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ウミマロ  作者: 七宝
2/5

大魔王ムナムナ

「よし、着いた」


 えっ? まだ家出てから三秒だよ?


「まさかここに住んでいるとは⋯⋯全然気づかなかったぞ。それに、お前があいつらの住処の隣に住んでるのも驚きだ」


 なんでもおじさんが驚いた様子で言っている。


「昔は普通の家だったんだけどねぇ、いつからかこうなってたよ。でも私が居たからか、今まで何もしてこなかったんだ。だから泳がせておいた」


 どうやらあいつらというのは隣の高田さん一家のことだったようだ。こーちゃんも私を狙っていたってことなの? とりあえずこっそり見ていよう。


「気配を消したって無駄だよ、出てきな」


 残念ながら、私がここに隠れているのなんてしっぽにはお見通しだったようだ。


「よく分かったな。さあ、海麿(うみまろ)を差し出せ!」


 どうやら気配を消して隠れていたのはこーちゃんだったようだ。いつもは(うみ)ちゃんって呼んでくれたのに、私がいないとこでは呼び捨てなのか。


七宝(しっぽ)が気付いたってことはこいつは気配を消せてなかったんじゃないの? なのに『気配を消したって無駄だよ』なんて格好つけて、失敗したね七宝」


 なんでもおじさんはとても嫌な性格なんだな。細かいしめっちゃ面倒くさそう。


「昔からいちいち言わなくてもいいことを言うよね、君は。そういうところ直した方がいいよ」


 しっぽが怒っている。自分の失敗を指摘されてよほど恥ずかしかったのだろう。


「だったら最初から黙っとけばいいやん、そうすれば失敗することもないし!」

 

 なんでもおじさんも言い返す。


「お前ら敵を前にしてなんだその余裕は。こっちを向かんか! こっちを!」


 こーちゃんが怒っている。


「そっち向いたらなんか良いことあるのか! 賞品出せるのかお前!」


 なんでもおじさんも怒って訳の分からないことを言っている。


「ハイハイ、喧嘩しないの」


 しっぽが仲裁に入った。


「仕切り直しだ! もう一度言うぞ、海麿を出せ!」


「海ちゃんは家で寝てる。その間にお前には死んでもらうよ」


 しっぽがこーちゃんを指差して言った。


 家で寝てると思ってるみたいだけど、ここにこっそり隠れてるんだよなぁ。指摘するとまた癇癪起こすからこのまま隠れていよう。それにしても、しっぽはまるで悪役怪人のようだな。


「さあ死ぬがいい! 一撃必殺! 猫長(ねこちょう)ビーム!」


 しっぽの目から光線が放たれた。ここまで強いエネルギーを感じるものを私は見たことがない。下手したら街ごと吹き飛ぶんじゃないかこれ。


「いやいやちょっと待て! 猫がビーム出すなんてあるか!」


 こーちゃんは焦っている。私も隣の家の飼い猫がビーム出したらパニックになるよ。ていうか、こーちゃんが死んじゃう! どうしよう!


「誰か助けてー!」


 こーちゃんが叫んだと同時に彼に向かって飛んでいたビームが何者かに止められた。


「助けに来たよ、晃介(こうすけ)


「ボス!」


 どうやら敵のボスのようだ。しっぽのビームのせいで眩しくて姿がよく見えないが、このボスの正義の味方のような登場の仕方に私は少し胸が熱くなった。戦隊もののヒーローが怪人にやられそうになっている仲間を助けに来たシーンを見ている気分だ。しかし奴は私を狙っている敵のボス。悪い奴なのだ。


「フフ⋯⋯腕は鈍っていないようだね七宝」


 光の中から子供のような姿をした敵のボスが現れた。髪は長いが男か女か分からない顔をしている。そして頭にへんな生き物が乗っている。


「出たなムナムナ! 海ちゃんには何も遺伝してないって何回言ったら分かるんだ!」


 敵のボスはムナムナという名前らしい。しっぽがムナムナに怒っている。


「七宝、君は昔から嘘つきだった。そんな簡単な嘘にボクが騙されるわけがないでしょ?」

 

 どうやら敵は勘違いで私を狙っているようだ。本当に普通の人間なんだけどな⋯⋯

 

「それにしても、この2人を相手にして勝てると思ってたの? ボクでも分が悪いよ。晃介⋯⋯ボクはね、バカな部下は要らないの」


 仲間割れか?


「すみませんボス、どうか命だけは⋯⋯」


 こーちゃんが命乞いをしている。自分を狙っていたとはいえこーちゃんが殺されるのは見ていられない!


「海麿は私だ! こーちゃんを殺すくらいなら私を連れていけ!」


 後先考えずに出てきてしまった。


「海麿ちゃん、家にいてくれと言ったじゃないか!」


 なんでもおじさんが怒っている。家の前なんだからここも家みたいなもんじゃないか!


「ちょっと待ってよ海麿ちゃん、ボクが部下を殺すわけないじゃない! 晃介もボクのこと怖いヤツみたいにするのやめてよね! ちょっと怒っただけじゃん!」


 どうやらムナムナはこーちゃんを殺すつもりは無かったようだ。私が出てきたのは無駄だったということだ。


「その話はもういいから。まだ海ちゃんを狙うのなら2人とも殺すよ」


 しっぽは殺気立っている。


「さすがに君たち2人と()るつもりはないよ。海麿ちゃんはまたそのうち貰いに来るけどね」


「じゃあ今死んでもらおうか!」


 しっぽは鋭い爪と牙を剥き出しにし、ムナムナに襲いかかった。しかし、パキン。と音を立ててしっぽの爪は折れてしまった。ムナムナはバリアのようなものに包まれている。


「そろそろ帰るけど、最後に海麿ちゃん」


「なんだ」


「君の体にはそいつらが作った魔法のような力が宿っている。世界を滅ぼす力だ。その力から世界を守るために僕はこうして君を迎えに来たんだ。そこの2人は新七賢邪という悪の組織のメンバーで、君の力を悪用しようとしている。もし世界を滅ぼしたくないと思うならいつでもボクのところに来てくれ。君に遺伝していないはずはないんだ。どうかボクを信じてほしい」


 そう言うとムナムナはこーちゃんを連れて消えてしまった。話が長すぎて最初の方しか分からなかった。私に世界を滅ぼす力が宿っているって言ってたな⋯⋯


 いきなりこんなことを言われて頭の中が真っ白になっていた。私にそんな力が秘められていたなんて。


「あいつ嘘つきだから気にしなくていいからね。さ、帰って寝よっ!」


 しっぽはそう言って家に入っていった。


 私はどっちを信じればいいんだろうか⋯⋯

 

 こーちゃんの家はそこなのに一体どこへ帰っていったんだろうか⋯⋯


 世界を滅ぼしたくないなら来いと言われたがどこに行けばいいのだろうか⋯⋯


「海ちゃん、さっき言われたこと気にしてるのかい?」


「いいや、明日のテストのことを考えてたんだ」


 少しだけ2人に不信感が出てきたので嘘をついてしまった。なんでもおじさんは部屋の隅でブツブツ独り言を言っている。はよ帰れよ。


――――


 その頃、ムナムナと晃介はある城の地下にいた。


「お前のせいで海麿ちゃんに怖がられたやんか。人前でああいうこと言うなよ」


「すみませんボス、どうか命だけは⋯⋯」


「ダメだね、お前はもういらない」


 ムナムナは必死に抵抗する晃介を大きな壺の中に無理やり押し込んだ。


「来るかなぁ海麿ちゃん⋯⋯あっ、そういえば場所教えてなかった!」


 ムナムナはドジである。

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