テント合宿で『ヤッていいよね』ってナリマサの奴いってきてさぁ。あいつありえなくね?
清子:ナリマサの奴やっべーから共有ね。みんなアイツハブでよろ。
イズミ:確か隣のクラスの伊澤周一って子が外でモク吸ってたのチクった奴だっけ?
清子:『ビッグイシュー』のこと? あ、かれっぴ命名。なんか知んないけどちっこいけどデカいって男子からの話。
繁子:グループ指定間違えてね? あたしたちにも来てるよ?
彰子:我が父ながらも人づてですのでわたくしにとって定かではございませんが、父が申すにはあの方のお兄様もまた問題行動が目に余るそうです。『仮病使ってフケやがって』とお父様が珍しく口汚くおっしゃっていましたことを存じております。
定子:清子ちゃんそこまで怒らなくて大丈夫だよ~。
清子:あいつマジゆるさんし! 定子ちゃんほわほわすぎるもん!
繁子:ほわほわ
彰子:ほわほわ
イズミ:ぷにゅ
定子:ふにゅ?(スタンプ)
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テント合宿で大雨降ったじゃん。
もうみんなジャージも体操服もブラもショーツもずぶ濡れじゃん。
もうブルブルで寒いのに恥ずかしくて顔燃えるって思ったもん。
(繁子:イズミちゃんの脚がセクシーだった)
(イズミ:やめんか。お母さんがジャージ洗濯しちゃったんだもん! 蚊とアブで超痛かった)
(彰子:スプレータイプの痒み止めを持参しましたので貸して差し上げたのです)
(定子:わたくしは「なおれなおれ~」って念力おくっといたのです)
ナリマサの奴だけぶっさいくな傘もっているの。破れていてクッソ恥ずかしいの。
で、アイツなんか定子ちゃんスナイプする気まんまんでキモいの!
(定子:わたくしなどスナイプしてもなんの益にもなりませんわ。でもわたくしごときの身命を清子ちゃんが案じてくださるのはとても嬉しいことと素直に感動しております)
(彰子:私たち、婚約者が御座いますから、あまり嬉しくはありませんが……学生のうちはむしろ人生を豊かにしてくれる経験の一つだとお父様はおっしゃっています)
「もうちょっとましな傘もてば?」
「うるさい。一瞬の判断が命取り」
うぜえ。
「雨に歌えば皆同じ。ですわ。乾かない服もありませんし晴れない空もございません」
ユダンタイテキとみんなにほほ笑む定子たん。マジ卍天使。でもきっと意味が分かっていない。わたしもわかんない。
「変におめかしする必要もないです。みな太陽のように美しい」
あんたが云うことじゃない。ナリマサ。キラキラうぜえ。
ボロ傘要らない。さっさとテントテント。
「なんか、ナリマサさんは昼餉のとき、ご健啖であらせられたのに、おなかの調子がよろしくなかったようですが、雨のせいでしょうか」
定子ちゃんのせいだとウチ思うし。はい。うちらのアイドルちゃん髪拭こうね。
おなかじゃなく、抑えているの別の所だったしまじキモ。
あたしは特に言われなかったからジャージに制服のスカートも追加装備で完全武装シャキーン!
で、すやすやぴしてたら、なんかこそこそ。
テントの隙間が空いてるの。虫が入るじゃん。ゴキブリ入ってきたらホラーでない?!
「ねえねえ。清子ちゃん」
ナリマサだ~~!?
なんか先生たちの目を盗んでこっちのテントにきたっぽいし!
「LINE交換しよ」
「うわ、ありえね!」
「定子ちゃんもどう?」
スマホ握った手をテントに入れられておぞぞだよ?!
おまえなんて下のテント勝手に張って一人でやってろ~~!
定子のスタンプ:????
彰子のスタンプ:そのままの君でいてほしい。(キラキラポーズ)
「じゃ、もっとテントを開けて入って良いかな」
テントのみんな見ていたけど、アレで入っていいっていう奴はいないよ!
イズミ:あんたのテントはちっちゃいじゃんって言いたかった
繁子:ファスナーほどもないね。たぶん
清子:定子ちゃんに変なこと吹き込むな!
でも定子ちゃんが、「現在皆で今トランプ大会をしていますので、本当に申し訳ございませんがお召し物がなく、毛布を皆でかぶった状態ですので大変見苦しい姿をさらすことになります。それでもよろしければ……」といったところでアイツ藤原先生に引っ張られていった。
めっちゃ叱ってもらった。ざまあ。あと定子ちゃん温かかった。尊い。
――藤原先生とわたしは後に結婚しました。これは本当のこと(※だいたい史実)なのです。あ、タチバナとは漢の友情で今でも仲良しだよ?――