お断り
ちょっと複雑な気持ちになった。だって自分を殺した人を結果助けてしまったのだから。命は大切。死にたくはない!でもなんかなぁ。気を取り直して元々ラルクアン様が心配で作ったお弁当を届けに来ただけだから。とラルクアン様だけを視界に入れる事にした。
「お身体気を付け下さいね。」
とラルクアン様の両手を私の両手で包み込んで私より高い位置にある顔を見ると真っ赤に染まっていた。
熱出たのかしら?可笑しいわね。あのジュース飲んだのに。
「お熱あるんですか?お顔が真っ赤ですよ。」
額に掌を当てるが、熱は無さそうだわ。あら?さっきよりも更にお顔が真っ赤だわ。部屋を見回すとグラスとピッチャーが置いてあったので、水を注いで、解毒と癒しを入れてラルクアン様に渡して、飲んで。と口元へ持って行こうとしたら、
「それは彼は口には出来ないよ。俺専用だから。」
小憎らしい今は聞きたくも無い声が響いた。
王太子の後ろに居た近衛騎士が驚愕の表情で固まっている。
「毒味ですよ。」
ラルクアン様が罰せられない言い訳をしたが、無視された。当たり前よね。でもラルクアン様の顔色は戻って居た。いや寧ろ今度は青かった。
これは私のせいね。ごめんなさい。
「兄上!僕もお弁当食べたい!」
ドアを勢い良く開けてブロンドヘアの碧眼青年が入って来た。私より下かしら?
王太子を兄上と呼ぶからには、王子には間違いない。私は庶民なりの礼を取った。
貴族の挨拶なんか知らないしね。
「お姉さん綺麗だね。名前は何て言うの?カフェの人かな?」
私の手を取り、手の甲にキスをした。
こういう場合どうするの?
「彼女はカフェの店主でエリー。本名はエメラディア・エリーゼ・ド・ラングラム。エリー彼氏は弟でこの国の第二王子セラフィム・フォン・カルバイン。」
あれ?名前短くない?洗礼名が…無い?考えている事が顔色に出ていたのか、王太子が続けた。
「俺は君達が産まれる前に産まれたら精霊王が洗礼名を名付けてくれたが、君達が奪われてからは不可侵の森になったから、王族でも精霊王からは名付けては貰えなかったんだ。」
えっ。それは、私のせいでは無いですよ。伯爵達に言っては如何でしょう。大体勝手に私の名前名乗らないで欲しいわ。
個人情報保護は当たり前じゃない?
「貴女のお陰で兄上は助かったそうですね。父上も結婚を急いだ方が良いと言って居ましたよ。」
結婚?誰と誰が?巫山戯てんのかなぁ。王族達は!
「私が王太子と結婚なんて。私は庶民ですから。そんな恐れ多い。」
顳顬と口端が引き攣るのを堪えられない。
「兄上が嫌なら僕はどうかな?僕エリーなら大歓迎だよ。」
私は軽薄そうな男の子は結構ですわよ。どうしよう。どうやって逃げる?
ラルクアン様の腕に自分の手を置いて、王子二人に微笑んだ。
「私の愛しい彼が寂しがりますから。」
なーんにも関係ないラルクアン様を巻き込んでしまった。ごめんなさい。アテナが、
『どうしようも無い時は男が居ると匂わせろ。』
と言っていた。だから利用しました。ごめんなさい。
「では。ありがとうございました。」
逃げるが勝ちよ。と転移魔法で店に帰って来た。
あっ。しまった。王族の前で魔法使っちゃった。
どうしよう。
暫く嫌なドキドキ感の落ちない日々を送った。
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