チートに感謝
「…たくやくん」
「…たくやくん」
「う、うぅ…ん?」
目を開けるとそこは真っ白な空間でい1人の若い男が立っていた。
「やあ。はじめまして。」
「少しだけお話したいんだけど、いいかな?」
「…お話?」
「…ていうか誰?」
「…ていうかここどこ!?」
異世界に召喚されたと思ったら次は真っ白で何も無い世界にいる。
ぼーとする頭をフル回転するが全く状況が理解できない。
「突然ごめんね」
「ここはキミの夢の中なんだ」
「少し説明しておきたくてお邪魔してます」
「夢の中?」
「てことはオレは寝てるのか!?」
なにが起こるかわからない異世界で家族を守るためオレは朝まで見張りをしていようと起きているつもりだったがどうやらいつの間にか寝てしまったらしい。
「やばい。早く起きないと!」
「大丈夫。安心して」
「こまちちゃん達が見張ってくれてるよ」
「余程のことがない限り彼女達に襲いかかる獣なんていないから」
「??」
「…そうなの…か?」
「そ!」
「そんなことより君たちの状況を説明するよ」
「この世界に召喚された経緯はさっき王城で聞いた通りさ」
「彼らは自分たちの利益の為、それだけの為に君たちをこちらの世界に召喚したんだ」
「そんな事しても意味ないのにね」
「ホントあきれるよ」
「このまま見過ごしても良かったんだけど、それだとあまりにも君たちが可哀想だったんでね」
「そこでこのボクが君たちに少し細工をしたのさ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「あなたは誰なんだ?」
「あぁ!そうだった!自己紹介がまだだったね。ごめんごめん」
「ボクはミカエル。」
「この世界を管理する者さ!」
「管理?」
「神様ってことか?」
「まぁそんなとこ」
「その辺は適当でいいよ」
「それで、細工っていうのはなんなんだ?」
「まず1つ目がこまちちゃん達」
「彼女達も召喚に巻き込まれてたから猫から獣人に進化させたよ」
「獣人は人の何倍も強いから君とさくらくんを守るにはちょうどいいと思ってね」
「2つ目は君とさくらくんに魔力と魔法を付与しておいたよ」
「この世界で魔法を使えるのは限られた人だけだから生き抜いていくには充分かな」
「ただし強力な魔法や世界のパワーバランスを崩しかねないような魔法には制限をかけさせてもらったからよろしく」
「魔法?」
「魔法が使えるのか!?」
あまりに現実離れした説明に頭が追いつかず魔法という言葉にだけ反応できた。
「そうだよ」
「魔法って、火を出したり敵を凍らせたりする魔法なのか?」
「そういうのもあるけど、君たちに与えた魔法に攻撃魔法はないよ」
「じゃぁなんの魔法なんだ?」
「キミには身体能力上昇の魔法」
「自分や他人にかけて肉体を強化する魔法だね」
「さくらくんには防御魔法」
「攻撃魔法でも物理攻撃でも防げる魔法を使えるよ」
「身体能力上昇…」
「いったいどれくらいまであがるんだ?」
「その辺は魔力との兼ね合いもあるから確かめながら使ってみて」
「一応この世界の人より魔力量は多いはずだからそう簡単に魔力切れなんてことにはならないはずだよ」
「そう…なのかぁ」
「他に質問がないようならもう行くけど」
「ちょっと待ってくれ!!」
「神様ならオレたちを元の世界に戻すことはできないのか!?」
「それはできないんだ。ごめんね」
「世界と世界を繋ぎ人を行き来させる行為は禁止されてるんだ」
「神様なのにか?」
「神様だからさ」
「じゃぁ、元の世界に戻る方法はあるのか?」
「残念ながらそれもほぼできないと言っていいかな」
「召喚ていうのは一方通行なんだ」
「こちらに連れてくることはできるけど。向こうに送ることはできない」
「たくやくんがいた世界の人が召喚を行えばもしかすればだけど、成功確率は何千分の1」
「しかもピンポイントで君たちを召喚するとなるとさらに何万分の1になるんだ」
「今回の召喚は奇跡に奇跡が重なって、たまたま君たちが選ばれてしまった。」
「だから特別に猫を進化させたり魔法を与えたりしたんだ」
「魔法を与えたりするのは禁止されてないのか?」
「もともとこの世界の人達に特別な力を与えてるのはボクだからね。問題ないよ」
「そうか…もう帰れないのか…」
「じゃぁしょうがないな!この世界で生きていくしかないな!」
