聖水と聖弁当
王太子ギルバート視点です
セラフィムは俺の執務室のソファに腰掛けてお弁当を食べ始めた。
「あっ、その水もーらい。」
先程エリーが注いだグラスを取り水を一口飲んでグラスを見つめた。
それはそうだろう。何せそれは手に入らない聖水なんだから。
「何この水。身体の中の何かがスーッと消えていくんだけど。」
俺は執務机に両肘を付き組んだ手の上に顎を乗せた。
「聖女が作り変えた聖水だ。」
驚いた顔で此方を見る。
「あれが聖女様だったの?」
そう。あれが聖女様だ。俺達王族を嫌い、俺を決して受け入れない。二度も自分を殺した相手としか見てくれない。魔女が見せたものが俺がやった事なら嫌われて当然だが…。今の俺は殺しては居ないのに。とか思ってしまう。でも過去にあんな所業をした俺は本当に愚かとしか言いようが無い。何故あの女の言いなりになって。何故自分で考えなかったんだろう。何故調べ無かったんだろう。
「まあまあ可愛い子だったよね。兄上が落とせないなら、僕頑張ろうかな?あれ?君付き合っているんだっけ?父上は僕か兄上の何方の花嫁にと考えているから別れてくれたりする?」
まぁまぁどころか、変装を解けばかなりの美人だ。森から逃げ出す一瞬に見せた素顔は、やはり人から外れた美人だった。しかも嫌いな王族にそんな上目線で言われて絶対に頷く訳が無い。
ラルクアンは俯いたまま何も言わない。
「王族だからと上目線で話すのは辞めろ。エリーは辞めろと言って言う事を聞く人じゃない。」
「ねぇ。このお弁当も…ちょっと可笑しいよ。」
ラルクアンを心配して色々と付与したんだろうな。どれを食べるか解らないから。全部に。
「浄化だの解毒だのエネルギーだの付けられる付与は全て付けているんだろうな。」
「もしかして公爵が居ます毒で苦しんでいるのって。」
セラフィムはお弁当に視線を落とす。俺はエリーがラルクアンに出したジュースのお陰だけどな、でもエリーが作ったものだから頷いた。
「お弁当一つ貰っていくね。」
自分が食べたお弁当を空にして、もう一つ持って出て行った。
「セラフィム殿下毒味をされて居ませんが。良かったのでしょうか。」
「エリーがラルクアンが口にするかも知れない食べ物に毒は入れない。から大丈夫だ。」
翌日、腰痛や胃を患っていた父上が自病が消えたと元気に城内を闊歩していると聞きセラフィムが持ち帰ったお弁当の行き先を理解した。
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