第4話:ダンジョン講習と適性発覚
休日の朝、俺は駅前にあるダンジョン管理協会支部の講習センターに来ていた。
ビルの一角に設けられた施設で、案内表示に従って受付カウンターへと向かう。休日ということもあってか、意外と人が多い。学生、主婦、若いサラリーマン、果ては年配の人まで、年齢も性別もバラバラだ。
「篠原悠斗さんですね。こちらの会議室へどうぞ」
受付の女性職員に案内され、俺は小さな会議室へと通された。
すでに十数人ほどの参加者が集まっており、みな緊張した面持ちで椅子に座っている。中には明らかに冒険志望らしい装備の男もいて、場違いな俺は若干気まずさを覚えた。
講習の内容は、ダンジョン内での基本的な行動ルールと、安全確保のための注意事項。
短い座学とビデオ映像による説明が淡々と進んでいく。
「なお、皆さんのステータスカードには適職が記されますが、他の職業に就くことも可能です。ただし、適職の方と比べると威力や効果は一段劣るので、その点ご注意ください」
講師役の職員がそう説明した瞬間、室内がざわっとざわめいた。
どうやら知らなかった者も多かったらしい。
(なるほどな……つまり、冒険者っぽいことをやりたいなら、適職の方が圧倒的に有利ってことか)
別に俺は冒険者志望でもないし、スキルを使う予定もないが、念のため頭の隅に留めておくことにした。
講習が終わると、最後にステータスカードの発行手続きが行われる。
専用の端末に名前と生年月日を入力し、手をかざすと、青白い光が手のひらを包んだ。
画面には、俺の名前と基本情報、それから職業適性の欄が表示される。
「……テイマー?」
思わず声が漏れそうになった。
しかし、周囲を見渡しても誰もこちらを気にする様子はない。職業適性は完全に個人情報扱い。端末の表示も、操作している本人以外には見えないようになっている。
(テイマーって……あの不遇職か?)
正直、冒険者事情には疎い。ただ、なんとなく耳にしたことがある名前だった。
気になって、そのままスマホで「ダンジョン職業適性 ティア表」と検索する。
すぐにそれらしいサイトがいくつも出てきた。
上位には「ウォリアー」「アサシン」「ヒーラー」「メイジ」といった、いかにも冒険者然とした職が並ぶ。
その下へスクロールしていくと——「テイマー」の名前は、ほぼ最下位に記されていた。
『召喚職の下位互換。序盤はスライム程度しかテイムできず、育成効率も悪い。ダンジョン適正も低く、初心者救済職の一種』
そんな辛辣なコメントも添えられている。
(まあ……どうせ冒険なんかしないしな)
軽く肩をすくめ、カードの発行手続きを済ませる。
窓口で渡された薄型のステータスカードは、クレジットカードのようなサイズと質感だった。
これで一応、ダンジョンのゲートをくぐる権利を得たわけだ。
ただ、それをどう使うかなんて、この時の俺は全く考えていなかった。