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総合ダンジョン管理術式『Solomon』保守サポート窓口 〜ミミックは家具だって言ってんだろ! マニュアル読め!〜  作者: score


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79 魔王城へようこそ! 28


 なし崩し的に始まったドラ子とエリちゃん十四世の決闘を行うため、面々は決戦のバトルフィールドへ向かうことになった。

 アミューズメントダンジョンである魔王城にて、魔王と実際に戦う舞台となるラストダンジョン『魔王城(本丸)』だ。

 わざわざそんなところで戦わなくても、仮設ダンジョンの一つくらいさくっと作って戦えば良いのにとメガネは考えたが、決闘には雰囲気が必要という理由で却下された。

 言いがかりのような始まり方をした決闘に、雰囲気が必要なのかは甚だ疑問であった。


 まずは魔王エリちゃん十四世が戦う準備を整えるというので、チームSolomonの面々は先程の部屋で待機である。


「というかドラ子お前、何がしたいのかは知らないが勝算はあるのか?」

「ふっふっふ、この世界最強生物たるドラゴンを見くびってもらっては困りますね先輩」


 ドラ子は先輩の疑問に得意気に返す。


「さっきの小娘からはなんの威圧感も感じませんでした。母と相対した時を100魔王とすると、精々4魔王といった所でしょうか。負ける道理がありませんね」

「…………?」


 その謎の単位にも驚いたが、メガネが驚いたのはそこではなかった。

 なぜ今の状態が魔王の強さの底だと思っているのか、不思議でならなかった。


「なぁ白騎士。あの魔王様はどれくらいのレベルの魔王だった?」


 疑問を疑問のままにしておくのも気持ち悪いので、メガネはそれとなしに白騎士相談室に質問を寄せた。

 白騎士は、彼女にしては珍しく、かなり困惑した様子で答える。


「えっと、戦闘形態に入ってすら居ない会話状態の魔王様でしたよ」

「つまり?」

「戦闘形態に入っただけで、少なくともさっきの10倍は戦闘能力が増すかと」

「あ、ふーん」


 メガネは同情の視線をドラ子に送った。

 ドラ子は冷や汗をかいた。

 だが、即座に自分の想定を修正しつつ、得意気に──あるいは強がって言う。


「ま、まぁ、仮に10倍強くなったとしても戦闘力は40魔王程度ですしね。私は本気を出せば45魔王くらいはあるんで、全然私の余裕勝ちです」


 それは意外と接戦じゃないのか?

 とメガネは思ったが口には出さなかった。

 代わりに、白騎士が言いにくそうに付け足す。


「あのドラ子さん。今のはあくまでレベル1の魔王様の話でして、設定レベルが上がるとどうなるのかは、私にもなんとも」

「なんか相手やたら強くない? チートじゃない?」

「そもそも、パーティで挑む相手なので仕様です……レベル1でもソロで戦えるとしたら相当凄いですよ?」


 急に敵が想定よりも強くなった為か、それまで自身の勝利を確信していたドラ子が少し不安そうな顔をしはじめる。

 そのまま、自分の手札を確認するように独り言を口に出す。


「……いやでも、私も素の状態がそれってだけだし、能力解放していけばもうちょい伸ばせるし、最悪第二形態で龍化すれば二倍は固いし、ルールでその辺は禁止されてないから問題はない、はずだし……」


 急に暗雲が立ちこめ始めたドラ子の食い倒れ計画。その場の面々はこの先の展開を少し予想してしまった。

 ただ、やっぱり止めたなどと言える状況でもなく、準備が終わったとすぐに連絡があったため、チームSolomonの面々は決戦のバトルフィールドへ向かった。




「良く来たな! 勇者メガネの一番弟子よ!」


 魔王城で待ち構えていたエリちゃん十四世は、いかにも魔王らしい装備に身を包んでいた。

 闇色のローブに、禍々しい錫杖と宝玉、そして腰掛けるべき玉座と、魔王様の雰囲気セット特盛である。

 実際に感じる威圧感も、先程の会話形態とは別物で、白騎士の見立て通り、軽く十倍は強く感じる。まぁ、彼女本来の能力というのではなく、魔王城のシステムが作成した『魔王』としての彼女の強さなのだろうが。

