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かくれんぼ

 朝起きて、珍しくクリスがいなかったので探すことにした。


 食堂に行ってても出て来なかったし、部屋に行ってもいなかった。


 一日一度、私のご飯を買うために出かけてくれているが、大体私のダンジョン攻略が終わってから出かけるので、この時間にいないのは珍しいのだ。


 いれば完全に寝食もいらずに研究している研究オタクが、部屋にもおらず、私のところにもいないなんて、いったい何があったのだろう。


 私は城の中を探しまわる。



「くりすー?」



 声を掛けながら探す。


 スケルトンたちに聞けばたぶん分かるんだと思うけど、かくれんぼみたいで楽しいので、せっかくだから自力で探すことにしたのだ。


 最初に向かったのは一階にある何もない部屋。

 この部屋だと思ったのは、最近整備を始めた部屋だからだ。


 部屋の中にはまだ何もないが、私の部屋や畑と同じようにセーフエリア化がなされている。

 この部屋は畜産場で、将来的には豚や牛や鶏を飼う予定だ。


 まだ何もいないのは、音や臭気の対策が万全じゃないのと、飼料となる穀物が安定してとれていないからだ。

 私の食べる分とは別に、家畜を飼育出来る分だけは育てているらしい。


 場合によっては畑をもうひとつ作るそうだ。

 最初のもふもふは食べるための家畜になりそうな予感。


 豚も牛も可愛いけれど、家畜を可愛がるのは悲しくなるからやめておこう。

 鶏は最初から苦手なので問題ない。


 畜産場にクリスはいなかったので、他の場所を探しに行く。

 次に向かったのは洋裁場だ。


 ここではスケルトンたちが私の服を作っている。


 最近クリスがシルクを買ってきた。

 そこらの村にはシルクなんて置いてないそうなのだが、行商人に頼んどいたそうだ。


 こんな辺鄙な場所でシルクを注文する客など珍しい。

 かなり不思議な顔をされたらしい。


 クリスは村に行く時は『とある隠棲した貴人の従者』という設定にしているので、不審がられることはなかったそうだ。


 シルクで服が完成すれば、私が着ることになる。

 麻の服は手触りがガサガサしていたので、普通に嬉しい。


 かなりの高級品のはずなのだが、いいのだろうか。


 魔石を売ったり魔道具を売ったりすれば金策なんて簡単だと言っていたけれど、やっぱり元から凄い人だったんだと思う。


 洋裁場ではスケルトンたちがシルクを布にしたり、ミシンで縫っていたりする。


 大量生産とか出来そうな設備だ。

 この世界は思ったよりも文明の水準が高いのかもしれない。


 大量生産が出来たところで、私ぐらいしか服を着る人はいないんだけど。


 いや、クリスもローブを着ているのだから、スケルトンたちにローブを着せても良いのかもしれない。


 骸骨のまま歩いてるよりはその方が怖くないし。


 もう慣れて来たけれど、暗闇で、予期せず骸骨に出会うといまだに背筋が凍る。


 ローブを着せておけば、それが多少は和らぐかもしれない。


 洋裁場にもクリスはいなかったので、もう手当たりしだい扉を開けて回る。

 一体この城は何部屋あるのだろうか。


 本当に、私には分不相応な住居だと思う。


 いくつ目だろうか、二階にあった部屋。

 そこにも誰もいなかったので、立ち去ろうと踵を返し掛けた時に、テラスに見えるローブに気づいた。


 ピョコピョコと寄って行くと、クリスがこちらを見ている。

 こっそり近寄っても、気配でばれるらしい。


「みーつけた」と指をさすと、かくれんぼをやっていたことを知らないクリスは、不思議そうに首を傾げた。




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