1. 恒星の如く現れた逃走者
果てがない無限の宇宙に浮かぶ、巨大宇宙ステーション《アマテラス》。
宇宙連盟を結んだ多種多様な惑星人らが集う、宇宙で最も繁栄を築く要所である。
《アマテラス》には、宇宙で最も重要な機関が二つある。
一つは、宇宙の秩序を守るために設立された、宇宙防衛軍の本部基地。
もう一つは、宇宙防衛隊になるべくして最前線の教育を受けることができる場所――宇宙学園。
多種多様な惑星人らが交流できるこの時代、この二つの機関は、現在の宇宙になくてはならない存在となっている。
この二つの機関を核として、数々の研究機関や工場、居住地などが増設されていき、巨大宇宙ステーション《アマテラス》は、今や一つの惑星の如く規模をもつ、宇宙の中心的な存在として君臨している。
また、宇宙防衛軍には、数多くの支部がある。その本部が《アマテラス》にある事で、ここは宇宙で最も安全な場所でもあった。
そして、物語の舞台は、この宇宙学園から始まる。
☆ ★ ☆ ★
宇宙学園の廊下を、一人の青年が歩いていた。
歳は、十六か十七ほど。宇宙学園の制服を気崩して、ぬいだ上着を肩にかけている。
燃える恒星のような輝きを放つ髪の色は、この多種多様な惑星人が通う宇宙学園の中でも一際珍しい。
身長は、高すぎもせず、低すぎもしない。ただ、その髪色の所為で、周囲から浮いて見えた。
すれ違う他の生徒らが好奇の視線を向けていくが、本人はそのことに慣れているのか、全く気にもとめず前だけを見て歩いている。
「おい、見ろよ。混血人だぜ。今日も居残りか?」
廊下の脇に固まっていた男子生徒達が、自分たちの前を通り過ぎようとしていた青年に向かって、嘲笑と侮蔑の視線を投げかけた。
しかし、言われた当の本人は、ちらりと彼らへ視線をやっただけで、そのまま無言で通り過ぎようとする。
からかった男子生徒がその態度を見てむっとし、舌打ちをした。
「……けっ、お高くとまりやがって。大佐殿の息子様は、俺達みたいな下々の者とは、口も聞けないってか」
その言葉に、青年が表情を変える。くるりと振り返ると、肩にかけていた上着を宙に放り投げ、嫌味を言ってきた男子生徒に殴りかかった。
壁に背を預けていた笑っていた男子生徒は、壁と青年の拳に挟まれ、もろにその衝撃を顔に受ける。
そのまま崩れるように床に倒れた友人を見て、一緒に居た男子生徒たちが青年に向かって一斉に殴りかかった。
青年は、素早い身のこなしで攻撃を避けたが、避けきれなかった一発を受け、廊下の反対側の壁へと吹き飛ばされる。
倒れた青年の頭上から、一人の男子生徒が殴りかかろうと拳をふるう。
青年は、転がって拳を交わすと、素早く立ち上がって体勢を整える。
そして、再び激しい乱闘が開始された。
廊下を歩いていた他の女生徒達が悲鳴を上げ、近くの教室に残っていた一人の男性教官が何事かと顔を出す。
「こらぁー! 何をしてる!」
教官の姿を見とめて、青年に喧嘩を売った男子生徒達は、一目散に逃げ去った。
ひとり取り残された青年の髪の色に、教官の目がとまる。
「またお前か! スバル!!」
スバルと呼ばれた青年は、やべっ、と殴られて赤くなった頬をゆがませた。
そして、怒りの形相で向かってくる教官に背を向け、長い廊下を慌てて駆けだして行った。




