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総合ダンジョン管理術式『Solomon』保守サポート窓口 〜ミミックは家具だって言ってんだろ! マニュアル読め!〜  作者: score


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155 基本ダンジョン攻略技術者試験12



 本来、このダンジョンの突破にはある程度の時間がかかる想定であった。

 いや、時間をかけねばならないから攻略不能であると言い換えることができた。


 このフィールドは昼と夜を繰り返す設定のものである。

 大体一時間程度の昼間と、三十分程度の夜が交互に訪れる設定だ。


 夜は唐突に出現する徘徊型ボスから逃げ回り、昼には住民から徘徊型ボスの情報を集める、というのがダンジョン攻略の骨子になる。

 この村の住民にとってもワーウルフは恐ろしいモンスターであるらしく、その情報自体は割と簡単に集められるようになっている。

 そうやって少しずつ、徘徊型ボスの行動パターンや弱点を拾っていき、ついに倒すための算段がついたというところで──時間切れだ。


 時間をかけすぎると、この村の住民であるところの──『ワーウルフ達』の襲撃準備が整い、罠にかけられて一網打尽にされる。

 そう。実はこの村は『村人の中に人狼が混じっている』のではなく『人狼の村の中に冒険者が迷い込んだ』という構図なのだ。


 それにいち早く気付けなければ、盛大に時間をロスさせられた上で、死亡によるペナルティが待っている。

 必要なのは、この村の真実に気づき、村を治めている『領主』に疑いを持つことなのである。


 だが、この『領主』もまた曲者だ。

 この『領主』は常に自分の使いパシリであるワーウルフからの情報を読み取っており、侵入者の存在を警戒している。

 ワーウルフに見つかりながら生きている侵入者がいるとなれば、即座に自身の屋敷で警戒態勢に入るし、万が一ワーウルフが討伐されたとあれば、村の住人全てに襲撃を命じた上で、自身も最大限の迎撃態勢に入る。

 そしてそうなった場合の『領主本人』の戦闘力は、ワーウルフの数倍になる。


 つまり、何も知らない冒険者がこの村のダンジョンを──住民という生存者が一人も居ない廃村ダンジョンを攻略しようと思えば。

 なんの情報もない状態から真のボスの存在を見抜いて、迅速にボスの討伐に向かう、といった妄想じみた決断力が必要なのだ。


 故に、攻略不能ダンジョン。

 時間をかけねばヒントが集らず、ヒントが集ったころにはゲームオーバーという構成の、侵入者を殺すためのダンジョンである。



 と、まぁ、ここまでが『ダンジョン作成者』の意図した仕様である。



 そして、今回の侵入者達は、このダンジョンが『攻略不能ダンジョン』であることを知っている。

 そしてまた、彼らには制限時間もある。

 あくまで試験だという認識があるからこそ、時間をかけて攻略するのは『間違い』であるという認識が強かった。


 それこそ、試験会場の情報交換スペースでは、初手のワーウルフの襲撃で痛手を負ったものや、村人の怪しさに気付いた者などが熱心に情報を提供しあっている。

 彼らには、情報を秘匿しようとする気はあまりない。積極的な情報共有が、回り回って自身の合格への助けになると知っているからだ。

 自分だけが情報を独占して合格しよう、などと考えているとこの試験には受からない。これは、そういう難易度の試験である。


 そして彼らの中には、悠長に村人から情報を集めようなどと思っているものは一人もおらず、そもそも村人が味方だと思っているものも一人もいない。

 ダンジョン攻略で信頼できるのは、ダンジョンの息がかかっていない者だけだ。


 そうやって集った情報から、受験者達は『ワーウルフ自体が何かの罠』という結論に至り、売店で買った『銀の弾丸』で討伐したワーウルフから情報を読み取った者が、その結論の補強をしていた。




