表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/54

選ばれし者

 ソルが司教士官学校に入学したのは十五歳の時だ。高等魔法学校の卒業年齢である十八歳からの入学が習わしの司教士官学校に、ソルは魔法学校を卒業しただけで選ばれた。選ばれたというよりも、無理矢理入学させられたというのが正しい。

 ソルの入学はジーナクイス共和国軍、司教隊の上官達の協議の結果だった。

 ちなみにジーナクイス共和国では魔力を持った子供はまず魔法園という教育機関に入り、十歳からは魔法学校、十五歳からは高等魔法学校という教育コースが用意されている。そして十八歳からは飛びぬけて優秀な者だけが、司教士官学校で訓練を受ける事ができる。司教士官学校は学びの場ではなく、ベルーラスとの決戦のための士官養成機関である。

 司教士官学校は志願では入れない。ジーナクイス共和国軍の司教隊がいくつかある高等魔法学校を調査し、その能力を認めた者だけに入学試験へスカウトする。あくまで試験へのスカウトであって、もちろん試験を拒否する事もできる。やる気のない者はそもそも入学にふさわしくないとされる。

 魔法学校の生徒だったソルにはスカウトでなく、入学試験の日程がいきなり告げられ、必ず試験を受けるようにと言い渡された。ソルだけはやる気の有無など問われなかった。問われないというより、ソルの入学はほぼ強制だった。そしてそれはありえない話だった。

 ソルは幼い頃のある事件から、ジーナクイス共和国の特別な保護で暮らしていた。ソルの住まいは常時、魔導士官と剣士官の見張りがいた。魔法学校への登下校も、気軽な買い物も常に警護がつけられた。そしてソルは幼い頃より法王から直接、司教魔法に関する知識や知恵を授かっていた。ソルにとって魔法学校は思い出作り、情緒教育の場でしかなかった。

 司教士官学校の入学試験をソルは八十人中、十五番という成績でパスした。詳しい結果は魔力のスコアと魔法学のスコアはトップだったが、士官になるには必要な運動能力は最下位だった。入学のために鍛えていた十八歳の志願者に、十五歳のソルが敵うわけがなかった。そもそもソルは魔法学校でも体力があるほうでもなかった。

 司教士官学校でソルの入学を驚く者は誰もいなかった。ソルと同じ入学したばかりの司教士官候補生もそうであった。ジーナクイス共和国軍司教隊からの命で司教士官学校の教師達は五年も前からソルが入学するのを想定していたし、ソルと同期となる十八歳の者達も入学試験の前からソルと机を並べるだろうと想定していた。

 ソルは入学のための魔力と魔法の資質に何の問題はなかった。ただ十五歳のソルは心も体もまだまだ不安定な歳だった。入学試験でソルが試されたのは、その点だけだった。

 そんなソルの資質が発見されたのは、ソルが五歳の時の惨劇がきっかけだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