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総合ダンジョン管理術式『Solomon』保守サポート窓口 〜ミミックは家具だって言ってんだろ! マニュアル読め!〜  作者: score


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99 休日『ゴーレム農家の人の動画鑑賞』2

ダイジェスト風味



──99階


『みなさん見てください。スケルトンが錆びた武器を装備しています。ひのきの棒はもう限界だったので、武器を補充したいと思います』


 戦闘後。


『武器消えたあああああああああああ! なんで武器だけ消える仕様なんだくそがあああああ』



──コメント欄──

「そんな気はしてた」

『知ってた』

『M「できるとでも思っていたのか?」』

『ひのきの棒くんはまだ行けるって言ってる』

『ひのきの棒「捨てないで」』

『錆びた剣「お幸せに!」』



──97階


『敵に新しい仲間が加わりました。見て下さい。燃え盛る人形です。見た所可食部はありませんね。火が手に入るだけマシと思いましょう』


 戦闘後。


『えー、なんとか倒しましたが、見ての通りスケルトンの骨にも、ゾンビの布切れにも何故か着火しません。あと燃えそうなものは……あ』



──コメント欄──

「ひのきの棒くん逃げて!」

『ひのきの棒くん……君の事は忘れない』

『モンスターの可食部を確認するサバイバルのプロ』

『三階層も連れ立って来たのに今更捨てるのか』

『人の心がない』

『そもそも火を手に入れて何に使うんだ』


────────


『ではこれから、手に入った火を使ってゾンビ肉を調理していきたいと思います』



──コメント欄──

「!?」

『!?』

『!?』

『www』

『調理とは食材に対して使う単語では……?』

『文明が原始時代から石器時代くらいまで進んだか……』

『原始時代バカにすんな。ちゃんと食えるもん食ってたわ』

『先生の三分クッキング』

『用意した食材はこちら──ゾンビ肉! 以上です』

『M「その発想はなかった」』



──94階


『相変わらず腹の調子が悪いです。ですが食べないと空腹で死ぬ為、我慢してゾンビ肉を食べて行きます。みなさんは知っていますか? 食材には『食べられるもの』『こんな状況でなければ食べないもの』『こんな状況であっても食べるべきではないもの』『食べられないもの』に分類されます。ゾンビ肉は一番後ろです』



──コメント欄──

「喰っとるやんけ」

『食べられないもの(哲学)』

『※彼は特別な訓練を受けているため食べられないものも食べられます』

『俺もゾンビ肉食べたことあるけど食べ物じゃないぞ。火を通せばとかいうレベルじゃない。炭の方がまだ美味しい』

『なんでそんなもん食べてる人がここにも居るんですかね……』



 ──90階


『ついに節目まできました。90階のボスは巨大なスケルトンですね。装備は素手になって久しいですが、なんとか挑んでみたいと思います』


 戦闘後。


『死にましたが、ロストしたひのきの棒が再支給されるという発見があったので問題ありません。また90階まで昇って行きたいと思います』



──コメント欄──

「ゾンビ肉生活、おかわり」

『ひのきの棒「来ちゃった」』

『ひのきの棒「忘れないで」』

『ひのきの棒「私は滅びぬ。何度でも甦るさ!」』

『本当に唯一の良心だな、ひのきの棒復活。復活したところで松明になるんだけど』

『ひのきの棒は燃やした。はっきり言ってこれから先の戦いに付いて来れそうにない』



──88階


『み、みなさん! 見て下さい! 食べ物の種です! Mから説明を受けていたのですが、種は植えれば即座に実を付ける設定にしてあるそうです! これで、これでゾンビ肉以外の食料を──────どこに植えるの?』



