みんな、はだしで逃げるの♡
1ページ目:『みんな、はだしで逃げるの♡』
記録:目撃者はカメラ編集部・R
こんにちは。編集部のRです。
前回お話しした通り、今回は『教えて♡ゆりえちゃん!』の記念すべき1ページ目を取り上げます。
このページには、こんなことが書かれていました。
『みんな、はだしで逃げるの♡』
ゆりえはね、みちゃったの〜♡
いっぱいの人が、おようふくのまま、はだしでにげてるの!
どこからかけちゃダメって、しらない人にいわれて、
くるまも、でんわも、みーんなとまってるの♡
すごくあつくて、ちょっとこわかったけど……
でも、みんなさいごは、にこにこしてたよ〜♡
(※文中のハートマークや絵文字風の記号は、一部省略)
いかがでしょうか。
語り口はあくまで「ゆりえちゃん」らしく軽やか。でも、その描写は妙に具体的で、生々しい。
「おようふくのまま、はだしで逃げる」
「どこからかけちゃダメ」
「くるまも、でんわも、みんなとまってる」
「すごくあつくて、ちょっとこわい」
――これ、私たちが思い出したのは、2011年の東日本大震災でした。
当時の映像や証言には、津波から逃げるために裸足になった人の話、通信規制によって電話がつながらなかった地域、ガソリン不足で道路に放置された車……そういった“断絶された空間”の記録が数多く残されています。
しかも、この記述は1991年の本。
20年後の災厄を、あらかじめ知っていたとでもいうのでしょうか?
さらに気になるのは、ラストの一文。
「でも、みんなさいごは、にこにこしてたよ〜♡」
一見すると救いのある言葉。でも、冷静に考えるとおかしいんです。
“最後”って何?
“にこにこ”って誰が?
そもそも――なぜ“最後”を知っているのか?
編集部では、この一文を「死後の描写」と解釈する説も検討しています。
“さいご”を“見届けた”ゆりえちゃんとは、いったい何者なのでしょう。
次回もまた、2ページ目の記述を元に、私たちの現実との関係を探っていきます。
興味がある方は、引き続きお付き合いください。
『つぎは ちいさなおともだちが、いなくなるの♡』
……本当に、この本は子ども向けだったんでしょうか?
──第3回につづく。