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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

宇宙を制する魔法使い

作者: 賽の目四郎

◇太古の魔法使い

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地球の歴史の中でも、魔法使いの歴史は長い。

紀元前6千年頃よりアフリカ大陸の奥地では呪術として効力を発揮していた。

部族間の戦争は領地争いが殆どだが、その境界線を維持するのは難しい。

そこで、各部族の族長は物理的な境界線ではなく、心理的な境界線を敷くことを考えた。

それぞれの族長直属の魔術師は敵の戦士に魔力的な圧力をかけ、部族間の境界線を無意識レベルで押しやることを繰り返した。


一旦心理的境界線が固まると、各々の部族は戦士を中心としてその境界線を越えることに強い恐怖を感じるようになる。

限界線を越えると一部は発狂し、大多数はトラウマレベルの恐怖を覚えて戦士としては使い物にならなくなる。

従って、お互いに一旦魔術競り合いで決まった境界線は越えようとはしなかった。

また、戦士は部族下の各集落の長であることが多いので、配下の民は自然とその決定に従う。

これによって、魔術師の力により一時の平和は保たれていた。


その後、アフリカ大陸に文明がもたらされ、都市が発達していっても部族間の均衡は保たれたままであった。

これには代々の魔術師の家系の絶え間ない地下活動が連綿と続けられていたためである。

そのおかげで表面上は白人資本や中国資本の侵略に晒されながらも、各部族間は時々小競り合いで死人を出しながらの荒っぽい共存体制は21世紀初頭になっても続いていた。



時は少し流れて2080年、アフリカは白人及び中国の支配を完全に脱し、魔法を技術的な根幹とする都市国家を築いていた。

きっかけは2060年頃の各部族の覚醒である。

それまでは伝承のかなりの部分が途絶えて形だけの呪術として細々と残っていた魔術師だが、2055年前後にその魔術師と言われる人々が本物の魔術を使えるようになった。

その直接の要因はその前年の2054年、アフリカ大陸に大量に降り注いだ流星雨であった。

直接地表に衝突するような大きな塊はごく僅かであったため地表の被害は微々たるものであったが、その流星雨がもたらした微粉末状の雲が地表に到達した時、各部族に数人単位で本当の魔術を使える者が発生した。

流星雨の微粉末を吸い込むと、適性のある者は体の中に魔術回路が自然と出来るらしい。

それは手術などで切開しても見える物ではないので、体を構成する分子の多層次元の重なり合いの上に存在する為と思われている。

これは伝統的な魔術儀式を行っている最中に本物の奇跡が各地で起きたことで一気にアフリカ中に広まった。


まず、奇跡を起こして力を得た各部族の魔術師が族長の命を受け、他の有力な部族との領地争いが激化した。

部族と言っても、表面上は市町村の様な2050年代の近代都市である。

しかし、水面下では数千年の間、連綿と続く部族間の争いは未だ完全には収まっていなかった。

そして、魔術師は互いに相手の族長の命を狙うのですぐにリーダー不在となり、情勢は悪化する。

魔術師が力を持つことによりリーダーの座を継ぐか奪うかして、各部族は魔術師を頂点とする命令系統になっていった。

その後、魔術師同士の直接魔法対決などが繰り返された結果、次第に部族は吸収され統合されてゆき、国家を名乗れる程になった。


魔術師は国家元首となり、敗北した部族の魔術師を配下として組織に組み込んで行った。

既存の政府は魔術師率いる魔術組織にはあらゆる面で敵わず、若干の局地戦を経て平定された。

その課程で白人及び中国の支配は徹底的に排除され、彼らの設備や資源も全て魔術師国家に接収されて組み込まれた。

中国系支配者層は傭兵団や近隣アジア国の軍備を徴用して魔術師国家に戦いを挑んだが、殆どの場合緒戦で魔術による恐怖心理攻撃により総崩れとなり退敗した。

彼らは武器も装備もそのまま身ひとつで逃亡したため、それらの装備は魔術国家に組み込まれてますます強力になっていった。



◇アフリカの魔法使いの力

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アフリカの魔術国家の使える魔法の種類は主に心理的な影響力を与えるものである。

物理的な影響力を与える種類の魔法は数少なく、発動できる人員も限られている。

そもそも近代兵器の威力、射程距離に比べて、魔法で物理的な影響力を与えると言っても非常に限定的であり、生身の人間が持てる魔力総量にも限界があるので、せいぜい目視距離に1トン爆弾相当の爆発をさせられる程度である。

それに比べて心理的な影響力の効果は絶大なものがある。

直接行使の距離は目視範囲に限られるが、現代科学の産物である電話、放送、文字通信、拡声器などを介することにより無限に近い心理的魔術効果は発揮される。

これにより、敵国の放送網に介入するだけで殆どの国民の戦意を喪失させ、厭戦勢力が一気の増大してその国の政府が一夜にして転覆することもあった。



◇悪い宇宙人

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そんなこんなで2090年になる頃にはアフリカ魔術国家の中で権力闘争に負けた魔術師が多数、他の地域に亡命し始めた。