「いろんなところに行って、いろんな物を見てみたいな!あとメシだな!」
「…」
「意外と立ち直りが早いんだね」
「もう少し落ち込んだりするのかと思ったけど」
「いつまでも落ち込んでてもしょうがないからな!どこまでも前向きなのがオレの唯一の強みなんだ!」
「ははっ」
「キミならこの世界でも楽しくやっていけそうだね」
「森を抜けたら西に行くといいよ。そこにキミに必要なものが揃うはずだから」
「じゃ。がんばってね」
ミカエルがそういうと視界がぼやけていきなんとなく頭の中がフワフワした感覚になっていった。
「…パパ」
「…パパ」
「朝だよ」
ゆっくりと目をあけるとオレの顔を覗き込むこまちがいた
「おはよう。こまち」
「一晩中見張りをしててくれたの?」
「うん!」
「ようちゃんとパトラと3人で追いかけっこしてたら朝になってた!」
「追いかけっこ…ははっ」
そういえば家でも毎晩のように追いかけっこしてうるさくて寝れないときもあったが今は追いかけっこに感謝だな。
「大丈夫だった?眠くない?」
「う〜ん…お腹空いた!」
「…ようちゃんも」
こまちの後ろからボソッとようちゃんが喋った。
ようちゃんは恥ずかしがり屋というか控えめというかいつも遠慮しながらおねだりしてくるタイプだ。
「ようちゃんもありがとね。パトラ
は?」
「パトラはママと寝てるよ!」
一晩中追いかけっこして疲れたのかパトラはさくらに寄り添って寝ていた。
パトラは1番小さいが負けん気が強く誰よりもマイペースだ。
さくらとパトラを起こし軽く朝食をし、夢で見たミカエルとの話を4人に話した。
「そう。じゃぁもう元の世界にはもどれないのね」
「これから大丈夫かしら。どうやって生活していけばいいのか…」
「まぁ大丈夫さ!みんなで力を合わせてやって行こう!」
「それに1度やってみたかったんだよね。あてもなく世界を旅する生活ってやつを!」
「この世界はどんな街や人が住んでいるのか見て回るのが今から楽しみだよな!」
「はぁ…あいかわらず切り替えが早いというか、ポジティブすぎるというか」
「あと魔法!ミカエルが使えるようにしてくれたみたいだけど、どうやって使うんだろ」
「そういうのたっくんは詳しいんじゃない?」
「詳しいじゃなくてアニメやゲームよく見るってだけで使い方なんてわかんないよ」
「例えばアニメとかだとこうやって…」
オレは目をつぶり自分の中に眠る何かがないかと意識を集中してみた。
…ファーン
「えっ!?」
「にゃ!?」
オレの体の周りに暖かい何かがあるのを感じると頭に言葉が浮かんできた。
「…ブースト」
そうつぶやくとオレの体の奥から力が湧き今ならなんでもできそうな気がした。
「すごい!体が軽いぞ!」
「いったいどのくらい身体能力が強化されたのか試してみたいな!」
昨日2人がかりてやっと引っ張れた荷車を引っ張ってみた。
「軽い!重さを全く感じないよ!昨日はあんなに重かったのに!」
「みんな荷車に乗ってみてくれ!」
4人を乗せて荷車を引っ張ってみた。
荷物も合わせると200キロ弱といったところか。
「軽い!!1人で引っ張ってもまだまだ余裕だよ!これならどこまでも引っ張っていけそうだ!」
「パパすごーい!」
「こんなに力持ちになるなんて魔法ってすごいのね」
「さくらも魔法を使えるみたいだけどなんか感じないか?」
「私はあなたと違って魔法とかはよく分からないのよねぇ」
さくらはそう言うもののオレのマネをして目を閉じた。
…
……
……ファーン
「おおぉ!」
さくらの周りに青い光が現れた。
「頭の中に何か浮かんでこないか?」
「…」
「…シールド」
ブウォン!!
さくらの姿が見えなくなるくらいの大きな盾が現れた。
「うわっ!!」
「デカイな!」
「ママすごーい!」
「なんか出てきたけどなんなのこれ?」
「ミカエルが防御の魔法だって言ってたから魔法の盾が出てきたんだと思う。」
「ちょっと試してみよう」
その辺の石ころを拾ってさくらに向かって投げてみた。
ヒュンッ
カーーン。。
「どう?」
「どうと言われても石が当たったなぁとしか…」
「じゃぁこれならどうかな?」
「ブースト!」
「え!?」
「いくよ!」
「ちょ、ちょっとまっ…」
オレは強化された体でバスケットボールくらいの大きさの石を投げてみた。
シュゥゥン!!
軽く投げたつもりだったが自分でもびっくりするくらいの豪速球だった。
バァーーン!!!
