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男の顔つき

 翌日、ソルとビエントは、とある病室に入った。その病室には魔導士と司教のお母さんがいた。産後の経過があまり良くなく、少しふせったお母さんばかりだった。

 ソルは挨拶をして、問診をすると、病室の中央に立った。ソルは魔力を高めていく。

「何をするんだ? ソル?」

「司教魔法、全体化の第三段階回復魔法、コム・リストーロをやるんだ」

「コム・リストーロ? なんだそれ?」

「見ればわかる。ちょうど一昨日からちゃんと使いこなせるようになったんだ」

 そう言うとソルは魔力をかなり解放し、リストーロを病室にいる三人のお母さん達に同時にかけていく。ソルは十分間ほどその状態を維持できた。

「やっぱりソル先生は凄いわね。昨日も今日もちゃんと体が楽になったわ」

 そう言うとお母さん達は拍手をする。

「この魔法の悪いところは魔力をひどく使うところなんだ。まだ一日に一度くらいしか使えない。普通のリストーロを三人にかけるほうが魔力は使わない」

 ビエントは腰がぬけそうなくらい驚いた。追いつこうとしていた存在が、遥か彼方にレベルアップしていた。

 ビエントもこの病院で憂鬱と感動の毎日を送るようになった。一週間、ソルの指導をみっちり受けながら、魔力を高める努力をした。それは高等魔法学校の講義や実習とは比べ物にならないほど濃い内容のものだった。

「ビエントなら、じきにグラリスのもう一段上を使えるようになるよ」

「さらりと言うなよ。もう一段上がったら第三段階の司教魔法だぞ」

 ビエントも今までが嘘のように自分が魔力を高められるのを感じていた。

「やっぱりソル、変わったな」

「ここに来て、やっとわかったんだ。自分はもっとやらなくちゃいけないって」

 夏に十六歳になっていたソルは、男の顔つきが濃くなっていた。

 ソルがとりあえず病院を去る日がやってきた。決戦が近く、ソルも士官学校のしごきをそれ以上サボるわけにいかなかった。司教隊からは正式に士官候補生ながらソルに軍への帯同を命じてきた。

 この病院にソルが来て、一番初めに助けたお母さんが、泣きじゃくりながらソルへの感謝を述べていた。ソルが命を助けたお母さんだった。

「ソル先生がいなかったら、この子に何もできませんでした」

 どのお母さん達もソルに似たような事を話して、感謝した。

 それでもソルは助けられなかった命の重さばかり感じていた。

「決戦が終ったら、戻ってきてね。今度はここから士官学校に通えばいい」

 アルマがそんな言葉をソルにかけてきた。

「また無茶言いますね」

「無茶な考えをしないと、人間なんか生き残れないのよ」

 そうアルマとやり取りをしてから、ソルはひとまず病院を旅立った。

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