オルガ公国領 サラサの町 路地裏にて
店から少し離れた狭い路地にいる二人の男のもとに、路地に似つかわしくない貴婦人マダム・メリーが合流した。
「あの子たち付いてきてないわね?」
「大丈夫ですお嬢様、店から出てきてません」
貴婦人が男の一人の両肩を掴む。
「あー怖かったマジで怖かった!!なにあの娘の殺気!ちょっとえげつないって!それにあの男の子もあの年であんなヤバい気配するの?!ほんと死ぬかと思った、てかあの子たちの頭の中で何回か殺されてるよマジで。っていうかあの『ワタクシ』って何のキャラ付けよ!!変なキャラア付けといい、あの偽造した書類といい。あのババアの指示ほんと訳わかんない!!もしあの子が書類持っていってたら、あの子達騙した私を殺しに来て、私なんてあっという間に死んじゃうよ?ほんとあのババア、私を捨て駒に使いやがって!!まぁあのババアはババアでヤバいから私にはどうしようも出来ないんですけどね~、はぁ、こんなギリギリの生活もうやだ~(T_T)」
男は両肩をもって前後に揺さぶられる。
「お嬢様お気を確かに。これもマリーナ様がお家を再興するまでのご辛抱ですから。お、お嬢様?!」
ハンカチでメリーの涙を拭うと、ハンカチを持ったその手をメリーにガッチリと掴まれ思わず声が裏返る。
「次は私の代わりにあんたが行きなさいよ!!私結婚もしてないのにマダムなんて名乗ってる場合じゃなくて、本国でお婿探ししないともう間に合わないんだから!!」
「えぇ~、大変申し上げにくいのですが、お嬢様が『姉様より弱い男は嫌!!』と言って縁談を断り続けてこられたからでは……」
「私が悪いっていうのあんたは!は、そうよ、そうだわ!あの子なら十分よ。ちょい年下だけどその手があったわ!!あー、でもあのババアの顔がチラつく~~」
男たちは頭を抱えて悩む貴婦人を、ただ見守る事しか出来ない。
(ちょっと年下って一回り以上離れてるじゃねえか)
こんな事を言うと、また絡まれるのが解っているので、どちらも口には出さなかった。
未婚で妙齢のマダム・メリー(仮称)、実家からは体裁を気にして追い出され、それでも実家のしがらみから抜けだ出せない女である。
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