出奔
お店を閉めて1時間。夕飯の支度とラルクアン様達へのお弁当の仕込みも終わりお城へ配達に行こうとしたら、精霊王の孫?の保護者的な女性が現れた。
「この間はごめんなさいね。私の事覚えているかしら?」
名前は覚えていない。だって覚える必要が無いと思ったから。もう来ないと思っていたし。
「貴女のお母様の叔母に当たるのよ。」
「そうですか。初めまして。私これからお城へお弁当の配達があるので、申し訳ありませんが。」
「待っているわ。」
なんですと?たった2回会っただけの人が待つ?此処で?冗談でしょう。此処は私のお城です。出直して欲しいんだけど。
「そんな顔しないでよ。何も取らないわよ。エメラディアちゃんが戻って来る迄良い子で待っているわよ。」
笑顔で言って退けるが、母親なんて存在した事ないし。家族も親族だって居た事ない。居てくれたのはアテナだけだったのに。今更言われても困るんですけど。いや迷惑ですけど。
「顔に出ているわよ。早く配達して来なさいよ。一緒に行ってあげましょうか?あの王子様と仲良いんでしょ?あの人も贖罪の為に頑張っているのね。お弁当まで注文してくれるなんて。」
何を勘違いしているんだろう。迷惑な勘違い辞めて欲しい。
「仲良くなんてありませんよ。自分を2回も殺した相手好きになる訳ないじゃないですか。あの人は王様に私と結婚しろと言われて、口説きに来ているだけです。私そんなに頭の中お花畑じゃありませんよ。しかもお弁当の配達もラルクアン様が此処で食べられないから、作って持って行っているだけで、お代頂いてないので、売り上げ協力になって居ません。寧ろ赤字です。私の味方になってくれたラルクアン様の為にやっているだけです。」
「えっ。そうなの?」
成る程。こんな頭がお花畑な人達が育てたからあんなボンクラが出来上がった訳ね。相手なんかして居られないわ。時間の無駄よ。
「貴女と話ししたくありませんのでお引き取り下さい。」
「ねぇお母様やお祖父様に会いたいでしょう?一緒に会いに行かない?待っているのよ。少しだけでも。」
今迄17年生きて来て、5回もやり直し人生して、しかも殺されるのはいつも森の中なのにあなた方は助けてもくれなかった癖に。今更家族ごっこをするの?ばっかみたい。まだ流れるな涙。この人が帰る迄絶対に泣くな!
「会いたいなんて今迄一度も思った事ありません。私の家族はアテナだけ。エメラディアなんて名前なんか要りません。だってこの名前を使っていた人は私を虐げていた人なのに。何でその名前使えます?嫌な思い出が甦るだけなのに。妖精だの精霊だのって、頭可笑しいの?今迄放置しておいて、貴女達なんかに会いたくなんてないわよ!帰ってよ。二度と来ないで!かえれー!」
自称叔母さんはまた来るから。と帰って行った。目元を袖口でゴシゴシ擦って涙を拭って王城へ向かった。
ラルクアン様の気配を辿ってテレポートを繰り返し行き着いた場所は王太子の執務室。何故かあれから毎回第二王子迄待っいる。そして手の甲に口付けしたり、結婚を仄めかしたりとウザい。今日は特に見たくはない顔だった。
「単刀直入に言うね。僕と結婚して欲しい。いや、結婚するだろう?だってこの僕がプロポーズしてあげているんだよ。」
速攻で断った。
「結婚する気は全くありません。間に合っております。」
不敬罪だろうが構うもんか!
「えっ。そんな事言って良いの?後悔するよ?」
本当にコイツらクズだわ。解った。だったらもう良い。私は第二王子を睨み
「此処へは二度と来ません。さ・よ・う・な・ら。」
とテレポートした。去る間際にラルクアン様と王太子が待ってとか言っていたが、知るもんか!
帰宅後に食事をして全てを綺麗に片付けて、鞄にお金と当面の服等の生活用品を入れて、お店のドアに鍵を掛けてお店に一礼してテレポートで移動した。
今度はアテナにもラルクアン様にも何も告げずに。
読んで頂きありがとうございます。
ブックマークや評価⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ありがとうございます。
励みになります。
誤字報告ありがとうございますm(_ _)m