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ダンジョン1階層にて…回です。
フリージアがダンジョンの入り口に入っていったので俺達もそれについて行く…。
内部に入ると前に入ったことのあるダンジョンの用に壁や天井、床がゴツゴツとした岩肌が見えるが、足場はこの前のダンジョンと違って歩きやすい…。
「中々、綺麗なダンジョンね~」
「そうですね、最近行ったことのあるダンジョンと似てるわ」
「へ~どんなダンジョン何ですか?」
「ちょうどこのダンジョンの用に壁や天井、床が少し紫色で歩きやすく戦いやすいダンジョンだったはね」
「?へ~、そうなんですか」
紫色?と疑問に思っていると、少し先の通路がちょうど話に出ていたダンジョンのような紫色の通路になっていた…。
なるほど、あんなダンジョンがあるのか。
そんなことを考えながら、通路を進む………。
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ダンジョンに入るのは2回目だが、このダンジョンは壁や床、更には天井がのっぺり…と言うか……。
「何か、代わり映えのしないダンジョンだな…」
「そだね~」
「そうね…私達もいくつかダンジョンに入ったことあるけど、ここまで敵がでないダンジョンは初めてだわ」
「しかも、あまり宝箱な~い!」
ククルフさんとシャイニーの言うとおり、全く魔物がなく、さらに宝箱すら見つからない。
これでも1時間は探しているのだが…。
「あ、また行き止まり」
「もー!もー!!またなのー!!」
「まあまあ、シャイニーちゃん落ち着いて落ち着いて」
「こんな壁なんか!!~ッ!!」
「あらら…」
シャイニーが思い切り壁に八つ当たりをしたが壁には全く傷ひとつなく、逆にシャイニーの方が反動で足を痛めていた…。
「…にしても、こう行き止まりが多いとダルいな…」
「そうだね~」
「…………」
「?どうしたんですかククルフさん」
「ん?ベンか…じゃなくて、ベン君」
一瞬だけククルフさんの素を見てしまったが、まあ良いや……うん………俺のログにはなにもなかった…。
「いやね、ここまでの道のりを素人ながら紙に書き出してみたのよ、そしたら…」
そう言うとその紙を見せてくれた。
紙には綺麗に書かれた迷路があった。
「ここが今居る場所なのよ、それでここが入り口付近にあった通路ね」
「?」
「少し汚いから正確とは言えないけど、もしこの道がここだった場合は…」
「??」
「ん~…ちょっと説明しにくいわね~」
「すみません、理解できなくて…」
「別にベン君が悪いわけじゃないのよ?
ただの憶測だから、気にしないで?」
そう言って、ククルフさんは紙を片付けだした。
…何だか申し訳ないな…。
それにしてもここの壁に何か…ん?
「……ぁ………さか……………」
「…だか………なん……………」
「お~い、おいていくよ~」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ」
とりあえず、みんなを止めて、今度は壁に耳を当ててみる。
「?なにし「静かに」???」
「……そ……しても……だからな」
「ここの……ンジョンは敵が居ないし、宝箱もあるってよ」
「マジかよ、それじゃあ、俺らみたいな戦闘系は意味ないじゃん!」
「それを言う前に『ダンジョンだー!』って飛び出したのはお前だろが、反省「しない!」しろ!!」
「!」
「どうしたの~?」
「向こうに誰かいる!」
「ええ!!」
「本当!!」
「ああ」
しかし、向こう側に行く方法がないし、行けたとしてもククルフさんの書いた地図道理ならここは入り口付近だから、特にダンジョン探索が進展することもない……。
そう考えて居ると壁の向こうが静かになった。
「どうやら、通りすぎてしまったようだ」
「そんなことより、どうやって向こう側に行くの?」
「いや、俺が知るわけ無いだろ?これでもダンジョンは2回目なんだぞ?
