第2話「暗殺者の影」
闇に溶け込む都市のビル群。
氷室たちの前方に、黒と赤の影が蠢いた。
氷室は肩で息をしながら、黒い牙の影を伸ばす。
牙は闇の中で光を帯び、潜む敵を探知する。
城ヶ崎が低く告げる。
「氷室……奴らはただの人間ではありません。
“裏組織の影の暗殺者”です。
影を斬り、王の権能を分断する特殊能力を持っています」
彩花が震える。
「……お兄ちゃん、あれって……人なの?」
氷室は頷きながら、影を前方に伸ばす。
「人だろうが化け物だろうが関係ねぇ。
守るべきものは守る。
それが俺のやることだ」
黒い牙の影が建物の壁を伝い、敵の位置を正確に捉える。
静かに、しかし確実に、潜入経路を切り開く。
──そのとき。
暗闇の中で、影が突然、牙の形を崩し、
氷室を包囲した。
「……おや、王は焦っているようだね」
冷たい声。
赤い瞳をした暗殺者が姿を現す。
その影は、氷室の影を見透かすように揺れる。
氷室は構える。
「正体現したな……!
なら勝負だ!」
暗殺者は笑う。
「焦りは王の弱点。
影の力は意志の反映だからね」
一瞬の間に、赤い影が牙の氷室を斬り裂く。
氷室の影の一部が霧散した。
城ヶ崎が叫ぶ。
「氷室!!
影は焦りに反応する!
落ち着け、感情を制御しろ!!」
氷室は息を整え、影を再構築する。
黒い牙は再び固まり、建物の影と融合して盾を作る。
「……俺は守る!!
誰も失わないために……!!」
牙の影が暗殺者の赤い影に噛みつく。
一瞬の衝撃でビルの壁が崩れ、瓦礫が散る。
暗殺者は驚愕する。
「……王の力が……こんなに制御されているとは……!」
氷室は前に踏み出す。
黒い牙が絡まり、赤い影を押し返す。
「覚悟を見せろ、俺は王だ!!
俺の影は、俺の意志そのものだ!!」
暗殺者は一瞬ためらった。
だが次の瞬間、二本の鋭い刃を影から生やし、氷室に斬りかかる。
城ヶ崎が警告する。
「避けろ!!
攻撃の軌道を読むんだ!」
氷室は反射的に影の牙を振るい、
鋭い刃を受け止め、押し返す。
二つの影が衝突する音なき衝撃が屋上を震わせる。
──氷室の覚悟と、暗殺者の技術。
──潜入作戦は、ただの探索から、死闘へと変わった。




