第7話:疲労と癒しの夜
ダンジョンから戻り、受付で手続きを済ませた俺は、いつものようにくたびれた体を引きずりながら帰宅した。
靴を脱ぐと、そのままリビングの床に倒れ込む。
「……マジで疲れた」
今日は今までで一番の消耗戦だった。
スライムの群れとの長丁場、限界寸前の戦い。
だが、それを乗り越えたという達成感もまた大きい。
ポーチからモンスターカードを取り出し、召喚装置にセットする。
魔石をセットしてスイッチを押すと、光の粒が舞い、シロとラビィの姿が現れた。
ぷるん。
ぴょん。
二匹とも、かなり疲れているのか、ゆっくりとこちらに寄ってきた。
シロは俺の足元にまとわりつき、ラビィはソファの隣にちょこんと座る。
「お疲れさん。……本当によく頑張ったな」
シロの頭を撫でると、ぷるんと微かに震え、ラビィも満足げに目を細める。
こうして戦いを終えた後の、静かなひとときが何よりの癒しだ。
体の疲労は抜けないが、心はすっと軽くなっていく。
社畜生活で擦り減った気力も、彼らと過ごすこの時間があれば回復できる。
「……少しずつだけど、俺たち強くなってるよな」
俺の言葉に応えるように、シロもラビィも小さく跳ねる。
これまでの戦いを思い返せば、最初の頃では考えられなかった連携も今では自然にできるようになった。
この絆があれば、きっともっと先へ行ける。
(次は……2階層か)
スライム溜まりを越えた今、自信はある。
ただ、その前にもう少しレベリングを重ねて備えるべきかもしれない。
2階層には、また別の厄介な敵が待っているだろうから。
「ま、とりあえず今日はゆっくり休もうぜ」
そう言って、俺はソファにもたれかかり、シロとラビィの間で目を閉じた。
穏やかな空気と、仲間たちの気配に包まれて、すぐに心地よい眠気が押し寄せてくる。
この時間だけは、社畜でも冒険者でもない、ただの俺でいられる。
そんな夜だった。




