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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

帰り道

作者: 五月 萌

季節は夏。

よっちゃんこと青空よし乃と、あんちゃんこと佐原暗雲、そしてこうちゃんこと菊池康介はイツメンだ。皆小学生6年生。

幼稚園からの幼なじみだ。

彼らが通う、田舎の小学校には少人数の学生がいる。10人程だ。

3人の自宅は山の中腹にあった。

お祭りに行くことになった3人は青空よし乃の父親、 道助に車を乗せてもらい、市街地まできた。その日の帰り道、ある人に出会ってしまった。

それは急カーブの前のところにいた。

長い髪の女。黒い服に黒い帽子をかぶっている。

スタイルは抜群にみえるが帽子のせいで顔が見えない。

道助は驚きながら徐行する。

ぶつぶつ呟いている。

「焼身自殺焼身自殺」

道助、よし乃、暗雲、康介は唖然とした。

横を通り抜ける4人。よし乃は見てはならないものだと思い、顔を俯かせていた。康介は暗雲の手を握りしめながらその手をみていた。暗雲は怖いもの知らずなのか、その生き物をみた。

暗雲の顔から汗が滴り落ちた。

そして、その場所を通り過ぎる。

「なあ、今のお姉さんどんな顔していた?」

康介は軽い気持ちで振り返った。誰も何者も、いなかった。

「わからない、見えなかった」

「見えなかった?」

「僕は何も見てない!」

暗雲は家に着くまで口をつぐんだ。何を言っても反応はしなかった。


その日の夜更けに暗雲が無理心中をはかった。ガソリンをかぶって火をつけた暗雲は全身に火傷をおい、次の日に亡くなった。家族の両親と妹は火傷を負いながらも助かったらしい。



次の日の学校からの帰り道、あの上り坂の急カーブに、また髪の長い女のような生き物がいる。

「飛び降り自殺、飛び降り自殺、飛び降り自殺」と、呟いている。

康介はくってかかった。

「なんで暗雲が死ぬことを知っていたんだ! お前はいったい何者だ!」

「こうちゃん、やめて!」

2人はその女に似せた人型の生き物の顔を見てしまった。

歯並びが悪くニヤニヤと笑いながらこちらを見ている。目は黒い三日月のようだ。

「わああああああ」

2人は逃げた。気づけば山の方にいた。

『飛び降り自殺飛び降り自殺』

頭にテレパシーのように伝わってくるその声から逃れようと2人は山を登り続けた。

康介は足を崩した。

そこは崖になっていて、よし乃が必死に手を伸ばし掴んだが、何者かに背中を触られた。

「ぎゃあああ」

2人は落ちていく。




あれ?ここは?



目が覚めるとそこは学校の保健室のベッドの上だった。

「夢を見ていたのかな?」

よし乃は全身に寒気を感じながら体を起こした。「よっちゃん、うなされてたけど大丈夫?」

暗雲がカーテンを開けた。

「あんちゃん! あの髪の長い人はどうなったの?」

「何を言ってるの?」

「ねぇ、こうちゃんは?」

「もう下校時間だから、校門で待ってるよ」

「山の上り坂の急カーブで女のような生き物がいるんだけど、絶対に目を合わせないで!」

「何言ってるの?」

「ねぇ私、どうしてここにいるの?」

「5時間目の授業中に倒れたんじゃないの? 大縄跳びに足引っ掛けて頭から落ちたんじゃなかった?」

「え?」

「え?」

「私、あの上り坂行きたくない」

「上り坂をのぼらないと帰れないよ、大丈夫、僕が守ってあげるから」

「殺さないと殺される」

よし乃は近くにあったランドセルから彫刻刀を一本取り出してポケットの中に入れた。

「それじゃあ、穴があいちゃうよ、このティッシュでかませて入れといたほうがいいよ!」

暗雲はポケットティッシュをよし乃に差し出した。

よし乃はポケットティッシュを受け取ると、それを先に入れて彫刻刀を入れ直した。

「ありがとう」

「もう待ってるよ、行こうよ、よっちゃん」

「うん、分かった」

よし乃はドキドキと心臓が口から出そうだった。

校舎から出ると、校門で若白髪の交じった見知った顔がよし乃と暗雲を待っていた。

「こうちゃん、待たせてごめんね」

暗雲は綺麗な目をしてそう言った。

「そんなに待ってねぇよ」

「こうちゃん、上り坂の急カーブに人のようなよく分からない生き物がいるから気をつけてね」

「人のような化け物?」

「さっきからこんな調子なんだ。頭打ったのかな?」

「いいから、絶対に目を合わせちゃダメだよ」

「うーん」

「まぁ、気をつけるよ」

2人は腑に落ちない様子で頷く。

歩いていくと足場は上り坂になり始めた。

あの急カーブでは、誰も何もいなかった。

「誰もいないじゃん、おどかしたな、よっちゃん!」

「嘘じゃない」

「まぁ2人が無事ならそれでめでたしだよ」



しかし、その日、よし乃は夜中に枕元で何者かが立っているような気がした。肌に髪の感触があった。

(誰?)

よし乃は目を開く。

誰も何もいない。

よし乃は黒い靄がときどき見えるようになっていた。原因は分かっていたが、学校からの帰り道は変えることもできない。

よし乃はもしかしたら事故でなくなった人なのかもしれないなと思った。

この地に詳しい祖父に聞くことにした。



祖父に聞いた話だと、ある集団に、この近くに若い女が拉致されて監禁されていた小屋があった。そこから這い出して逃れるも、急カーブで人がいるとは分からなかった男が若い女を轢き殺し、自らもカーブを曲がりきれず路外にでて死んだそうだ。



住職さんと祖父といつもの3人は急カーブのところへ供養にいく。

よし乃の黒い靄は見えなくなった。

ただ一つ、よし乃は驚くことがあった。

「おっかしいな、去年のカレンダーじゃん」

「寝ぼけてるの? 間違ってないわよ」

母親に言われて面食らったよし乃。


そう、よし乃は過去へ戻っていたのだった。


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