定子ちゃん尊ひ。やばひ。つらひ
やばい尊い。尊すぎてつらひ。ここ離されたらびえん。
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「……きよこおねえちゃん! あれあれ! あの番号!」
「……本当だ! でかした娘! 名門一発合格!」
「お母さん嬉しくて……こ、これは花粉症だから。ぐずっ」
名門、清涼殿高校の敷地内。縁側の手すり近くには青磁の壺と生け花。
咲き誇るは桃。桃。
「ねーねー! なんで私が二番目で一番目があなたなの!」
「ぶっちゃけ私天才」
繁子ちゃんが膨れているのでほっぺぷにぷにうりうりする清子。
「繁子ちゃんとでスリートップか。むー! でも顔では勝っている!」
「胸なら私が勝っている。胸と脚交換しようか」
「できるか~~! 繁子のセクハラ!」
はしゃぐ友人たちを尻目に、清子は一点を見つめていた。
――やばいやばい。なにあの生物鬼かわいい。皇帝ペンギンの赤ちゃん並み。――
つんつん。(おねーちゃん!)
つんつん。(おーい。妹)
つらひ……つらひ……。尊い。
「本当にうちの妹大丈夫かな。これで名門校に一発合格とか……今からでも浪人でいいぞ」
お父さんとお母さん、お兄ちゃんと弟がしけんはっぴょう? にサンキューしてくれていっしょにきたらなんか会場に可愛いのがいる。
「あ~~。なんかアイドルみたいな人いるね」
「あっちはツヤツヤの髪といい一重のきれいな釣り目といい、切れ長な顔といい少女漫画のライバルキャラっぽい」
お兄ちゃんたちが何か言っているけどあたまに入らない……(*´Д`)。
「ノブ兄さん、知らない女の子でしょ? 失礼じゃない」
「いや、イズミちゃんごめんごめん。タモツには言わないで。アイツ怖いもん」
保っちはイズミっちの彼ぴ! お兄ちゃんは苦手らしい。
「早咲きの桜かな。かなり立派だぞ」
「いっぱい活けてあるね。きれいねあなた」
清涼殿高校の標準制服は濃紫に桜の色、鮮やかな赤のラインが白いシャツを際立たせる秀逸なデザインで男女ともにスラックスが標準。選択でプリーツスカート可能。
その標準制服を華麗に着こなす美少年の隣に、その妹と思しき少女。
清子はその少女に一目で心を奪われていた。別段彼女に同性愛の傾向があるわけではないのだが。とにかくかわいい。ちっちゃい。なのにキラッキラで出るところがでて引っ込むところが引っ込んでキビキビ動いてそれでいてふんわかした雰囲気がある。
とんでもない美少女である。
美少女と美少年の近くに校長らしき人物が通りかかり、少年と言葉を交わす。遠目でも頬を染める少女の顔がまた可愛い。
校庭を上から覗く先輩方の私物である制服の下から覗くセーターは藤や山吹と綺麗に色が合っていてこれも美しい。彼ら彼女らは新たな後輩の様子に微笑んでいる。
「うー! ちこくちこく!」
パンを咥えて走る少女とぶつかる青年。ここに恋の物語が……始まらない。主人公違うし。
「あのこと絶対仲良くなるぞ!」
呆れる友人二人を尻目に謎の決意を燃やす、清子15の春であった。
史実ではタモツ(藤原保昌)くん、ノブ兄ちゃん(清原致信)をぶっ殺しているらしいけど、本作ではヤンデレ的な男の友情の持ち主になっています。