊って召喚できるのかな?)


ナナそんなことを考えていると、ガナザードが鋭い声をあげる。


「右前方、あのでかい木のあたりに何かいるぞっ!」


いち早く剣を構えるガナザードに続き、ライトル、アップル、ナナも弾かれるように戦闘体制をとる。




ガサッ ガサッ




音はするが生えている草の背がそこそこ高いため、視認できない。


「アップル、燻りだすぞ。魔法を打ち込んでくれ」

「りょうか~い」


ほわんとした物言いながらも、その手は素早く中空に魔方陣を構築していく。魔法陣の完成までわずか2秒。


「そぉれっ」




バッシャァァァン!!




ガナザードが指示をした一帯に、突然空から大量の水が雪崩をうったかのように落下してきた。

バラエティ番組でよく見る罰ゲームのごとく。



ジュワァァァァァ!




その水が地面や草に降り注いだ瞬間、ものすごい蒸気が立ち上りクリアだった周囲一帯の視界が瞬く間にゼロになる。

ナナたちも視界を奪われ、有視界による戦闘を有利に進めようとしていた計画があっさり瓦解して狼狽する。


「うわっ、アップルあなた一体何を落としたのよ!?」

「聖水だよぉ」

「じゃあ、あの猛烈なミストは魔界の土地が聖水によって浄化されているというのか?」

「たぶんそうかな」

「もう少し別なやり方はなかったのかい?アップル……」


そうこうしているうちに、ミストの向こう側から何かが転がり出てくる。

つんのめりながらもどうにかこうにかミストの範囲外まで来て、ゲホッゲホッとむせては「ウボァァ~」と意味不明な事を叫んでいた。

一方何が出るのかと緊張していたナナたちは出てきたものを見て一気に脱力する。


「ゴブリンかよ……」

「これだけ大山鳴動して出てきたのがただのゴブリンて……」

「まごうことなきゴブリンだな。しかも武装も短い鎌が1つきり。防具すらまとってない。雑魚中の雑魚だな」

「ゴブリン1ぴき~」


ゴブリンの1匹くらい鼻クソほじりながらでも倒せるレベルにある4人である。緊張が緩んでも仕方ないといえる。

しかし、彼は今しがた自分に対して聖水を落としてくれやがった勇者パーティーに果敢にも挑んできたのである。

と言っても、持っている唯一の武器ともいえる短い鎌で……というわけではなかった。



「お、おめだぢ、いったい、なにしてくれぢゃってんだか!?」


このゴブリン、たどたどしい(というより訛りなのか)ながらも人語を解するようである。

ある意味貴重ではあるが、さっさと倒しスカイツリーヌを追うべきだ。

4人ともそう思っていたが、ゴブリンの次のセリフで事態は全く急展開することになる。


「草っごさ刈ってただけだだだに、おらがたいせつにたいせつに育ててた、こうぎゅうなデスマスクメロンが、いきなり聖水なんがふらせっがら、ぜぇんぶ、ダメになっちまったでねぇか!!」


ナナは思った。

あれ?このゴブリン何言ってるの?

デスマスクメロン?

そだててた?

ダメになった?


ナナの頭の中で脳が珍しく高速回転を始める。

それらの話が事実だとすると、つなげるとある1つの恐ろしい結論が導き出される。




もしかしてこのゴブリンは、魔界でデスマスクメロンとやらを育てて暮らしてるだけの、ただの村人なのでは?























「おめだぢ、おらのデスマスクメロン、べんしょうしねぇなら、魔界さいばんしょに、うったえてやっがらな!」


一番下に投稿しないと最終更新日が変わらないんですね。

全然新着上位こなくてあせりました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