テイム! テイム! テイム!
私は叫んだ。
骸骨は杖を構えたまま、「そんなものが私に効くと思ったか!」と怒鳴る。
骸骨なのにどこから声を出しているのだろう。
「テイム! テイム! テイム!」
私は叫ぶ。
「効かぬと言っておるだろう!」
骸骨が怒鳴る。
「テイム! テイム! テイム!」
私は叫ぶ。
「だから効かぬと――! ……む?」
骸骨がピカリと光った。
テイムが成功したようだ。
「……こんなことが、あるのか?」
骸骨は呆然としたように呟く。
「あのぉ……?」
私は警戒を解かないまま、様子を伺う。
果たして骸骨は戦闘をやめてくれるのかどうか。
「心配せずとも危害は加えぬよ。というかその気にならぬ。テイムとはそういうものだ」
「そ、そうなの?」
テイムのなんたるかなんて、私は知らない。
動物をしつける程度のイメージだったが、相手が人間並みの頭脳を持っていた場合にどうなるのか考えていなかった。
従順になるのだろうか。
主に危害を加えられない、なんて設定もよくあるが、実際にどうかは分からないのだ。
ただ、目の前の骸骨が言うには、主に対しては危害を加えようとはならないし、命令には従いたくなるものらしい。
ならばいきなり殺されることはないだろうと安堵する。
何でこんなことになったのかと、ラスボス戦を仕組んだ骸骨たちに恨みがましい視線を送るが、彼らはカタカタ、と首を傾げるだけだ。
仕草は可愛いのに骸骨だから恐ろしい。
今テイムしたばかりの骸骨は、何かをぶつぶつと喋っている。
なんだか頭の良さそうな骸骨だ。
私はステータスを確認する。
『クリスティアン・クラベル・オースティン
リッチLV55
HP:3345/3345
MP:5972/5972
STR:639
VIT:514
MAG:911
RES:878
AGI:622
DEX:768
スキル
【杖LV42】
【魔法LV54】
【魔力回復LV68】
【魔力操作LV66】
【魔力感知LV63】
【魔力循環LV73】
【再生LV33】
【怨念LV44】
【死者の炎LV32】』
なんか、滅茶苦茶強い。
なんてーか、ゲームのクリア後のセーブデータをいきなり見せられた気分だ。
どのくらい強いのか分かんないけど、とにかく強いんだろうな、って感じさせるやつ。
LV55だし、私のテイムした五十匹のスケルトンが束になっても敵わないんじゃないだろうか。
「して、主よ。テイムした我に何を望む?」
「いえ、実はその、かくかくしかじかで」
私はかくかくしかじかした。
「くあっはっは! 確かに! このスケルトンたちを率いて行けば、普通ならば討たれよう」
笑い事じゃない。
異世界に来ていきなり殺されるとか洒落にならない。
「しかし、人が安らかに眠れるところか」
「永眠させてくれって言ってるわけじゃないよ?」
骸骨に『安らかに眠れる』とか言われると嫌な印象があるのだけれど。
「分かっておる。あそこなら良いだろう。ついて参れ」
そう言って骸骨――リッチのクリスティアン・クラベル・オースティンが歩きだした。
名前長い。
というか最初から名前が付いてるとか、やっぱり死ぬ前の記憶が残ってるということだろうか。