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総合ダンジョン管理術式『Solomon』保守サポート窓口 〜ミミックは家具だって言ってんだろ! マニュアル読め!〜  作者: score


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100 休日『ゴーレム農家の人の動画鑑賞』3



『つまり、ゴーレムは土で出来ているんです』



 ゴーレム農家の人が決定的なことを言う前に、ドラ子はコメントに目を通す。

 そのタイミングを見計らったわけでもなかろうに、ついに彼は言った。


『だから、ゴーレムをどうにか倒せれば! 念願の畑が作れるんですよ! 土があるんですから!』


 その発言と同時に、コメント欄は爆発していた。


『え? うん……え!?』

『畑……畑?』

『何故こいつに種を与えてしまったのか』

『ゾンビ肉を食べると頭が悪くなる』

『ビタミン不足による脳の影響が大きい』

『発想が天才のソレ』

『いや悪魔のソレ』

『M「えっ!?」』

『M「お前は何を言っているんだ?」』

『M唯一の誤算にして最大の功績』

『倒せないゴーレムをどうやって倒すつもりなんですかねえ』

『伝説の始まり』

『Mの想定外』

『文明開化』

『狩猟民族から農耕民族への進化』

『これにはMも苦笑い』


 などなど、とにかく何か言っとけと言わんばかりにコメントが流れて行く。

 ここでこの動画のジャンルはダンジョン攻略動画から、ダンジョンエンタメ動画に変わったと言っても過言ではないのだろう。

 それまでも、ゴーレム農家の人の行動にツッコミを入れるようなスタイルではあったが、ここに来て本当に理解の出来ない事を言い始めたのだ。

 そして、それが今後の彼の生活を変えたことは、ゴーレム農家の人という通称で分かってしまうのである。

 とにかく、どう頑張っても倒せなさそうなゴーレムを前にしたゴーレム農家の人の目は、ドラ子が見ても分かる程に爛々と輝いていたのだった。



『それではこれより、対ゴーレム作戦を開始します』



 そしてここから、ゴーレム農家の人のDieジェストが始まった。



『まず行動パターンを把握することが何より大事です。ゴーレムの総数の調査と、移動ルートの確定、行動パターンの把握などを行って行きます』


 そして、とりあえず適当なゴーレムに自家製の着色料(材料はゾンビとか)でもって印を付けるゴーレム農家の人(一体に付けるたびに一度死ぬ)

 総数確認と固体識別が完了したら、次はゴーレムのストーキングをして行動ルートを算出するゴーレム農家の人(尾行に気付かれると死ぬ)

 あとは、ゴーレムに体当たりしてみて攻撃パターンを割り出したり、防御力を算出したりするゴーレム農家の人(言うまでもなく死ぬ)

 死ぬ度に増えていくため、リスポーン地点近くの小部屋にうずたかく積まれて行くひのきの棒の山。

 繰り返し繰り返しチャレンジしていたせいで、85階まで辿り着く時間が極限まで短縮されて行くゴーレム農家の人(視聴者には移動時間はカットされているので報告だけだが)