 ──コメント欄──

「知ってた」

『知ってた』

『そりゃおめえ、土に植えんだよ。土ねえけど』

『M「種用意しといたよ! 植える場所は用意してないよ!」』

『M「おめえの希望ねえから!」』



『この時の種があんなことになるとは、誰も知らなかった』



──────



 そうして、ゴーレム農家の人は幾度となく死亡と食あたりと死亡を繰り返しながらも、着々と攻略を進めて行く。

 タイトルにあったひのきの棒はもはやコメント欄でのマスコットと化し、現実的にはほとんど戦闘に使われない松明となっていた。


 だが、そんなタイトル詐欺の現状とは裏腹に、動画の内容は面白くなっていく。

 最初はゾンビ肉のインパクトだけだった食事面も、火を通すことで吐かないで飲み込めるようになったところから進む。

 明らかに食用ではない魔物を、どうにか調味料として活用することで、まったく食欲をそそられない食レポをしたり。

 ドロップアイテムのゴミをたくさんかき集めて、新しい戦法を考案し即座に失敗したり。

 満腹度の減少を極限まで抑えるために、スニーキングRTAみたいになったり。


 要所要所で挟まるアクシデントもまた動画に彩りを加える。

 これが恐らくダンジョン制作者の妙だろう。

 明らかに理不尽であるが、クリアできなくはない。そういう加減で嫌がらせをしかけるのが本当に上手い。

 その嫌がらせをしっかり拾った上に、ちゃんとキレるダンジョン農家の人のやり取りが、台本のあるコントのように綺麗にハマっているのだ。

 結果として、そろそろ夕飯を考える時間になっているのに、それも忘れてドラ子はすっかり動画に夢中になっていた。


「ん?」


 そしてドラ子はふと気付く。

 次のパートの再生数が、ハネていることを。

 通常、どれだけ面白いと思う動画であっても、パートが続くごとに再生数というのは減少していく。これは続き物の宿命だ。

 その筈なのに、次の動画は明らかに再生数がグンと上がっている。なんならパート1の再生数を超えるくらいの勢いだ。

 そんな不思議な現象を眼の当たりにして、ドラ子は思い当たる。


 次が神回なのだと。


 ドラ子は少し悩んでコメントを非表示にした。

 コメントを眺めながら動画を見る楽しさはあるが、コメントには未来からのものも多い。

 本当に楽しい回であるならば、できるだけ、なんの先入観も無しで見たい。

 そう思ったのだが、その思いはものの数十秒で打ち砕かれることになった。


『みなさんこんにちは。現在85階層の攻略中です。この階層のルールは既に分かりました』



 こうやって彼が、断言口調で言うのは珍しい。

 このゴーレム農家の人は、どれだけ確信を持っていても、と思われる、と予想できる、といった風に少し曖昧な言葉を使う印象があった。

 保守サポート部で常日頃からそういった言葉を使っていたドラ子だから気付いた点だ。

 そんな彼が、断言するような口調を使うということは、よほど確信できているか、あるいは、その気を使う余裕がないほど、興奮しているかだろう。


『この階層はいたって簡単です。階層全体を何体かのクソ強ゴーレムが見回りしており、そのゴーレムから隠れつつ次の階層を探す感じです。ゴーレムは一回モンスターをぶつけてみたんでわかりましたが、ガチ強です。多分人間が倒せるレベルの設定をしていません』


 ゴーレム農家の人が、やや早口で捲し立てる。

 やはり、少し興奮しているのが分かった。


 だが、これまで淡々と進めて来た彼が、そうまで興奮している理由はすぐに分かる。

 いや、ゴーレムが出て来た時点で、ドラ子も薄々分かっていたのだ。

 その予感にあえて気付かないフリをして、ドラ子は動画に集中する。


 ゴーレム農家の人が、暫く慎重に進む。ややあって、周りをキョロキョロと見回しながら足を止めた。そのあとすぐ、通路に設置されていた謎の柱の影に隠れた。

 恐らく、そこは見回りのゴーレムに見つからない安全地帯なのだろう。

 そこでしばし待つと、彼の目の前に巨大なゴーレムが現れる。


 ずしん、ずしん、と鈍重な身体を前に進ませる、そのずんぐりとした巨体。

 通路の天井に届くかと思わせる体長に、一見すると岩のような身体。

 あらためて、ひのきの棒一本でどうにかなる相手ではない。これは勝てない相手だ。文字通り、ステージギミックなのだろう。

 そう思っていたところで、徘徊ゴーレムは、隠れているゴーレム農家の人の眼の前を通り過ぎていった。


 ふう、と息を吐いたのも束の間。

 隠れていたゴーレム農家の人は、矢継ぎ早に声をあげる。


『見ましたか? 奴の肩のあたりを。分かりますか?』

「いや、なに?」


 ゴーレムは見ていたが、ゴーレムの肩のあたりなどを注視したわけではない。

 さて一体何の話をしているのか、とドラ子が思う所で、ゴーレム農家の人はまさしく決定的なことを言った。




『肩の辺りに、苔が生えていたんです。分かりますか? ゴーレムの身体は、植物が生育する環境なんですよ』




「やっぱり?」



 これから何が起こるのかを予想しつつ。

 ドラ子は一体感を味わいたくなって、やっぱりコメントを表示するのだった。



(0話を加えれば)100話到達しました!

記念すべき100話になぜSolomonと対して関係のない人の動画回を書いているんだろう……?

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