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エピローグ

 翌朝、ソルは治療院、魔法陣の間で意識を回復させた。意外と早いものだった。魔力を完全に回復させるには時間がかかるが、それでも治療を続ければ元に戻る様子だった。

 そのままソルはしばらく治療院の魔法陣の間で静養していた。治療のために医師の司教士官が出入りし、テレノやシエロが見舞いにきたりしていた。アクリラはあの後、魔力の泉にすぐ戻り、結界に魔力を送り続けていた。決戦から逃げたベルーラスがいて、いつ襲ってくるかわからなかった。今回の決戦で共和国も甚大な戦力を失っていて、下手に戦うわけにはいかなかった。共和国軍の上層部はすぐにベルーラスの残党をどうするか議論が交わされていた。

 見舞いの客は多く、ソルは静養を暇だと感じる事はなかった。

 なによりソルの側には、いつもヴィーダがいた。

「子供の頃もいたんですよ、この場所」

 治療院の魔法陣の間は、共和国のどこよりもきれいで清らかだった。

「あの時は自分のした事がなんだか怖かった。運命が変わっていくのが」

 側にいるヴィーダに、ソルはよく昔話をした。

治療院の魔法陣の間にはベッドなどの家具が一通り置かれ、ソルがしばらく生活できるようになった。ヴィーダにも別室が与えられ、二人はしばらく治療院で暮らすようになった。

 二人はそこで昔話をするか、読書をする穏やかな生活を過ごした。ソルの魔力の回復には、穏やかな静養がなによりも大切だった。

 ソルの治療は一カ月続いた。後一カ月も静養すれば、魔力の森の下宿に帰れるだろうとソルは言われた。しかし士官学校に復帰する目途はたっていなかった。

 もう十一月になっていた。冬の匂いが微かにしていた。

「もしかしたら、留年になるかも、士官学校」

「そんなに気になるんですか?」

 たまにソルはヴィーダに、士官学校の訓練が遅れている心配を漏らした。

「もうベルーラスとは戦わないかもしれないけど、なぜかちゃんと訓練を受けて、ちゃんと士官になりたいって思うから。そう思うとどうにも落ち着かなくて」

 ソルに士官候補生としての情熱が宿りつつあった。ヴィーダはそれがちょっと嫌だった。今はそんな事より、ソルとの穏やかな生活を楽しみたかった。

「大丈夫ですよ、そんなの。きっとまたサビド教官から特別なカリキュラムでも与えられますから」

「また?」

「またです。法王様に導かれたみたいに」

 それを聞いて、ソルはうなだれた。

 その日、寒い十一月の黄昏時に、二人は治療院の庭にいた。ソルが夕焼けを見たいと言い出した。二人はしっかりと着こんで、庭に立った。

 よく晴れた日の終わりで、夕焼けはきれいに輝いていた。太陽が隠れだす時間、光が様々な演出をしている光景を、二人で眺める。

「子供の頃、家族と毎日こうして夕焼けを眺めていました。畑仕事の終わりだったり、買い物の後だったりしました。夕焼けを見つめながら、家族と色んな話をしました」

 昔を懐かしむソルの顔がヴィーダはなにより好きだった。

「あの頃に戻ったみたいだ」

 ソルは無意識のふりをしてそう言った。ヴィーダがソルの顔を覗き込む。ソルはヴィーダという新しい家族を得た気分でいた。

 最初に二人の手は離れていたが、いつしかヴィーダの右手がソルの左手を握っていた。

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