 そのトライアンドエラーを繰り返す様も面白可笑しく編集して、ゴーレム挑戦編だけでパート5を数えたあたりで、ついにゴーレム農家の人が言った。


『うん。僕がこれ倒すの無理ですね』

「知ってた」


 今更言われるまでもなく、視聴者の誰もが分かっていたことであった。

 そもそも、ゴーレム体当たり挑戦編の時点で分かっていたのだが、素手だろうとひのきの棒装備だろうと、こちらの攻撃はゴーレムに1ダメージたりとも与えられないのだ。

 それでいて相手の攻撃は一撃必殺ともなれば、戦う前から結果が分かっている。

 そもそも戦いになってすらいない。

 誰が見ても、ここでゴーレム相手に時間を費やしたのが無駄だったのでは? と考えざるを得ない結果だった。


『なので発想を変えたいと思います』


 しかし、それで諦めるゴーレム農家の人ではなかった。


『僕がゴーレムを倒せないなら、倒せる奴にゴーレムを倒してもらえば良いんです。つまり同士討ちさせます』

「どうやって?」


 自信満々に言い切ったゴーレム農家の人に、ドラ子は思わず疑問を零す。

 コメントでも同様の感想が目立った。


『普通のモンスターならともかく、ゴーレムを同士討ちさせるのむずくね?』

『ゴーレムのアルゴリズムによるけど、基本的に味方を攻撃させるのは難しい』

『これは巡回型だから敵味方識別が緩い可能性はあるが』


 と、技術者畑っぽい人達のコメントがちらほらと見える。

 ドラ子もそこまで詳しいわけではないが、同じような意見だった。

 ゴーレムと言えば、自由意志で行動するというよりは、与えられた命令を忠実にこなすタイプのモンスターである。

 この与えられた命令というのがミソで、ゴーレムを思い通りに使いこなせるか否かは、作成者の腕の見せ所だ。

 イレギュラーに柔軟に対応しながら、本来の目的を果たさせるというのは、それだけ頭を使う作業なのである。

 ドラ子はそういうのは苦手なので、飲みの席で嬉々として語っていたメガネの先輩のことを、奇妙な生き物を見る目で見ていたのだが。

 今回で言えば、M(ダンジョン制作者)の腕の見せ所になるのだろう。


『まずは普通に、一体を釣ってもう一体にぶつけてみましょうか』


 調査によって五体いることが分かったゴーレムの一体を釣って、近くを巡回しているもう一体のところまで動かしてみる、と軽く宣言するゴーレム農家の人。


『奴らの攻撃力と防御力はずば抜けていますが、スピードはそうでもありません。精々僕の1.4倍くらいなので、全力で行けば大丈夫な可能性があります』

「いやスピードも負けとるんかい」


 全ての能力値において負けている故の、地獄の鬼ごっこが始まった。

 まずは普通に認識され、そこからもう一体のところまで走って誘導しようとしていたのだが、これは失敗だった。

 予想以上にゴーレムの追跡能力が高い。また、敵対関係になって攻撃モードに入らせるためには、結構近づかなければいけないのも問題だ。


『くそ! このめくらゴーレム共め! Mも嫌な設定しやがる! どうやって倒せっていうんだ!』


 結果として、どれだけ全力で逃げても近くのゴーレムに辿り着くまでに殺される。

 思わず悪態を吐いたゴーレム農家の人に対し、コメントはやや辛辣であった。


『むしろ温情なんだよなぁ』

『敵の目が悪いことにキレる理不尽さよ』

『※Mは倒せる設定にしていません』

『M「良いからはよ進めや」』


 もちろんゴーレム農家の人は諦めず、次に進んだ。

 画面では、ゴーレム農家の人が集めに集めていたひのきの棒をぶんぶん振っている。


『えー、通常モードのゴーレムの認識能力の低さは良く分かりました。では、その外側から攻撃をしかけたらどうなるのでしょうか? 答えは簡単です。攻撃モードに切り替わり目が良くなります』


