3階層
私のテイムするモンスターが百体に増えて、手に入る魔石の量が大きく増えた。
この魔石は本当に初歩の初歩で、大した力は持っていないらしい。
クリスが言うには、高い効果のものを作るには、大きな魔石がなければいけないんだって。
数を集めればそれっぽいのは出来るけども、やっぱり大きい魔石じゃないと質の良い物は作れないと言っていた。
けれども逆に言えば、質の悪いものならば小さい魔石でも作れる。
ほら、あの魔法剣とか。
ってなわけで、私の目の前に魔法の武器が五つ。
剣、槍、斧、杖、棒の五つだ。
それを選抜組のスケルトンたちに装備させて、ダンジョンに潜る。
この魔法武器は、魔石を使って発動する。
柄のところに魔石を嵌め込む穴があるのだ。
魔石の魔力が尽きたら、魔石を取り換えればまた使える。
この五つの武器に付与されているのは、『魔力纏い』という魔法だ。
何の属性も付いておらず、発動すると武器が魔力を纏う。
見た目には薄らと光るだけで、魔法武器なのに地味、というのが私の印象だ。
せっかくなんだからもっと派手にしないの?
火を纏うとか。
火を纏っても意味がない?
でもほら、派手だよ?
派手なだけで魔力消費が増える?
魔石にそこまで余裕がない?
でも、火とか纏うと威力上がるんじゃないの?
この程度の魔法武器だと誤差?
そういう魔法武器を作るなら、でっかい魔石が必要?
でもこれじゃあ、薄ら光ってるだけだよ?
意味あるの?
これから必要になる?
そうなの?
私はクリスと話しながら、三階層への階段を下りた。
ダンジョンの三階層は、これまでと雰囲気が大きく変わった。
これまでの階層は煉瓦を並べたような場所だった。
小部屋がいくつもあり、真っ直ぐに伸びた通路。
見るからに人の手が入った様子だったのだけれど、三階層からは洞窟という雰囲気だ。
ゴツゴツとした岩肌が露出していて、足場も不安定だ。
空気の匂いが水っぽく感じられるので、これまでの階層よりも湿度が高いのだろう。
青っぽい岩肌は、どこか幻想的でもあった。
クリスの魔法に照らされて、イルミネーションのように輝いている。
綺麗だね。
そう思ってクリスを振り返ると、そこにはお婆さんの顔があった。
知らない人だ。
知らないお婆さんだ。
真っ青な顔で、黒く濁った瞳で私を見ている。
『ヴあぁああぁあぁ!』
ひいぃいぃいぃいい!
思わず後ずさると、ゴツゴツした岩場に足を取られて転びそうになる。
素早く腕を支えられて事なきを得た。
ほっとして振り返ると、そこには骸骨の顔が。
ひいいぃいいぃい!
「我だ。主よ」
そう言われて、骸骨がクリスであることに安堵する。
でも、あのお婆さんは?
レイス?
レイスって何?
霊魂?
あのお婆さん、本物の幽霊なの!?
アンデッド?
ダンジョンのモンスターだから、本物の幽霊じゃないの?
ただそういうモンスター?
そっか。良かった。
え? でも、外には本物の幽霊もいるってこと?
いるの?
いるんだ?
うー、やだなー……。
とにかくモンスターなら倒しちゃおう。
スケルトンたち、やっておしまい!
スカっ!
スカっ!
スカっ!
は?
なんで?
当たんないんだけど。
『ヴああぁあぁあああぁ!』
ひいぃいいぃいい!
お婆さんが凄い形相でこっちに向かって飛んでくる。
私は逃げ回った。
やめてー!
来ないでー!
どうして攻撃当たんないの!?
どうなってんの!?
え?
レイスのような霊魂系モンスターは物理攻撃が効かない?
物理効かないならどうするの?
お経でも読むの?
魔法?
でも私まだ魔法使えないよ?
魔法が使えないなら魔力武器を使えば良いの?
あ、だから装備して来たの?
スケルトンたち、魔力武器を発動してっ!
ブオン!
うわぁ、明るいところで見るとうっすら光ってるだけだけど、暗いところで見るとなんかこう、ライトセーバーみたいでかっこいいね。
ズバッ!
『ぎゃああああああああああああ!』
うひいいいぃぃいいぃい!
何今の断末魔。
モンスター、倒したんだよね?
レイスはやられると断末魔を上げるの?
何それ!?
精神攻撃?
『ヴぁあぁああああ!』
ひぃいいぃいぃい!
また出てきた。
今度は子供?
スケルトンたち!
ずばっ!
『ぎゃああああああああぁあああ!』
うひいいぃいい!
あっさり倒せたけど!?
三階層は魔法武器があれば余裕?
うん、あのさ。
敵は弱くても、倒すたびにお婆さんとか、子供の悲鳴を聞くことになるんだよね?
精神がやられるわっ!
この階層は、出来るだけ早く切り抜けよう。




