異世界召喚
「ただいま〜」
「おかえりなさい、おつかれさま」
「にゃ〜ん×3」
俺の名前は前島拓哉。小さい工務店で働き普通の生活を送っている。
給料は多くはないけど、奥さんのさくらと猫3匹を食わしていくには充分満足だ。
「ふぅ。今日も疲れたぁ」
「突然現場監督が予定を変更するもんだから現場は大慌てだったよ。」
「大変だったわね。大丈夫だったの?」
「なんとかね。オレにかかれば朝飯前よ!」
「ふふ。そうね。さすがたっくん!」
パチパチパチパチ
「さぁご飯にしましょ!」
妻のさくらはいつもこうやってオレをおだててくれる。
美人だし優しいし料理は上手い!
オレにはもったいないくらい最高の奥さんだ。
「にゃ〜ん」
「おぉ!こまち!パパの帰りを待ってたのか?かわいいなぁ!」
「オヤツが欲しいだけじゃない?」
「そうなのか?」
「にゃ〜ん」
「まったく…こまちは食いしん坊だなぁ」
「ようちゃんとパトラは?」
「コタツの中で寝てるわよ。」
コタツの中をのぞくと2匹が気持ちよさそうに寝ていた。
(やっぱり我が家は最高だなぁ!!)
「さぁ!食べよう!今日は鍋か!」
「いただきまーす!」
「いただきまーす」
…ブワーーン
突然部屋の中が暗くなったと思ったら紫に光った大きな模様が床に現れた!
「な、なんだ!?」
「たっくん!」
「さくら!!」
「…あ〜あ。成功させちゃったよ」
「一人二人人間が増えたところで世界の均衡が変わるわけないのに」
「どうして人間ていうのはこうも傲慢なのかねぇ」
「とはいえ、ほっとく訳にもいかないしなぁ…はぁ、めんどくさい」
「ん?」
「フフ、おもしろい子達も一緒に行ったみたいだ」
「この子達をこうして」
「2人には、まぁ、死なない程度のおまけは付けといてあげるか」
「あとはこの家族次第ってことで」
「う、うぅ」
「なにが、どうなった?」
目をあけるとそこは我が家ではなくお話にあるような城の中だった。
「おお!成功だ!」
「ついに勇者召喚に成功したぞ!」
「勇者?勇者だって?」
「そんなのゲームの中の話じゃないのか?」
「さくら?さくら!!」
「う〜ん。頭いたーい」
「…ここは?…どこ?」
「勇者様!我らの声に応えていただき感謝いたす!」
「で?どちらが勇者様かな?」
「いや、どちらがと言われましても」
「僕たちは気づいたらここにいてなにがなんやら」
「ここはどこなのですか?」
「それは失礼いたしました」
「ここはシュベルタ王国」
「こちらにおられるビクロム・ド・シュベルタ王が治める国でございます」
明らかに人が座るには大きすぎる椅子に髭を生やした人が座っている。
わかりやすく王様って感じ。
「はぁ。どうも」
「で、なんで僕たちはここに?」
「よくぞ聞いてくれました!」
「いま我ら人族は他の種族によって追い詰められております!」
「もともと我ら人族は特質した力をもっておらず稀に現れる特別な力をもった者が国を守り戦ってまいりました」
「ですが、特別な力をもった者はそう多くはおりません」
「なので、侵攻し領土を広げようにも戦力が足らないのです」
「そこでシュベルタ王国の宝物庫に眠っていた禁書に記されている勇者召喚の儀を行ったところ、それに答え現れたのが勇者様たちなのです!」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「侵攻て、今この国は戦争中なのですか?」
「いや、戦争中という訳ではありませんが、我が国の領土を広げ、シュベルタ王の力を世界に知らしめ、この世界の頂点に君臨する!」
「それがシュベルタ王の悲願なのです!」
「…」
「…」
さっきから王様の側近みたいな人が興奮ぎみにオーバーアクションでいろいろ説明してくれているが、それって…
「それはつまり、わざわざこちらから戦いを仕掛けて僕たちに領土を広げる手伝いをしろってことですか!?」
「そういうことですな」
「ムリですよ!僕たちは武器を持った事もなければ戦った事もありません」
「そもそも2人増えたところで何も変わりませんよ!」
「2人?」
「5人では?」
「え?5人?」
(召喚されたのはオレとさくらの2人のはず、あと誰かいるのか?)
「そちらの方々もお仲間なのでは?」
側近が指さす方を見ると裸で寝ている女の子が3人いた。
「…!!」
「たっくん!見ちゃダメ!」
バチーン!!!!
