第5話「影狩りの真意」
戦いが一段落した屋上。
瓦礫の隙間から冷たい風が吹き抜ける。
黒い牙の影は収束し、夜の闇に溶けていった。
白刃のリーダー格は、屋上の端に立ち、静かに氷室を見据える。
「……なるほど。
王としての力は確かに身につけている。
だが、それだけでは王には不十分だ」
氷室は肩で息をしながら答える。
「王として不十分?
守るための力は、十分だろうが」
リーダー格は微笑むように首を傾げる。
「守る力はわかる。
だが……力を持つ者には責任が伴う。
影狩りはただお前を狙うために存在するのではない。
“力を正しく使えるか”を試すために動いている」
城ヶ崎が眉をひそめる。
「……つまり、彼らの狙いは、
力を奪うことだけではないということですか?」
リーダー格は頷く。
「お前の力が制御されているか、王として覚悟を持てるかを見極める。
もし制御できなければ、影は暴走し、人々を傷つける」
彩花が震えながら問う。
「じゃあ……お兄ちゃんを試してるの?
酷いよ……!」
氷室は妹の肩に手を置き、静かに答える。
「……試されるのは覚悟の証だ。
力だけじゃ意味はない。
守るために、どう使うか……
それを見せるための試練だ」
リーダー格の白い影が揺れ、氷室の牙を一度軽く押す。
「この試練はこれで終わりではない。
お前が王として完全に覚醒するまで、
影狩りは影の王を監視する。
そして、必要であれば排除する」
氷室は拳を握り、夜空を見上げる。
(……排除されるかもしれない。
でも、守るべきものを守るために、
俺は進む……影の王として)
城ヶ崎が氷室の横で静かに言う。
「覚悟のある王は、力を使うときに迷わない。
あなたはもうその一歩を踏み出しました」
彩花が小さく微笑む。
「お兄ちゃん……大丈夫だよ。
絶対に守れるもんね」
氷室は微笑み、握った拳を高く掲げる。
「……ああ。
誰も失わないために、俺は王だ。
影の王として、全ての試練を受けて立つ」
白刃のリーダー格は一歩下がり、静かに消える。
「……次に会うときは、もっと手強くなるだろう。
その時まで、覚悟を示しておけ」
氷室たちは夜の都市を背に、静かに影の力を整える。
──王としての試練は続く。
──だが、氷室の意志は揺るがない。
──誰も守れないままでは終わらせない。




