第3章 影の支配者 ■第1話「影の王、潜入」
夜の街は、不気味な静寂に包まれていた。
警察の追跡も、影狩りの精鋭も、まだ氷室の気配を捕らえてはいない。
氷室は彩花を背に、廃ビルの影から影へと移動する。
背後で城ヶ崎が影の形を整えながら同行する。
「ここから先は……
敵の縄張りです」
城ヶ崎の声は冷静だが、その瞳には緊張が宿っている。
「敵……って?」
氷室は振り返らずに答える。
「捕食者以外にも、影を狙う者たちがいる。
奴らは国家の影狩りとは違う。
影の力を使う“裏の組織”。
力を奪い、利用することしか考えてない」
彩花が震える。
「そんな……また戦うの……?」
氷室は彩花の肩に手を置く。
「大丈夫だ。
俺はもう一人じゃない。
城ヶ崎もいる。
影の王として、必ず守る」
城ヶ崎が口を開く。
「潜入する場所は、闇の中でも特に危険です。
ここには“影の監視者”が多数配置されている」
氷室は眉をひそめる。
「監視者……俺らを見張る奴らか?」
城ヶ崎は頷く。
「そうです。
奴らは影を感知し、操る力を持つ。
不用意に動けば即座に捕捉されます」
氷室は深く息を吐く。
(……なるほど。
これが王としての最初の試練か……
守りたいものを守るため、
影の王として、奴らの間を突破する……!)
三人は屋上から建物の影へ飛び移る。
都市の闇が彼らを包み込む。
影が足元から伸び、足場を確保する。
城ヶ崎の影もそれを支え、氷室の黒い牙が闇を切り裂く。
「──行くぞ」
氷室は低く唸り、影を膨らませる。
牙の影が前方の暗闇を押し裂き、
潜入の道を切り開く。
だが──
闇の奥で、静かに人影が動いた。
「……おや、王が来たか」
冷たい声。
人影の背後に、黒と赤の影が蠢く。
城ヶ崎の影が警告する。
「氷室……
奴らは“裏組織の影の暗殺者”です!
捕捉されたら即死です!」
氷室は拳を握る。
「わかってる……でも行くしかねぇ!」
黒い影が牙となり、闇を切り裂く。
都市の夜に、
新たな戦いの幕が上がった──。