3人の女の子が視界に入った瞬間、さくらのビンタが炸裂した。
オレがなにしたっていうんだ…
「う〜ん」
「うるさいにぁ」
1人が起き上がりこちらを見ている。
「パパ!早くおやつちょうだい!」
「こまちはずっとガマンしてたんだよ!」
そう言うとオレに抱きつき不機嫌そうな顔で見あげてくる。
「たっくん…パパってどういうこと…」
ゴゴゴゴゴゴ
静かに燃える炎が如くさくらがオレを睨む。
「知らない!オレはこの子とは今はじめて会ったんだ!きっと何かの間違いだ!」
「はじめてでそんな抱きつかれるわけないでしょ!」
「そうだよ!はじめてじゃないよ!」
「こまち達はずっとパパとママと一緒にいたよ!」
「え?こまち?」
「いま、こまちって言った?」
「うん」
「こまちが君の名前?」
「うん」
「じゃぁあの子は?」
「よう」
「あの子は?」
「パトラ」
「君たちはオレとさくらが飼っている猫と同じ名前なのか?」
「同じじゃないよ!こまち達がその猫なんだよ!」
そう言いながらシッポをユラユラと揺らしている。よく見ると猫耳もある。
「ええええぇぇぇ!」
「ええええぇぇぇ!」
「で、でもなんで人間の姿なんだ!?しゃべってるし」
「わかんない。気づいた時にはこうなってた。」
「パパとママとお話できてこまち嬉しい!!」
「な、なぜ!獣人がここに!」
こまち達に驚きすぎてこの人達のことを忘れていた。
えらい驚いた様子でこちらを見ている。
「捕らえろ!」
側近がそう言うと槍を持った兵士がこまち達を取り囲む。
「シャーーー!」
こまちが威嚇している。
それに兵士達は動揺しているようだ。
「ちょっと待ってください!」
「この子達は僕たちの家族です!」
「家族?」
「そんな訳があるものか!!」
「人から獣人は産まれない!」
「我ら人族の敵である獣人がこの国にいてはならない!」
「でも!僕たちが召喚された時すでにこの子達もいたんでしょ!?」
「それならこの子達をこの国に入れたのはあなた達だ!」
「ぐぬぬぅ」
「しかし、我ら王国には獣人は入ることも許されない!」
「これが民衆にバレたら騒ぎになるぞ!」
「王よ!どうされますか?」
「そなたらをここに呼んだのは我らだ。」
「その獣人達が家族と申すのであればそれを認めるとしよう」
「しかし我が国に獣人がいることが認められてはいない」
「よって、秘密裏にそなたたちを国外に連れていき今回のことは無かったこととする!」
やっと喋ったと思ったら良心的な判断。意外とこの王様は話がわかるのか?
「わかりました。それで構いません。」
「ですが、いきなり外に放り出されても僕たちは生きていく術を持ち合わせていません。せめて最低限の食料と道具をいただけませんか?」
「なにを申すか!獣人に渡す食糧など…」
「よかろう。」
側近の言葉を遮り王様が喋る。
「1週間分の食料と荷車を渡す」
「それに獣人を乗せバレずにこの国から出ていってもらおう」
「ありがとうございます。」
外は夜だった。
僕たちは城の外に用意された荷車に食料とこまち達を乗せて王国の外まで連れてかれた。
普段、力仕事をしてるとはいえ、舗装されてない道を木の荷車を引いて行くのはかなり大変だ。
「ここまで来ればいいだろう」
道案内をしてくれた兵士はそう言うとそそくさと帰ってしまった。
オレとさくらは荷車を引くのに必死で周りが見えていなかった。
「この先は森しかないじゃないか」
「こんな夜に森に入るなんて危険過ぎる」
「たっくん。これからどうするの?」
さくらは不安そうに聞いてくるけどオレだってどうしたらいいかなんてわからない。
なんせこんな経験ははじめてだからな。
「とにかく明るくなるまでは森の外にいよう」
「明るくなったら少しはマシなはずだ」
「パパもう降りていい?」
オレとさくらが着ていたパーカーを着たこまちとようが荷車から降りてきた。パトラはまだ寝てる。
「今日はここで寝るの?」
「あぁ、ここまで暗いと動く方が危ないからね。今日はここで休もう」
ぐぅ〜。。。
(お腹空いた〜。そういえば仕事から帰って鍋を食べようとしたらこっちに飛ばされたんだよなぁ。)
ガサゴソ…
荷車にはパンと干し肉、あと果物が袋に詰められていた。
(1週間分とはいえこれだけじゃ栄養失調になっちゃうよ)
そう思いながらも5人で食料を分け合い、明るくなるのを待ちながら仮眠を取った。




