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更新おそくてすみません・・・



 イケメンにも流行があるのである。

 可愛い系の男子がモテはやされる時代もあれば、インテリメガネに失神する女子が続出する時代もあった。ワイルドな男性に貴族女性が黄色い悲鳴をあげながら群がったという歴史もある。

 さて、現在の我が国のイケメン基準は、そのどれでもない。ガッシリとした体躯に、くるくるふわふわのブロンドの髪、髭は濃い方が良い。胸毛は見せてこそ。口から出るのは女性への賞賛ばかり。それが本音かどうかは、この際関係ないのだ。女性に甘い言葉を囁けるかどうか、それが大事。

 わたくしの父も常に母に愛を囁き、シャツのボタンを最低三つは外し、ふわふわの胸毛を惜しみなく晒している。あの胸毛で小鳥とか飼えるのではなかろうか。申し訳ないけれど、あの胸毛を見る度にイラっとして、毟りたくなってしまうのだ。

 そう。

 わたくしは、我が国のイケメン基準に物を申したい。

 もみあげと頬の間ぐらいだったり顎の辺りにつぽつぽと生やしている人の、セクシーなどと言われているその髭、無精ひげと何が違うのかしら? ふわふわの胸毛もすね毛も腕毛も、ことあるごとに見せてくるのは何故? 見せながらこちらをチラチラ見ないでくださる?

 何故体毛を見せたいのか。

 誰かに見せてと言われたの? 少なくともわたくしは言ってない。

 いいんですよ。好みは人それぞれなんです。そういうのがお好みの女性が多いから、それがイケメン基準になったのでしょう。

 しかし、何度も言いますが、好みは人それぞれなんですよ。

 それを、つるっとしたすべすべなお肌が好きだと言っただけで、『前世に囚われている人』呼ばわりするのは、やめてくださいます?

 この世の流行に乗れない人は、頭の中が前世のままなんですって。前世のことなんて憶えてるわけないってのよ。誰なのかしら、そんなことを言い出したのは!

 そんなことを言うから、少数派の人が何も言えなくなるのよ!

 前世に囚われている? 上等だわよ!


 そんなわたくし、腐っても伯爵令嬢。いえ、腐っているつもりは、ありませんけれども。

 社交もほぼしてこなかったのに、年頃になると、婚約の打診がいくつか送られてきた。伯爵家の中でも中の上くらいの家格の我が家なので、縁を結びたい家は結構いたようだ。ほぼほぼ子爵家や伯爵家からの打診の中、家格が上の侯爵家からも釣書が送られてきて、両親からはそちらを推奨された。嫁がないという選択肢はないらしい。貴族の義務は、わたくしも理解していたつもりだ。

 その中の一人が、ベアード・ガルシア侯爵令息。旦那様だったのだ。

 ベアード様のお写真は、シャツを肌蹴ておらず、髭も最小限で唇の上にちょこちょことあるぐらい。他の令息のように甘ったるい表情もせず、ほぼ仏頂面で写っていた。好感度高い。眉間の皺が素敵だなと、なんとなく思ってしまったわたくしです。

 写真だけでは性格などはわからない。会ってみたら、実はイケメン基準を満たしていたりするのでは。などと警戒しながら顔合わせをしてみると、ほぼ会話をしない。それでいてどうしても話さなければならない場合は、例の四つの言葉を駆使して、それなりに会話が成り立ってしまう。天才か、と思ったのだ。四つの言葉だけを使ってお芝居をする大会があったら優勝できるのではないか、などと、どうでもいいことを考えてしまった。


「わたくし、ガルシア侯爵令息と、婚約したいですわ」


 両親は、目を丸くした。本当に彼でいいのか、家格が上の相手でも断れるのだぞと大慌てである。

 好感度が高いのである。仏頂面の方が、甘ったるい顔の千倍くらいマシなのである。無精ひげのような自称セクシー髭もない。キリっとした一重の目も、涼やかでとてもよい。胸毛も、あるのかどうかは確認していないが、隠してくれている。ここ重要。

 侯爵夫妻も、大歓迎してくれた。ベアード様は、イケメン基準からだいぶ外れているので、なかなか婚約が決まらなかったのだとか。よくぞ我が息子を、と感謝されてしまった。

 そんなこんなで三年後、わたくし達は無事に結婚したわけなのだけれど。


『抱いてはいけない気がする』


 苦悩に満ちた表情でそう言ったベアード様は、わたくしとの初夜をドタキャンしたのである。




週一くらいの更新を目指します~

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