魔術を使えるのは限られたネイティブアフリカンに限られているため、欧州、中国、アメリカ大陸では彼らの移住が歓迎された。

それらの国家は魔術安全保障チームを立ち上げ、移住した魔術師を顧問に据えて対アフリカ魔術国家の体制を作り始める。


そんな時に突然UFOが地球に来訪して来た。

映画よろしく、地球上の各巨大都市上空に同時に30機近い直径1kmの円盤が降下し、高度1000mで停止した。

そこで各都市のTV放送局とラジオ放送局は中継機能を乗っ取られる。

近年の中継施設は全てコンピュータ制御のため、一度最上位管理権を乗っ取られると物理的に破壊するしか止める術がなくなる。

電力系も同様に乗っ取られるため、電源を遮断することもできない。


そうしてUFOから各国言語で一斉に通達放送が始まった。


「われわれは宇宙人だ。おまえたちを支配するために来た。技術力の差は絶望的である。おとなしく政府の権限を渡せ。」


そんな中、アフリカの魔術国家の中でも最有力なカチオピア合衆国が国内の魔術師を総動員し、宇宙人のUFOに直接攻撃を開始した。

国中の巨大なパラボラアンテナをUFOに向け、一斉に心理的魔術を振幅変調増幅して直接ぶつけたのだ。

これによりカチオピア首都上空に停止していたUFOは急速に回転をし始め、そのまま成層圏を越えて月軌道辺りで爆発した。

心理的魔術の内容は以下である。

・我々は自国の上層部に強制的に命令され、全く知らない他の惑星の都市国家を支配下に置く作業をしていた。

・これは人道的に到底許容できるものではない。

・もし我々の愛する家族がその様な目に遭わされたらどうする。

・今ならまだ間に合う。悪の上層部の意思を挫くため、我々は自らを犠牲にして他の部隊の目を覚まさせよう。

・我々の宇宙船の自動航行装置を破壊し、手動操作に切り替えてこの惑星の衛星軌道まで全速力で退避しよう。


この内容の心理的浸透魔術を多数の巨大パラボラアンテナから大電力で直接ぶつけられたのだ。

船体の外郭が電磁波を音声及び思念波に変換し、船内の乗務員の意識を一気に刈り上げた。

全員が涙を流し、大声で懺悔の言葉を叫びながらUFOの自動制御系を破壊し、手動操作にして緊急離脱を行った。

その際、動力に対するエネルギー流入の制限装置も無効となっていたため、月軌道付近で限界に達して大爆発を起こした。


これを各国の天文台と軍部も観測していた。

カチオピア合衆国は反撃と同時に各国に暗号電文で今回実施した攻撃内容を伝えた。

半日遅れて各国の魔術師も軍部と協力し、国内のパラボラアンテナ施設を徴用してカチオピアと同様の攻撃をした。

カチオピアの魔術師ほど優秀ではなかったが、各国上空のUFOは殆ど大気圏外に飛んでいって航行不能になった。

中国北京上空のUFOだけは殆ど影響を受けず、そのまま停止していたがこれは中国首脳部がカチオピアの影響力を排除すべく、国内で独自に対策をしていて手間取っていたのが裏目に出て、先にパラボラアンテナを破壊されてしまった為である。


僚船が退避や逃亡したことに腹を立てた中国上空のUFOは北京の主要施設の攻撃を始めた。

予め地球各地の通信電波を受信し、地球の各国家の首都と重要施設を把握していたらしい。

的確に首脳部のいる施設を殆ど全て破壊され、中国は指導者層を一気に失った。

同時に中国軍部の司令部も破壊されたため、中国軍は身動きが取れなくなった。

こうして中国はUFOの宇宙人の下に下り、屈辱的支配を受ける様になった。



◇和平

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中国以外の国は互いに連携し、対UFO宇宙人のネットワークを組んだ。

海底光通信ケーブルのみを相互連絡に使用したため、宇宙人からの干渉は何とか逃れられたのが大きい。


宇宙人とて、魔術的影響力は全くの慮外であった。

科学万能で宗教すら入り込む余地もなく排除した純粋な科学国家である。

全てが物理法則で説明され、空想上の話をするだけで迫害された。

そのため、カチオピアが行った魔術攻撃(電磁波とのハイブリッド)はすぐには理解されず、占領に成功した中国以外の国家に対する攻撃は中止とされた。


こうして最初は武力であったが、魔術というロストテクノロジーのおかげで地球は一部を除いて宇宙人の僕とならずに済み、時間と共に中国を介した相互理解が進んでついには地球連邦対UFO宇宙人との間で対等な通商条約が結ばれた。


それからはUFO本国に魔術を効果限定で技術委譲することになったが、地球でさえもネイティブアフリカンのそれまたごく限られた人間にしか使えない魔術をUFO宇宙人に使えるはずもなく、数回の技術的会合で頓挫した。

これにより、UFO宇宙人側も地球連邦に対して無理を言うことが出来なくなり、完全な相互平和条約が結ばれたのであったー。


めでたしめでたし。



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