 言いながら、ゴーレム農家の人は槍投げの素振りのように、ひのきの棒の射出準備を始める。

 ゴーレムはまだ遠く、こちらからは認識できるが相手からは見えていないようだ。


『ひのきの棒くん可哀想』

『ひのきの棒「やっぱり私を捨てるのね」』

『残弾は積み上げた死体の数だけあるな』

『松明にした分は減ってるぞ』

『ひのきの棒くん一世一代の大舞台』

『※これから奇跡が起きます』


 ん? と気になるコメントが流れた直後、ゴーレム農家の人の準備は終わったらしく、彼は言う。


『では、ゴーレムチャレンジ第二ラウンドの開始です』


 そこからゴーレム農家の人の行動は滑らかだった。

 乾坤一擲の大一番。彼はとても綺麗なフォームでひのきの棒を射出する。

 綺麗な放物線を描きながら飛んで行くひのきの棒は、しかしながら僅かにゴーレムから逸れる。


『ミスですね』


 と、ゴーレム農家の人が呟き、ドラ子も同様のことを思った瞬間だった。

 中心からそれていったひのきの棒が、歩いているゴーレムの手の中に、スポっとハマったのは。

 ゴーレムwithひのきの棒の完成であった。


『…………』

「……ふふっ」


 ゴーレム農家の人があんぐりと口を開ける。

 そのあまりに奇跡的な光景に、ドラ子は思わず笑ってしまった。

 果たして、歩いているゴーレムに、遠くから槍投げの要領でひのきの棒を装備させることができる人間が、どれだけいるだろうか。

 少なくともドラ子には狙ってやれと言われてもできない。

 コメント欄も同じように、叶った奇跡にコメントを残す。


『うっそだろwww』

『奇跡だろwww』

『www』

『天才かよwww』

『【ゴーレムはひのきの棒を装備した!】』

『ゴーレム「くれるの?」』

『ひのきの棒「あんたよりゴーレムの方が良いわ」』

『タイミング、コントロール、時の運、全てが揃わないと起きない奇跡』

『ひのきの棒「私達もう終わりね」』

『M「ええ?」』


 コメント欄が騒然としたのも束の間。

 ゴーレム農家の人は何事も無かったかのように第二射の準備にとりかかる。


『それでは、ゴーレムチャレンジ第二ラウンドの開始です』


 ゴーレム農家の人は、さっきのを無かったことにした。

 その白々しい態度に再び笑うドラ子だったが、そこから起きた事は誰も彼も想定外であった。

 巡回モード故にのんびり歩いているゴーレムから距離を離し、再度行われた槍投げは、今度こそゴーレムの身体にコチンと命中する。

 それを確認したのち、ゴーレム農家の人は全力で逃げる体勢を取った。


『ダメージはゼロですが、これでゴーレムとは敵対関係になります。この状態でもう一体にぶつけて、拳の一つでも打ち合わせられれば勝ちですね』


 果たしてゴーレム達の味方識別を狂わせ、攻撃のアルゴリズムを搔い潜る抜け道はあるのか。

 その検証スタート、と言いたいところだったのだが、画面では異変が起きていた。


『…………? ゴーレムが敵対しませんね』


 ゴーレム農家の人が不思議そうに声を出す。

 だが、現に追ってくると思っていたゴーレムは相変わらずのんびり歩いたままである。


『ちょっと、近づいてみます。ダメならただ死ぬだけですから』


 ダメだったときの代償があまりにも大きい気がするが、今回の攻略に限って言えばうずたかく積まれたひのきの棒が一本増えるだけに過ぎない。

 意を決してゴーレムに近づいた農家の人。彼が恐る恐る、ゴーレムの識別圏内に入り、身構える。

 しかし、想像していたような、攻撃はやってこない。

 ゴーレムは相変わらずのんびり歩いており、農家の人のことは路傍の石ころ程度にしか認識していないようだ。


『…………計画通り、ゴーレムを無力化することに成功しました』

「嘘つけ!」


 何が起きたのかはさっぱり分からないが、ゴーレムが仲間?になったのだった。

 混乱する視聴者に補足するように、動画の下部に編集で追加したらしき説明が入る。


【※どうやら利用していたダンジョンの術式の不具合のようでした】


 そして、そのコメントと共に、不具合の情報が載っているページのアドレスが記載される。


「ひぃ」


 それを見た瞬間、思わずドラ子の背筋が凍った。

 だってそのアドレスが、見慣れたSolomonの不具合情報に繋がるアドレスであったのだから。





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― 新着の感想 ―
[良い点] やっぱりゴーレム農家さんゾンビ肉で頭が… [一言] て、テイム…した…?
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