そう言うシャイニーは?」
「知らないよ~」
「知らないよ~って……はぁ…でも、こう言うダンジョンとか良く壁を触ってたら開くって聞くし」
と言いながら近くの壁を触ったり、床の面を踏んでみたが、なにも起こらない。
「う~ん」
「なにもないですね…先ほどの声は、ただの構造上壁が薄くなっていただけでは?」
「ん~…やっぱりそういうもんなのかな~」
「少し疲れてきたし、一旦ここで休みましょ」
「「さんせ~」」
「そう…だな…はぁ~」
ため息を吐きながら床にバタリと倒れる。
「あ、そうだ、お兄ちゃんウサギもふらせて~」
「ウサギ?…ああミーミルか…良いぞ。
出てこい、ミーミル」
シュン「キュ~♪」
「ミーミルちゃ~ん」
「きゅぃ!?」
現れたと同時にミーミルがシャイニーに抱きつかれて驚いた。
「ミーミルをびっくりさせるなよ~」
「分かってないな~お兄ちゃんは。
ただのスキンシップだよ、スキンシップ。
ね~?ミーミルちゃん♪」
「きゅ?」
シャイニーの問いかけにミーミルは首を傾けて疑問符を浮かべていた…。
…そう言えば、確かミーミルのスキルにある五感強化って意外とバカにできないスキルだよな…。
元が魔物…というか動物?だからか嗅覚や聴覚が普通の2倍くらいだから、食材を探したときにかなり助かったよな…。
そんな風に考えていたら、急にミーミルがシャイニーのもふりから抜けて、壁に向かって逃げていった。
「あ、まって~ミーミルちゃ~…ん!?」
「ん?どうしt…あれ?ミーミルは?」
シャイニーの驚いた声を上げて壁に近づきペタペタとさわり始めた。
「ミ、ミミミ、ミミミーミルちゃんが…」
「ん?」
「ミーミルちゃんが壁の向こう側に!」
「え??」
「私も見たわ…一体何が起こっているの…」
「フィールさんまで…」
そんな事を話していると…。
「きゅい?」
「は?」
ミーミルが壁の中から顔を出してこちらを見ていた…って
「え、あ、いや、だ、だだ大丈夫か!?ミーミル!?」
「きゅ?きゅきゅ」
ああアアワアワ慌てるな慌てるなこう言うときは確か素数を数えるんだ、2・3・5・7・11・13・17・19・23・29・31・37・41・43・47・53・59・61・67・71・73………よし、落ち着いた……今度はしっかりとミーミルの声に集中して…。
「ミーミル、何で壁の中にいるんだ?」
「壁?そんなのどこにもないよ?」
「んんんん??」
「それより、ここってダンジョンなの~?」
「ん?ああ…ここはダンジョンだぞ?」
「じゃあ、階段見つけたから早くいこ~♪
こっちだよ~♪」
「ああ、待った、ストップ、お待ちになってミーミル」
「??」
一旦ミーミルをこちらに戻して抱き抱え考える。
ミーミルが言うのはここには壁がない…けれども、俺達プレイヤーからしたらのっぺりとした壁がある…。
「う~ん…」
「どうかしましたか?」
「ん?ああ、リリーか、いや、ミーミルがこのダンジョンの壁を通り抜けられたのは、ここに壁がないからと言うんだ」
「?それはおかしいですね、こんな壊せそうにない壁ですのに…」
「そうだよな~……そう言えば、ダンジョンって結構明るいんだな?そういう設定なのか?」
「?あちらの"発光灯"で明るいんですよ?」
「発光灯?」
そう言って、リリーが壁に指差したのでその方向を見て見ると、さっきまで無かった場所に明るい光を発した物があった……。
ど、どういうことだ…。
「あれのお陰で明るいんですよ」
「「そ、そうだったのか」んだ~」
どうやら知らなかったのは俺とフリージアの2人だけだった。
ここで俺の脳裏に電流走る……なんて訳ではないが、少しだけ疑問が出てきたからフリージアに聞いてみる。
「なあ?フリージア…」
「なに~?」
「さっきまで、あんなところにあんな光る物があったか?」
「ん?やっぱり、ベンもそう思うよね?そう思うよね??」
