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ウミマロ  作者: 七宝
4/5

テスト

 私はこーちゃんが殺された怒りで体が震えていた。そんな私をしっぽとなんでもおじさんがなだめながら家まで歩いた。歩きながら分からないことをいくつか2人に質問した。


 しっぽは私には何の力も遺伝していないと言っているのになぜムナムナは執拗に私を狙ってくるのか。しっぽもなんでもおじさんは何者なのか。ムナムナは何者なのか。他にも分からないことがあったが、とりあえず思いついただけ聞いた。


 しっぽはムナムナには遺伝していないと言い張っていたが、実のところ私の中には力が宿っているらしい。かつてしっぽとなんでもおじさんが仕えていた、世界の王様のような人が存在したらしく、2人はその王様の力を私のご先祖さまに封印したんだとか。それが代々受け継がれて、今私に宿っていると。


 父も母もごく普通の人間だと思っていたのに、私にはいったいどんな力が宿っているのか⋯⋯

 そういえば父が家に帰ってきた時しっぽと喋っていたな。しっぽは父のことをよーちゃんと呼んでいたし、父としっぽはこのことを知っていたんだな。


 次に、しっぽとなんでもおじさんが何者なのかということ。これには少し驚いた。現在世界には新七賢邪(しんしちけんじゃ)という強大な力を持つ者達が存在するのだという。2人はその一員で、ラムローナもそこに名を連ねているそうだ。新七賢邪は(よこしま)とはいうものの、一部を除き皆平和主義者なのだという。


 なんかよく分かんないけど、とりあえず3人とも強いんだな。ラムローナも味方っぽいし、私は安心しても良さそうだな。


 中でもしっぽとなんでもおじさんは新七賢邪の前の時代から世界に君臨しており、王様と2人とで三賢邪と呼ばれていたらしい。なんでもたった3人で当時あった世界を滅ぼし、新しく作り直したそうなのだ。今私が生きているこの世界は、リニューアル版の世界だというのだ。


『君の体にはそいつらが作った魔法のような力が宿っている。世界を滅ぼす力だ』


 私はムナムナが言っていたことを思い出した。

 

『そこの2人は新七賢邪という悪の組織のメンバーで、君の力を悪用しようとしている』


 世界を滅ぼした2人とムナムナ、どちらを信用すべきなのだろうか。新七賢邪は本当に悪の組織なのだろうか。それともしっぽの言う通り善の集団なのだろうか。いや、それも一部を除いてだと言っていた。その一部がしっぽとなんでもおじさんなのかもしれない。いや、もしそうだったとしてそんなことをわざわざ私に話すだろうか。


「ほいで次はムナムナの話だ⋯⋯って、聞いてる? 海ちゃん」


 考え事をしていたせいでしっぽの話を聞いていなかった。少し怒られてしまった。


「あいつは海ちゃんの力を無理やり覚醒させて悪用しようとしているんだ。あいつは世界を支配するつもりだよ」


 滅ぼすのと支配するのってどちらがより悪いのだろうか。いやいや、こーちゃんはムナムナに殺されたんだ。私はあいつが許せない。


「君の力はね、正しい使い方をすれば世界を救うことだって出来る素晴らしい力なんだ。だからもうムナムナに関わるのはやめよう。会わないのが1番さ」


 しっぽはこう言うが、私はこーちゃんの仇を取ってやりたい。あいつが許せないんだ。


「でもしっぽ、私ムナムナを倒したい! 足でまといにならないように私を強くして欲しいんだ! 修行をつけてください!」


 しっぽは驚いたような顔をしている。目を閉じて少し考えた後、ニコリと笑ってこう言った。


「だーめ!」


 思ってた答えと違った。もっとこう、少年漫画のような展開を期待していた。


「いけず!」


「冗談だよ。まあ今日は疲れたし、明日からにしようか」


 良かった。しっぽはちゃんと分かってくれているんだ。


 高田さんのおばさんを担いだなんでもおじさんとラムローナも一緒の道を来ているが、どこまで一緒なんだろうか。なんでもおじさんは家があるけど、ラムローナはどこに帰るんだろうか。