軽い爆発が起きたのかと思うほどの衝撃音が響きわたる。
「あっ…」
「ちょっと!いきなりそんなの投げないでよ!」
「受け止められなかったらどうするの!?」
「ご、ごめん。大丈夫だった?」
「まぁ、衝撃は感じたけど別に受け止められないほどじゃないかなって感じかしら」
「すごい!」
「あの豪速球を受けてその程度ということは、もしかして衝撃吸収もしてくれているのか?」
「こまちもやりたーい!」
一連の流れを見ていたこまちがワクワクした顔で言い出した。
「こまちはできないんじゃないか。ミカエルはこまち達に魔法を与えたとは言ってなかったし」
好奇心旺盛なこまちは聞く耳持たずでオレとさくらがやったように見よう見まねて集中し始めた。
「だからムリだって」
…ファーン
「へ?」
「…ファイア」
ボッ!!
火の玉がこまちの手から放たれオレ目掛けて飛んできた!
「あぶなっっっ!!」
間一髪で火の玉をかわす。
「…」
「…」
「…」
「やったー!できたー!」
「火の…魔法??」
「ミカエルはこまちも魔法が使えるなんて一言も言ってなかったぞ!」
「ついでに与えてくれたのか?それともミカエルがうっかりしてたのか?」
「ようちゃんも…やる」
「まさかようちゃんまで?」
…ファーン
「なっ!?」
「…ウォーター」
ピシャーー!!
ようが放った水はまるで高圧洗浄機で放ったかのような勢いだった。
「すごい!ようちゃんは水の魔法が使えるのか!」
「ようちゃんすごーい!」
「もしかしてパトラも使えるのか!?」
「寝てるよ」
「寝てんの!?」
パトラは荷車の荷台で気持ちよさそうに寝ていた。これだけ近くで大騒ぎしてるのに寝れるなんてあいかわらずのマイペースっぷりだ。
「まぁ起きた時にまた聞いてみよう」
「なにはともあれ!これだけのチート能力があればなんとかなりそうだな!」
「でも特別な力を持ってる人は稀に現れるんじゃなかった?」
「あぁそう言ってたね。」
「その稀に現れる力を持った人が5人もいたら騒ぎにならないかしら」
「確かに。シュベルタ王国みたいに戦争の為に利用しようとする人がいるかもしれない」
「あまり人前では使わない方がいいかもしれないな」
「そうね。危ないことは避けたいわ」
「こまち、ようちゃん。わかった?」
「ん?」
「火を出したり水を出したりはパパとママ以外の人には危ないから見せないようにしようね」
「はーい!」
「…わかった」
「よし!確認も終わったところで!」
「力を合わせて森を抜けるぞ!」
「オー!」
「オー!」
「オー!」
「オー!」
「Zzz」
荷物をまとめて荷車を引っ張り出発したオレ達は森に入っていった。
森の中は薄暗くジメジメしていて今にも魔物が飛び出してきそうだ。
…というわけでもなく程よく日差しが入りとても爽やかな森林浴をしながら進んで行った。
「パパみてー!」
「なんかあるよ!」
こまちとようは木に登っていろんな物を見つけていた。
「果物だね。リンゴみたいだけど大っきいな」
「あーん!」
ムシャムシャムシャ
こまちはなんの迷いもなく果物をかじった。
「おいおい。大丈夫なのか?」
「すっぱーーい!」
「ハハッ。なんでもかんでも食べるからそうなるんだよ。」
「ホントこまちは食いしん坊ね」
「…ようちゃんも…みつけた」
「おっ?ようちゃんは何を見つけたんだ?」
そう言って振り返りようが指さす方を見るとそこには!!
「シャーーー」
「へ、ヘビ!!」
木に巻き付きこちらを威嚇するヘビがいた!
「で、でかい!」
「ようちゃん!離れて!」
「…捕まえてパパとママにあげる」
「捕まえなくていいから!危ないから!」
ようはオレの言葉も届かないくらい、既に臨戦態勢に入っていた。
毛並みが逆立ちシッポが倍くらい太くなっている!
「シャーーー」
「シャーーー」
お互いが威嚇しあいオレもさくらもどうしていいかわからず動けずにいた。
タンッ!
ようが先に仕掛けヘビに襲いかかる。
ズバッ!!
バキバキバキ…ドォーーン!!
「え?」
ようがヘビに襲いかかり爪で引っ掻くと木もろとも真っ二つになっていた。
「えーと…ようちゃん?」
ブイッ!
ようは誇らしそうにこちらにVサインをしている!
「ようちゃんがやったの?」
ブイッ!
「爪で?」
ブイッブイッ!
「木を?」
ブイッブイッブイッ!
「…ようちゃん…すごい?」
「す、すごい…です」
ヘビは真っ二つになり息絶えているがそれよりも
「木を爪できるなんてどんだけの切れ味と力なんだ」
「ようちゃんこの倒れた木をもう半分にできる?」
「…やってみる」
ズバッ!
