1‐悪魔
凍夜は立ち上がった。目の前にいる悪魔に驚いたからだ。この悪魔はいきなり現れるので
驚くのは当たり前だ。
「どうかな?今の世界は?」
「これが良いなんて思う人間はいないだろうな」
「ほう、人に興味ないお前がそう思うのか」
「・・・そうだな。今更か。そのせいでこうなったんだろ?」
「もちろんそれだけじゃないけどな」
悪魔は凍夜の前に立ち顔を指でなでる。この悪魔は女でいかにもな容姿だが
その美しさと甘い言葉に騙される人間は多い。
「さて、お前は何故ここにいる?」
「?どういう意味だ」
「時間移動ができるのにその時代にとどまらないからな。律儀にここに戻って
いるからな。普通ならそこにいたと思うが」
「確かにそうだな。でもその答えは簡単だ。そこに居たってまた終わっていくのを見る
事になるからな。それならこっちにいたほうが気は楽だ」
「なるほど。面白いな。ではこれからどうお前が行動するか見ている事にしよう」
「俺はお前の娯楽に使われてるわけか」
「この私に使われるんだ。光栄に思うんだな」
そう言って悪魔は消えて行った。凍夜はまた寝っ転がった。不老不死になってからは水も
食事もとらなくてもよくなったので世界が滅んでも平気だった。
しばらくして凍夜は起きた。まだ真夜中の時間であろう時に移動をした。魔法で空を
飛べるのでどこにでもいける。今は東京と呼ばれていた所にいるが、たまに拠点を
変えたりしている。
日本を北から南へ移動する。どこを見てもかつての面影はなく、建物は腐り道はなく
自然の草木がどこまでも続いていた。
「これが自然の姿。そもそも人がどうしてこの星に居たのか。まぁもうそれも意味は
ないがな」
一通り見回ってそれから元の場所に戻った。翌日、凍夜は学校に向かった。登校する
時間に行き、準備してから学校に行った。
一応この時代の自分をしているがやはりどこかおかしな感じがするのであまり
授業にでないようにした。
屋上のベンチに横になり午前中はここでサボっている。少しして滅多に来ない
屋上に誰かがやってきた。
その人物は凍夜の顔を覗き込んだ。指を顔に触れようとしたら凍夜がその指をつかんだ。
「人の眠りを邪魔するな」
「授業サボってる人の言うセリフじゃないなわね」
「先輩こそ今ここにいるってことは」
「今は昼休みだぞ後輩君」
凍夜は目を開けて体を起こした。そこにいたのは長い黒髪のポニーテールでスタイルの
良い女子生徒だ。彼女は凍夜の先輩で中学からの知り合いの白井愛希だ。
剣道部に所属していてそこの主将をするほどの力を持っている。それでいて勉強も
できていて文武両道をしている人だ。
「隣いいかな?」
「ああ」
「ありがとう」
そういうと隣に座り持ってきていたお弁当を開ける。そのお弁当も愛希は自分で
作って来ている。
「君のは持ってきてないのかな?」
「ああ。今は食堂で食ってるからな」
「そうか。君の料理も食べたいのだけれど」
「今度用意するよ」
「明日がいいな」
「わかった。そっちもわかってるよな」
「もちろん。君の好みもわかってるから」
愛希とはよく食事をする仲だった。仲と言っても愛希が強引に来る感じで凍夜は
ただ追い払うのが面倒なだけだったので合わせていた。
凍夜は一人でなんでもできるように料理も家事もしていたので料理はうまかった。
愛希には色々聞かれた時にそれを話してしまい食べてみたいと言われて
作っていったら気に入られてしまいそれ以来互いに弁当を交換したりしている。
「後輩君」
「なんだ?」
「なんかちょっと変わったかな?」
「!?何がだ?」
「雰囲気というか性格?大人っぽいというか」
「曖昧だな。中学から高校になれば少しは変わるさ」
「それもそうね。より頼れる感じになったって事かな」
「俺は頼りになんかならんぞ」
「そう思ってるのは君だけだぞ。他の者は君を頼っている。私もな」
「なんで俺なんかにそう思うんだろうな」
「君は君が思ってるほど小さくはない。むしろ大きいんだ。私もそれを感じて
君に制裁をした。まぁ負けてしまったがな」
特に悪い事をしているわけではなかったが、愛希に目をつけられていて態度を
治すと言われて剣道の試合をさせられたが、凍夜が勝ち何もされなかったが
それ以来の付き合いになった。
「さて、戻るか。君は食べなくてよかったのか?私に付き合ってもらってあれだが」
「心配ない。帰ってから食べるから」
「ありがとう。凍夜君、どこにもいかないでくれよ」
「?ああ」
二人は教室に戻った。凍夜は愛希の言葉が引っかかったが気にしない事にした。
そうして何気ない日を過ごしていく凍夜。でも、この時代に来たのには
理由があった。
それは、この時代からすでに世界が崩壊する予兆があったからだ。でも凍夜は
それを止める気はなかった。
元時代に戻り、いつもの場所で横になる。少しして凍夜は眠りについたがそこで
ある夢を見ていた。