 一方そのころ。




「き、貴様等ぁああああああ! どうやって入ったぁあああああ!?」


 ドラ子の目の前で、気持ちよくお昼寝していた『領主』が心臓に杭を呑まされて、野太い悲鳴をあげていた。


「そういうの良いから、はい、呑んで呑んで呑んで! 呑んで呑んで呑んで!」

「ぐごごおおおあああああああああああああああ!」


 いつもの飲み会で鍛えたテクニックを駆使して、『領主』に気前良く杭を呑ませているのはカワセミであった。

 ドラ子とて流石に『領主』が可哀想とかそういう感想もあるのだが、嫌がる相手に気前良く呑ませているカワセミが無表情なことの方が気になった。


「あのカワセミ先輩。別にコールは必要ないのでは」

「嫌な事をやるときには、勢いに任せた方が心の負担が少ないの」

「そうですか」


 ドラ子は何も言えなくなった。

 さて、どうしてこうなったのかを少しだけ説明しよう。


 受験者の多くが『ワーウルフ』という徘徊型ボスがギミックの一部であり、同時に罠であることに気付いたころ。

 カワセミに連れられたドラ子は、真っ直ぐにこの領主の館へと向かっていた。

 それはワーウルフを生かしたまま無力化してことによって得た、大きなアドバンテージが成せる業であった。


 死体になる前のワーウルフの構成情報を見れば、そのワーウルフが一体誰から使役されているのかが簡単に読み取れるようになっていた。

 そのワーウルフがこの地域の『領主』のペットであることは即座に分かったので、カワセミは咄嗟にとどめを差すのを止めたのだ。

 その『領主』の家は、ドラ子がちょっと空を飛んで偵察すればすぐに見つかった。こんな粗末な村にそぐわない、大きな洋館がポツンと建っていたからだ。

 そのままドラ子にお姫様抱っこで運ばれたカワセミは、領主の館の前でドラ子に言った。


「ここからは洋館型ダンジョンの攻略になるね」と。


 洋館型ダンジョンもまた、そこまでメジャーではないにせよ、それなりには存在している形式のダンジョンだ。

 大体の構造としては、鍵がかかっていない部屋と鍵のかかった部屋が存在し、その中を色々と探索して、一つずつ鍵を開けて行くイメージだろうか。

 簡単な例を挙げれば、とあるギミックを発動させることで中庭の噴水の水が引き、それによって入れるようになった扉の奥で書斎の鍵を入手し、その書斎の中でまた新たなギミックが待っている、といった具合である。

 そして大抵は地下室とかの奥で、ボス級のモンスターが待ち構えているのだ。


 冷静に考えてみると、屋敷の中移動するだけでどれだけ面倒なギミック発動させないといけないんだよ、というツッコミも入るが、ダンジョンだから仕方ない。

 なにより、ドラ子たちは別に正規の方法で入ったわけでもない。

 鍵が必要そうな箇所は、可能な限りドラ子の脳筋式解錠で突破した。

(※脳筋式解錠とは、鍵が開かなければ鍵を壊して開ければ良いという、非常にクレバーな解錠法のことである)


 そして可能な限り迅速に移動し、辿り着いた地下の広間。

 二人は、広間の中心にあった棺桶ベッドで眠っている『領主』を見つけることに成功したのである。

 強盗としてなら大した手際であった。

 あとは、昼間であれば基本的に寝ているらしい領主の心臓に、カワセミがたまたま持っていた登山用の杭を打ち込んで終わりであった。



「何故誰も気付かなかったあぁぁぁあぁぁぁあああ」



 心臓を串刺しにされている割にはまだ元気のある領主が叫ぶ。

 そんな領主の心臓に刺さった杭に、疑問を持ったのはドラ子であった。


「しかし先輩はよく『領主』が『吸血鬼』であることに気付きましたね」


 この村を牛耳っているのは吸血鬼であった。

 それを知ってか知らずか、カワセミは寝首を搔くという言葉の通りに、寝ていた領主に正しい吸血鬼の殺し方を行ってみせたのである。

 故にドラ子は、カワセミはどこかで領主の種族に気付いたのだと思った。


 だが、カワセミは静かに首を振った。


「気付いては無かったかな」

「え、でもじゃあ、なんで?」


 吸血鬼の弱点として一番有名なのは、心臓に白木の杭を打ち込まれると死ぬというものだ。

 吸血鬼の生命力がワーウルフを越えるほどだとしても、弱点を突けば勝算はある。

 相手が吸血鬼であると知っていれば、心臓に杭を打つのは当然の流れである。

 だから、そうしたのだとドラ子は思った。

 だが、カワセミはそうではないのだと続ける。


「吸血鬼に限らず、大抵の生き物は心臓に杭を打たれたら死ぬから」

「たしかに」


 言われてみればその通りであった。

 吸血鬼が頑丈なだけで、それ以外の魔獣だろうとなんだろうと、大抵の生き物は心臓に杭を打たれたら死ぬのである。

 まぁ、ドラ子であれば心臓が一つ潰れた程度では死なないが、それは別の話だ。

 だから、カワセミはとりあえず眠っていて動けない相手の心臓を穿ったのである。


「ぎいいいやあああああああああああ」


 そして『領主』はついにそのバックボーンなど何も伝えることなく死に絶えた。

 ドラ子は、少し肩すかしの気分を味わいながらも満足気に頷く。


「なんにせよ、これで試験は合格ですか。意外と簡単でしたね」


 ドラ子の感想に、カワセミはぽかんとした。

 後輩の楽天家ぶりに心底驚くような顔であった。


「何言っているのドラ子ちゃん……?」

「え?」


 と、ドラ子が不思議がっているところで、吸血鬼の寝室兼地下室に異変が起こる。

 領主の身体が白い光に呑まれ、どこぞへと消えたかと思うと、後には光の渦巻きのようなものが残っていた。


 どう見ても、旅の扉型ダンジョンの入口であった。


 ドラ子はようやく、自分の楽観視点がどれだけのものだったのか思い知る。

 ギギギと油のキレた機械のようなぎこちなさでカワセミに向き合うも、カワセミはいつもの微笑に戻っていた。


「さて、これで『第一層』はクリアね──いえ、洋館型も含めれば『第二層』かな」

「参考までに聞きたいのですが、全何階のダンジョンなんですか?」


 ドラ子は恐る恐る尋ねた。

 できれば、割と簡単に終わって欲しいなと願いを込めて。

 そしてカワセミは無情に答えるのだった。


「何階層あるのかは、試験ごとに変わるけど──過去最高だと15階層まであったらしいかな」


 ボスを倒したと思ったらそこはまだ入口であった。

 ドラ子のダンジョン攻略は、まだ始まったばかりだ……。



予定より大変遅くなり申し訳無いです……


洋館の中でもそれなりにギミック考えたりしていたのですが、冷静に考えたら鍵とか扉とか壁とか壊すのが一番早いなと。

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― 新着の感想 ―
〉脳筋式解錠 壊せる扉があるのに鍵探すのはクレバーじゃないですよね
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