異世界転生しないニートの話
「え、ニートって、どう思われているかって、そりゃ・・・家族だったら死んで欲しい・・と思っていると思いますよ。
私は関わりがない限りどうでも良いと思っています」
ここは、築40年の一軒家の二階、部屋にこもる中年の部屋のドアが開いている。その前の廊下に30前のビジネススーツの女性が立ち。会話を続けていた。もう、10分以上、堂々巡りである。
曰く、女性は退去のお願いをしていた。もう、この家は中年、以降、ニートと呼称、ニートの親の物ではない。女性は鍵を譲り受け。靴を履いたまま入っていた。
もう、この家は取り壊しになる予定だ。
女性の無慈悲な回答に、ニートはいきり立つ。
「な、何だと!どうして、そんなに攻撃的なんだよ!知らないのか?〇〇〇〇のコミカライズと、アニメ化、それを知ればそんな答えにはならない!」
ああ、ウザい。聞いたから本心を答えたのに、私は西園寺君子、不動産会社の主任ですわ。
今、ニートを追い出しに掛かっていますのよ。
ここは既に弊社が買い取った家なのに。未だに出て行かないの。
何度も登記事項証明書を見せたのに・・・
42歳の息子、親御さんはとっくに引っ越していますの。
日本っておかしな国ですわ。
借地借家法で入居者の権利が保護されますの。
この場合、占有権かしら。
そして、社会保険上は、ニートは、主婦と同じ『無職無収入』だとカテゴリーされますわ。
主婦が可哀想ですわ。
彼が部屋にこもっている間に、両親は引っ越しをしましたの。
我が不動産屋に売って下さったのに。
ニート付だからお安くして頂きましたの。
とても頭が悪い方ですの。
「はあ、はあ、僕には相続がある。この家は、僕がもらう予定だ!勝手に売りやがって、訴えてやる」
「ですから、親御様は、貴方に相続をしたくないと、遺言で廃除の意思表示をされていますわ。暴言の録音や、暴力ふるわれた時の診断書も取ってありますよ」
「だから、相続だよ!だから、今、僕は小説を書いている!書籍化するんだ。AI絵師でもある。同人を売っている」
「へえ・・・・」
「小説はログインしていない人が沢山読んでいるから採点はされないけど、△△△△と同じくらい・・・でも、△△△△って知らないよね」
「知りませんわ」
「はあ、やれ、やれ」
ウザッ、まるでアメリカ人のジェスチャーのように、両手の手の平を上にあげてやれやれと言っていますわ。
死んでくれないかしら。
ガラン!
あら、岩城さん。来てくれたかしら。遅いわね。
「ごめんよ~君子ちゃん。いるかい!」
「「「入ります」」」
「また、勝手に入って、だからぁー・・・」
入って来た先頭の男の顔を見て、すぐにニートは黙った。
いかにも筋者だからだ。ガタイもデカい。耳が潰れている。
しかし、実態はただの不動産屋である。元刑事である。
いきなり。お付きの若い者に怒鳴りだした。
【ボンクラーーー!お前が書類を忘れたから、このお方をお待たせしたやろ!】
ニートを指さし叫んだ。
「ヒィ、申し訳ございません」
ドゴ!
部下の腹にパンチを入れ。
ガクンと部下は膝をついた。
そして、
ギロリとニートの方を向き。
ニコッと笑って書類を手渡した。
「おう、佐藤さんのご子息ですね。家を売って頂いて有難うございます」
「「「有難うございます」」」
「実はとっても良い職があります。お車とか好きでしょう?組み立てです」
「え、その」
「食事付の寮があります。そこで執筆活動できますよ」
「は、はい」
「よっしゃ!返事を頂いた!皆、引っ越しの準備じゃ!丁寧に荷物をお運びしろ!」
「「「おう!」」」
・・・・・・・
「岩城さん。遅い!先に来ていると思って入っちゃったわ」
「面目ない。お嬢」
「上田君、お腹、大丈夫だった?」
「はい、腹に週間ジャ〇〇入れていました」
フウ、これで一見落着だわ。
私は疑問に思った事を聞いた。
「岩城さん。お子さんいらっしゃいますよね。〇〇〇〇とか△△△△って知りませんか?ニートが言っていたわ。大人気らしいですわ」
「いや、知らねえ。坊主と姫は、〇〇ノ〇に夢中だぜ」
・・・・・・
本社に帰って聞いてみた。
「ねえ。西田ちゃん。貴女、ネット小説を書いているわよね。〇〇〇〇と△△△△って何かしら?ニートが言っていたの」
「はい、主任、それは、ネット小説の・・・ニートが異世界にいって大活躍する話と、同じく異世界に行って女の子に囲まれてウハウハする話です。私は関心がありません」
「へえ・・・全く知らないわね」
「まあ、そうです。それは仕方ありません。もう、ネット小説のな〇〇は、異世界の恋愛ばかりですから、どちらかというと、中世ラブロマンスのコミカライズの方が有名かもしれません。主任は読んだ事ありますよね」
「マンガ読んだ記憶があるかも、しかし、最近は読んでいないわ。
ところで、小説ではニートはどうやって、異世界に行くの?」
「死んだらいけます。現世で更生は無理・・・なのかもしれませんね」
「うわ・・もしかして、ネット小説の方がニートをディスっていない。でも、あのニートは、派遣にいけたのだから私が転生させてあげたのかもしれないわ。今ごろ、小説を書いているのかもね」
「ニートの方も小説を書いていたのですか?」
「そうそう、ログインされていないから評価はされていないけど、かなりらしいと言っていたわ」
「それ・・・あり得ません。ところで、ニートの方は一度働いて、会社を辞めてから、国民健康保険に切り替えていません。今、無保険状態です。もしかして、心の病気かもしれませんよ」
「・・・まあ」
その時、岩城が飛び込んできた。
「大変だ。あのニート、派遣先の面接で落ちた!よっぽどだ」
「え、と言うことは」
「まあ、どうでも良いわ。終わった事だし」
「だな。競売にいくべ。西田ちゃん。書類を頼む」
「はい、岩城さん」
・・・残念ながら実際にあった事件を元に書きました。
最後までお読み頂き有難うございました。