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何で弾けてんの!?

 聖光教会が動いた、といっても、すぐに会戦というわけではない。


 リフェールの町からこの城まで、軍隊の足だとおよそ十日ほど掛かるらしい。


 結構遅いね。

 そんなに遠くないんでしょ?


 何でそんなに遅いの?


 軍隊の行動は遅い?

 人数が増えるほど、足並み揃えて行軍するのに時間が掛かる?


 ふぅん、そういうものか。


 まあ、一番遅い人に合わせなくちゃなんないもんね。


 足が遅いからお前置いてくぞぉ、って言って置いてっちゃったら、戦う時には人数が半分くらいに減ってそうだよね。


 対してこっちは、もう準備終わっちゃってるから、相手が来るのを待つだけなんだよね。


 うー、なんかドキドキするね。


 戦争とか、前世では全く縁がなかったけど、今回は当事者だしね。


 いざとなったら逃げられるようにしてあるから、私は安全圏から見物してるだけで良いんだけどね。


 でもこうして待ってる時間って嫌だよね。

 ドキドキしちゃって、何をしてても戦争のことを考えちゃう。


 恋心みたいだよね。


 戦争なんて全然愛しくないけどね。


 平和が一番だよ。

 平和が一番。



「ふむ、では主の心の平穏のために、一曲披露しよう」



 え?

 曲?

 何言ってんの?


 ピアノ?

 弾けるの?


 でも、前に弾いてもらった時、下手くそだったよね?

 私より下手くそじゃなかった?


 姿勢だけは様になってるけどね。



「――――♪」



 って嘘ぉ!

 なにそれ?

 何で弾けてんの!?


 それ、私の好きな曲!

 アニメ映画のエンディング曲!


 何で知ってんの!?


 何で弾けんの!?


 私が歌ってたから?


 私の鼻歌からにしては、再現度が凄い!



「主が音楽を求めていたからな、こっそり練習していたのだ」



 なにそれ、可愛い。


 私のためにこっそり練習とか、イケメンだったら惚れてたとこだよ。

 幻影魔法使わなくて良いから。


 このやりとりも久々だね。


 ピアノ弾きながらでも幻影魔法使えるんだね。


 それにしても、コソ練とは卑怯な!


 私だって半年くらい、弾き方も分かんないのに練習してたのに!


 まさかクリスが『勉強? してないよ?』って言いながらテストで百点取るタイプだったなんて!


 うーん、それにしても、やっぱりいい音楽だよね、これ。


 泣ける。


 アニメ映画の名シーンを思い出して泣ける。


『そのドングリは食べれない!』って台詞は名台詞だよね。


 うんうん。


 あ、そうだ!

 いつでも聴けるようにレコードに録音しておこう!


 確か音楽室にあったよね。

 それだったらクリス連れてった方が早いか。


 音楽室にもあったよね、ピアノ?

 他の曲も弾けるの?



「主の歌っていた曲を数曲だけだが」



 十分!

 今まで何にもなかったからね。


 音楽聴きたいのに、自分で弾くチューリップくらいしか聴けなかったからね。

 数曲録音して、レコードでリピートしまくってやろう。



 音楽室。


 なんか来るの久々だね。


 我が侭言っていろいろ、前世にあった楽器を再現してもらったんだけど、ピアノ以外ほぼ使わなかったからね。


 あれ? アレンがいる。


 私が唯一名前を付けたスケルトンだ。


 城にいるブラックスケルトンはアレンだけだから、黒くてすぐに分かるよね。


 ブラックスケルトンナイトのディノスは、スノーリーフの町にいるからね。


 何でアレンがここにいるの?

 なんか会うの久々だね。


 そうでもないか。


 アレンもMPがあるから、一緒に魔法の授業受けてたもんね。


 アレンはマジックスケルトンとかクレリックスケルトンほど魔法が上手くないから、私と同じくらいしか使えないんだよね。


 ちなみに属性は土だった。


 で、どうしてここにいるの?


 え?

 楽器の管理、アレンがしてたの?


 へぇ、すごいね。


 それじゃあアレンも一緒に聴こう。


 クリスのピアノ、すごい上手いから。


 プロのピアニストみたいだよ。


 ピアニストって言っても分かんないか。

 プロも何も、この世界にはそもそも、ピアニストっていないんだよね。


 クリスが再現してくれたここにあるピアノが、世界で最初のピアノだ。


 もしかしたらものっ凄い文化財なんじゃない、これ?


 将来何百億とかって値段が付いちゃったりして。

 そう思うと雑には扱えないよね。


 楽器は使ってないのに全部ピカピカだ。


 アレンが本当に大事に管理してくれてたんだね。


 楽器があったことなんてすっかり忘れてた、なんて言えないよね、さすがに。


 え、っと、レコードの録音ボタンはこれで良いんだよね。


 円盤は何枚あるの?

 十枚?


 クリスの弾ける曲を全部別の円盤に撮っても大丈夫そうだね。

 それじゃいくよー。



『――――♪』



 やっぱいい曲だ。

 泣ける。


 曲が終わり、レコードを止めてから私は全力で拍手をする。


 ブラボー!

 ブラーボ!


 一緒に体育座りで聴いていたアレンも一緒に拍手をする。


 いやー、良い曲だったね。

 じゃあ次の曲に行こうか。



「次は主が歌ってみてはどうか?」



 えー?

 私、歌上手じゃないんだよね。


 歌うのは好きなんだけどね。


 気が乗らないなぁ。

 え?


 私の歌が好き?


 そ、そお?


 そう言うなら歌わないでもないっていうか……。


 一曲だけだよ?


 どうせならノリの良い曲にしようか。


 へい! ほう!

 って出来るやつ。


 再びレコードの録音準備をする。

 あ、アレンがやってくれるのね。


 えー、それでは、ご静聴ください。


 クリスが前奏を弾く。


 ダダ、ダダ、ダダッ♪



「やっちゃるけん♪ やっちゃるけん♪」



 せーの!



「へい! ほう!」



 アレンが一緒に手を上げてくれるけれど、喋れないからへいほうは私だけだ。



「やっちゃるけん♪ やっちゃるけん♪」



 せーの!



「へい! ほう!」



 楽しい!

 これ、楽しい!


 気が付いたら全力で踊ってたよ。


 曲が終わったら、レコードを止めたアレンが拍手してくれた。

 こんなに楽しいなら、定期的にやっても良いかもね。


 スケルトンたちいっぱい集めてさ、みんなでへいほうするの。

 うん、めちゃくちゃ楽しそう。


 私、子供の頃はアイドルになるのが夢だったんだよね。


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