 そして不敵に笑う魔王に対し、ドラ子は露骨にホッとした顔をした後に答える。


「それは本気の姿に見えないけど、それで勝てるつもりなのかな?」


 自分が優位と見た途端、少し強気になるドラ子。

 対する魔王エリちゃんも不敵に返した。


「同じ言葉を返そうか。余に関して言えば、勇者を育てるのも魔王の役割なればな。勇者レベル1の相手に本気など出す訳がない──竜騎士30くらいでも同じである」


 お互い、牽制をしあっていた。

 一見すると、戦闘前にバチバチに盛り上がっているように見えるが、実際は違う。

 どちらかと言えば『俺は本気出さないけどそっちは本気出すの? ふーん、まぁその時点でこっちのが強いと思うけどね?』みたいな心理戦である。

 テスト前に全然勉強してねーわと言うのと、本質的には一緒である。

 当然、本当に強いのはどんな状況だろうと勝った方であり、力を残して負けたからといってその負けが帳消しになるわけではない。

 だが、決闘を前にした二人は、心理的に相手の上に立つことで心の余裕を得ようとしていた。

 こういう戦いは、余裕を失った方から負けて行くのである。

 そしてお互い挑発タイムを終えて、相手の強さをそれとなく計ったところで、二人はこう確信する。



((これなら勝てる!))



 ここまで言っておけば、相手が最初から第二形態なんてダサいことをする筈がない。

 であれば、相手が力を温存している間に、さっさとパワーアップして勢いで押し切れば自分の勝利は間違いない。

 その結論に至った二人は、先程までの挑発とは一転、余裕の表情を浮かべる。


「ふっ」

「ふふ」


 言葉は不要だった。

 お互いに自身の有利を確信すればこそ、相手にも優しくできる。


「お互い、精一杯やりましょうね」

「そうであるな。どのような結果になろうと、悔いる事はない」


 自分を上と考えての、この先負けるであろう相手への気遣いの言葉である。

 一見するとスポーツマンシップに則った言動に見えて質が悪かった。


「ところで開始の合図は?」


 ひとしきり気遣いをしあったあと、ドラ子は尋ねた。

 決闘は、別に徒競走でもなんでもない。

 ましてやゲームのように、会話が終わったので今から戦闘です、コマンドを選んで下さいというわけにもいかない。

 立会人は大勢いるので、誰かに開始の合図を出してもらうことも考えたところで、魔王エリちゃんは不敵に言う。


「魔王なら、初撃は相手からの一撃を受けると相場が決まっておる。故にそちらの一撃で戦いはじめるので良いぞ」

「良いの?」

「それも魔王の務めである」


 思わず尋ね、それに魔王が頷いたところで、ドラ子は決める。

 そういうことなら、初手最大火力で沈めてしまおう、と。


「ではお言葉に甘えて」


 相手が何もしないと決まれば、ドラ子は即座に攻撃の溜めに入った。

 キイイイと甲高い音を立てながら、ドラ子の口の前にエネルギーが溜まって行く。

 職業である竜騎士のスキルでは断じて無い。

 生まれ持ったドラゴンという種族に許された、最強の攻撃手段を最初にぶっ放すつもりであった。


「…………は?」


 若干、放心気味のエリちゃんを置いて、ドラ子は言葉とともにそれを放った。




「死ねえええええええええええ!」




 そして、種族ドラゴンの放つ光のブレスは、魔王エリちゃん十四世を飲み込んだのだった。


ドラゴンの誇り?

そんなものはない

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― 新着の感想 ―
[一言] 竜(の)騎士じゃなくて竜(が)騎士ですからね。ドラゴンができることなら大抵のことはできる竜騎士です。 もちろんめちゃくちゃ強い。
[一言] VRMMOだったらリアルチートとか言われてた(?)
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