「なに見てんのよあんた。あたしに何か言いたいことでもあるの?」


 怖い。さっきおばさんを蹴ってたし、ムナムナもこいつはしっぽ並に強いと言っていたし、離れた方がいいのだろうか。


「ねぇ七宝、あんたは殺鬼さんのことどう思ってるのよ」


 私の心配を他所に、ラムローナは世間話を始めた。


「どうって、友達だよ。あの子はとても頑張り屋さんなんだ。そこに関しては私も頭が下がるね」


 今日の戦いが嘘だったかのような平和な話題だ。私には分からない話っぽいので、明日の朝ごはんを考えることにした。


 まずはパンかごはんか。あ、そういえば明日テストじゃん! ゆっくりご飯を食べられるような日じゃないので、パンに決定した。


 私たちはようやく家に到着した。山って下りの方が疲れるんだね、初めて知ったよ。え? 登るほうが大変だって? 知らんし、私がそう思ったんだから知らんし。


 なんでもおじさんとラムローナとは玄関先でバイバイした。今日は本当に疲れたので、お風呂も入らずにすぐに寝てしまった。


「海麿、そんなところで寝ると風邪ひくぞ!」


 父の声で私は目を覚ました。周りを見渡した私は驚きを隠せなかった。景色や父の姿が逆さまなのである。ここは⋯⋯玄関か! そうだ、家に入ってすぐに寝てしまったんだ。


 なんか左手の小指が痛いな、と思った私は小指の方を見た。なんということだ、私は今、左手の小指だけで逆立ちをしている。


「なに、なにこれ! なんなのこの小指の筋力! そして私の寝相!」


 私はパニックになっていた。


「海ちゃん!」


 しっぽがすぐに駆けつけてくれた。小指1本で体を支えていたのに、小指はちょっと痛いだけ。明らかに異常だ。


「海ちゃん、目を見せて!」


 小指じゃなくて? しっぽは私の目を見てどうするつもりなのだろうか。


「0.04⋯⋯やっぱり! 覚醒してるよ!」


 覚醒だって!? 0.04ってなんだろうか。


「きっと晃介くんが殺された怒りで覚醒したんだよ!」


「なに、晃介くんが殺されただと!?」


 父がしっぽの言葉に驚いた様子で言った。


「かくかくしかじか!」


 私としっぽは父に昨日の出来事を説明した。


「そりゃ酷いな。海麿、ちゃんと仇を取るんだぞ! ⋯⋯眠っ、ごめん寝るわ。まだ2時間くらい寝る時間あるからな」


 自由な人だなぁ。


「ところで、0.04ってなに?」


 謎の数字について私はしっぽに質問した。


「ああごめん、説明しなかったね。今君の両目には0.04という数字が浮かび上がっているんだ」


 両目に!? キモ⋯⋯


「ねぇしっぽ、0.04って全然見えないんじゃないの? 私けっこう見えてるけど」


「それは視力じゃなくて君が今何パーセント覚醒しているかを表しているんだ。小指の力に驚いてるかもしれないけど、今君の体は全部分その筋力だからね」


 そうなのか。私は試しに下駄箱にチョップをしてみた。下駄箱が中の靴ごと姿を消した。意味が分からない。


「海ちゃん、今力入れたでしょ」


「そりゃチョップだから、入れるでしょ」


「さっき逆立ちしてた時は力を入れていなかったはずだよね。力を入れていない状態であれが出来るんだよ、君は」


 私やばくない?


「じゃあ今のチョップはどうなったの? 怖いんだけど」


 私は自分の力が怖くなった。


「ちょっと待ってね、ログ見てみる。あ、すごい。ちょっとこれスロー再生するね」


 そう言うとしっぽは壁の方を向いて目を光らせた。


 ザザー


 壁に私の姿が映し出された。私は猛スピードでチョップをしている。スロー再生でこれかよ。


 グニュン⋯⋯グニュングニュングニュン⋯⋯ポッ


 下駄箱がぐにゃぐにゃになっていきなり消えた。スローで見ても訳分かんないよ。


「海ちゃんのチョップのエネルギーが強すぎて空間が歪んだみたいだね。手が下駄箱の真ん中くらいまで入ったところでブラックホールが発生してる。その0.2秒後に下駄箱は吸い込まれ、通り過ぎた君のチョップの風圧を受けたことでブラックホールは消え去ったようだ」


 ちょっと⋯⋯え? 私強すぎない? こんな力手に入れちゃって大丈夫? 本当に世界滅ぼしちゃうよ。


「海ちゃん、驚いて恐怖してるところ悪いんだけど」


 なんだろう。


「0.04パーセントしか覚醒してないからね。その2500倍強くなる余地があるからね」


 このしっぽの言葉を聞いたのを最後に私の意識は途切れた。朝起きると熱が出ており、私は布団で寝かされていた。


「テ、テスト⋯⋯!」


 寝ている場合ではない。私は1つでも単位を落とすと卒業出来ないような授業の取り方をしていたので、休む訳にはいかない。休んだら別日にテストを受けさせてもらえるが、みんなと一緒じゃないと緊張してしまって点数が取れないのだ。


「海ちゃん、昨日言ったでしょ。私が君に変身して満点取っておくよって」


 そう言うとしっぽは謎の光に包まれ、10秒ほど中で何かをしてから出てきた。光から出てきたしっぽは美少女になっており、綺麗なドレスを身にまとっている。私のチャームポイントであるポン・デ・リングのようなタンコブも完璧に再現されており、そのタンコブ1つ1つから毒針のようなものが生えている。

 

「じゃあ行ってくるね」


 完全に私だ。声まで全く同じ。ここまで完璧に化けられるのか。すごすぎる。私は安心してしっぽにテストを任せた。

 

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