「…なるほど」
何となく分かってきた。
…しかし…これだけじゃ、全て分かったわけではないが、0が1に変わるだけで結構…いやかなり違う。
俺の考えが正しければ…。
「なあ?みんな…ここのダンジョンって他のダンジョンと違う…もしくは同じところはあるか?」
「違うところ?敵がでないこと以外はほとんど同じだよ?」
「そうねぇ…この前入ったダンジョンとそっくりってところかしら」
「そのダンジョンはどんなダンジョンでしたか?」
「道中話した通り、行き止まりが多かったり、やたら通路が広かったりしたわね」
「そのダンジョンって入り口はかなり大きかったですか?」
「う~ん、お世辞にも大きいとは言えないわね、天井もここと同じようにそこまで高くないから、巨人族のプレイヤーは少し屈まないと入れなかったわね」
ククルフさんがそう言うと天井が急に下がり、先ほどより、少しだけ通路が広くなった……。
やっぱり……。
「あれれ~?」
「あら?どうしたのかしら?フリージアちゃん?」
「さっきまで天井が高かったのに低くなったような~」
「そう?気のせいじゃ「気のせいじゃない」…?」
「どういうことですか?ベン君?」
「簡単なことさ…このダンジョンは形を変えているんだ」
「?それは、拠点で聞きましたが…」
「そう、拠点で聞いた通りこのダンジョンは1日で形を変えている…訳じゃない」
「?」
「このダンジョンは入った人が前に入ったことのあるダンジョンと同じような構造になるんだ」
「???」
「つまり、どういうことなの?お兄ちゃん」
「そうだな…例えばここの壁は何故かミーミルだけ通れたが、俺の予想が正しければ…ここには壁ッ」
俺は壁に近づき…ぶつかった。
「???」
「いてて…まあ普通はこうなるよな?誰だってそう思う俺もそう思う…。
だが、ここからだ………みんな、とりあえず、ここには壁がないと強く想ってくれ…」
「?は~い」
全員が釈然としない顔だったが、とりあえず俺の言うことを聞いてくれたようだ…。
「あれ!?」
「壁がないわ!」
「ど~して~」
「…なるほど!分かりました!」
どうやら、リリーが分かってくれたようだ…。
「どういうこと?リリーちゃん」
「皆さん、このダンジョンは人の情報から創られているのです!」
「人の…情報…?」
「まあ、簡単に言うと、ほとんどが幻術…というより思い込みによってできたもんだな」
「たぶんですが、ここはダンジョンに入ったことのある人が入ると前に入ったダンジョンと同じような構造になるんだと思います」
「さらに言えば、パーティーメンバーの中に居てもダメなんだろう」
「なるほど…確かに思い返してみれば構造が似ていたわね…」
その後、色々と疑問に思っていた事を1つずつ丁寧に丁寧に丁寧に片付けていった…。
「…という事で、ここが次の階層へ続く階段です」
「本当に階段だったのね…」
「じゃあ、ここからが本番なのかな~?」
「たぶん、そうだろう……1階でプレイヤーを厳選するか……中々鬼畜な運営だぜ」
そんな事を言いながら2階層へ向かう……。
ここで少し裏設定
今回のダンジョン(名前:回想ダンジョン)は人の情報によって変わるダンジョンで、人伝に聞いた話を鵜呑みにして入っていくと、1階層でほとんどが詰んでしまいます。
さらにここのダンジョンは階段による階層移動をするので、他のダンジョンにある階層間の移動用ワープが無いので、無いものは出せないし、有るものは隠されてしまいます。
要は真実が思い込みによって隠される、または上書きされます。
さらに言えば、少しの変化は一瞬でしたが、大きな変化は少し先で起こして気づかせないようにすると言う意地悪な設計…おのれ邪気王、じゃなくて運営!
いつも最後まで読んでいただきありがとうございます!
もう片方は、リアルが落ち着いてから書いていくから許してクレメンス。