歴史
儂はアンバドーラ・クロニクス
パーティを定年退職した御年60のしがない婆やさ
「おーいドーラや、農具はどこじゃ?」
こいつはレダニカ・スカーラ
儂の元パーティメンバーじゃ。
街で一番と言われる程に頑固で、とても手を焼かせられるジジイじゃい
「農具なんてないさ、素手でやるんだな」
「あぁ……」
「………」
「飽きたな」
「そうじゃな」
そう、飽きたのだ。
現役の時は、老後は農業でもしながらゆったりスローライフを送ろうとか考えていたものだが、いざやってみると目に見える成果というものがないせいで退屈じゃ
そう思いながら手元にあった歴史書にふと目を落とす
「そうじゃレダよ、この本のように魔王を討伐しに行かんか?ちょうど最近復活したようじゃし」
「ちょうどこの本も儂らのような老人が魔王を討伐した、という話のようだし、ピッタリとは思わんか?」
「だが、本当に行くとしても、大丈夫なのか?」
「なぁに、一度体に染みついた勘はそうそう落ちるものではない」
「まぁそうだな…でも少し不安じゃ、奴も誘おう」
「そうするかの」
そう思い、儂らは奴の営む店に出向いた
奴とは、ドレドラース・ゴンザレス
レダニカと同じく元パーティメンバーであり、街で駄菓子屋を営んでいる
奴の店に出向いた儂らは、旅が始まる前に出鼻をくじかれることになる
店がなくなっていたのだ。近くに住んでいる者に聞いてみても、はぐらかされるだけであった
「…奴はよく体調を崩しておった、もしそうであっても不思議ではあるまい」
でも、だ。あいつは体調を崩しても次の日には何事もなかったかのように復活しておった、そんなにヤワじゃなかろう、そう言おうと思っていた時、儂らは心臓が止まりかける体験をした
「レダにドーラじゃないか、こんなところで奇遇だの、農業はどうしたんじゃ?」
ラースは生きていた
「うぉぅびっくりしたのう、心臓が止まるかと思ったわい」
「洒落にならんよ婆さん」
「ところで、なぜお主は店をやめた?」
「それはのう…」
そこからは聞くに堪えない内容であった
要約すると、発注の桁を2つ3つ間違えまくったらしい
忘れておったが、こいつは生粋の阿呆じゃった。
「そういうことなら、儂らと老後の暇つぶしをせんか?」
「あぁ、もちろんだ。僕も店が潰れて行く当てもないのでね」
そうして、儂らの旅は始まった。