ようはいとも簡単に木を真っ二つにした。
「こまちもやるー!」
こまちも負けじと木を切り裂いた。
「パパすごいー?」
「あぁすごいよ。怖いくらいにね。」
「ちょうどいいからもう少し小さくしてら荷車に積んでくれる?薪に使えそうだ」
「はーい」
「それにしても獣人てこんなに強いのか?」
「だとしたら人間が武器を持ったところでかなうはずもないよな」
「シュベルタ王国が力を持った人を欲しがるワケだ」
「あのまま勇者として戦場に送り込まれてたらあれと戦わなきゃいけなかったのかと思うと鳥肌が立つよ」
「パパ!積んだよ!」
「ありがとー」
「ヨイショ!」
「流石に木1本分を積むと重いな」
「こまち悪いんだけど後ろから押してくれる?」
「いいよー!」
「おおっと!」
こまちが荷車を押した途端一気に軽くなった。
「大変じゃないか?」
「大変じゃないよー!」
こまちはまだまだ余裕そうな顔をしている。
「これなら多少重くても平気だな!」
(あれ?となると、オレの身体能力強化の魔法ってあんまりいらないんじゃ?)
いろいろな疑問を持ちながらオレたちは森を進んで行った。
何回か森の獣に襲われたがその度にこまちとようが威嚇して追い払ってくれた。
そうやって進んで行くと森を抜け開けた所に出た。
「よし!森を抜けたぞ!」
「2時間くらい歩いたかなぁ。こまちが荷車を押してくれてたとはいえ疲れた」
「お腹すいたー!」
「たっくん。休憩しましょ」
「そうだね。時間的にもお昼くらいだからご飯にしよう」
「って言ってもあるのはこれだけだからなぁ」
荷車に積んであるパンと干し肉と果物を文句を言いながらも食べる。
疲れと空腹もありそれなりに美味しく感じたがやっぱり物足りない。
「あとあるとすればようちゃんが倒したヘビだけど…」
「食べてみる??」
「え?大丈夫なの?」
「どうだろ。火を通せばいけないかな」
ようがついでに切った木を並べこまちに火を出してもらった。
「さっき出した火の半分でいいからね。弱火で頼むよ」
「やってみる!」
「…ファイア」
ボォワ!!
「わっ!」
多少木が飛び散ったがなんとか火がついた。
「ナイス!こまち!」
「よく力加減できたね」
「うん!なんかこう。ちっちゃくちっちゃくゆっくりゆっくり考えたらできたよ!」
(ちっちゃくゆっくりか、魔法の調整はイメージしだいなのかもな)
「ようちゃんヘビを小さめにカットできないかな?木を小さくしたみたいに」
「…できる」
スパパッ
あいかわらずの切れ味、一瞬でちょうどいい切り身ができあがった。
「ありがとう。ようちゃん」
「ブイッ!」
「とりあえず枝を刺して焼いてみよう」
10分後
「どうだろう焼けたかな」
パクッ!もぐもぐもぐもぐ
「うん!うまい!」
「脂の多い鶏肉みたいな感じかな?」
「塩があればもっと良かったんだけど充分うまいよ!」
「さくらも食べてみなよ!」
「えー。食べてみなって言われてもヘビよねぇ」
「ヘビと思わなければ全然いけるよ!」
「思わなければって…」
「こまちも食べたーい!」
「…ようちゃんも」
バクバクバク ムシャムシャムシャ
「おいしー!!」
バクバクバク ムシャムシャムシャ
こまちたちの豪快な食べっぷりと空腹のせいか、さくらはヘビ肉を食べてみたくなっていた。
ヘビ肉に対する気持ちとは裏腹に自然と手は伸びていた。
ゴクリ…
パクッ…
「んん!おいしい!」
「しっかりと脂はあるんだけどしつこくなくてさっぱり食べれる鶏肉って感じね!」
「からあげにしたらもっとおいしいかも!」
「おお!からあげか!いいな!」
「さくらのからあげはうまいからなぁ!」
「からあげたべるー!」
「…ようちゃんも」
「作ってあげたいんだけど調味料も調理器具もないからどうする事も出来ないのよねぇ」
「調理器具かぁ…」
「そういえば!ミカエルが森を抜けたら西に向かうと良いって言ってたな」
「西に?」
「そこにオレの必要としてる物があるらしい」
「西ってどっちなの?」
「元の世界では太陽が沈む方が西だったからこちらの世界でもおなじなら…」
「あっちかな」
西と思われる方向には一応道が続いていた。
「とりあえず行ってみるか!」
オレたちは西と思われる方向に進むと行商人のような人とすれ違った。
その人によるとこの先に1時間ほど歩くとコペ村という村があるらしい。
シュベルタ王国を出てはじめての村。
またこまち達を敵対視するような村民性だと長居することができない。
だが、いつまでも野宿を繰り返す訳にもいかないからどうかこまち達を受け入れてほしいと願いつつ、恐る恐る村に足を踏み入れたのだ。




